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幻の「なにわ伝統野菜」を未来につなぐ。元公務員が挑む、規格外野菜を生かした本格イタリアン缶詰『Vege-Can』の誕生

湯川真理子

ライター:

幻の「なにわ伝統野菜」を未来につなぐ。元公務員が挑む、規格外野菜を生かした本格イタリアン缶詰『Vege-Can』の誕生

2026年夏、新鮮な野菜をふんだんに使用した缶詰、Vege-Can(べジカン)がデビューする。コンセプトは、未利用野菜を活用した、温めずに食べられる本格野菜料理。味や栄養には全く問題がないものの、形が不揃いだったり、わずかな傷があるだけで、行き場を失い廃棄される野菜は少なくない。この「もったいない野菜」を災害時にも食べられる備蓄品として生まれ変わらせたのが「80831(ヤオヤサイ)の代表、藤原亮介(ふじわら・りょうすけ)さんだ。大阪府八尾市を拠点に、マルシェや移動販売、宅配を通じて農家から直接仕入れた野菜を届ける藤原さん。かつて大阪府の職員として新規就農者の支援に携わってきた彼が、なぜ安定した立場を捨て、缶詰づくりに情熱を注ぐのか。その思いを伺った。

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誰かの上に立つ商売はしない!生産者と密に対話し想いも届けているからこそ生まれた缶詰

「80831(ヤオヤサイ)」の藤原さん

2026年夏に発売されるVege-Can(べジカン)は、全5種類のラインナップだ。
さつまいもの甘みとバターナッツのクリーミーさが味わえる「さつまいもとかぼちゃの軽い煮込み」、イタリアントマト・サンマルツァーノ種の旨味を生かした「ミネストローネスープ」、夏野菜の甘みとフレッシュ感たっぷりの「ラタトゥユ」、収穫後すぐのコーンの甘さが味わえる「コーンポタージュスープ」、そして「春野菜のリゾット」

Vege-Can春野菜のリゾット(右下手前が河内一寸豆と碓井豌豆)

特に注目したいのは、リゾットに使用されている、なにわの伝統野菜・碓井豌豆(うすいえんどう)と河内一寸豆(かわちいっすんまめ)である。「碓井豌豆」は語源となった大阪府羽曳野(はびきの)市碓井(うすい)地区が発祥とされている。いずれも栽培の難しさから作り手が減少し、幻の豆と言われている知る人ぞ知る豆である。しかも旬が短いので、大阪でもタイミングを逃すとなかなか手に入らない。

「どちらもお客さんから『もう終わっちゃったの?』と惜しまれるほど、旬が短いものです。だからこそ、多くのお客さんに食べてもらいたいと思って缶詰のメニューに加えました。豆は畑に半年もいるのに、巡り合える時期はたった2週間しかない。どれも旬の時期が詰まった缶詰なんです」と藤原さん。
Vege-Canは生産者と密に対話し、野菜の価値も旬も農家の思いも理解した上で作られた缶詰なのである。

Vege-Canコーンポタージュ

行政を離れ、農家の伴走者になる決意

藤原さんの前職は大阪府の職員。17年間、農業普及指導員として新規就農者の支援に携わり、農業経営者の経営改善や地域活性化に向けた提案や企画、その実現に向けた支援を続けてきた。仕事にやりがいを感じていた藤原さんだったが、2022年に退職を決意。背景にはある「無力感」があった。

「仕事が嫌になって辞めたんではありません。ですが、農家に大きな被害をもたらした2018年の台風第21号のときに、行政の立場で災害対応にあたる中、「食」の観点から十分な支援ができなかった無力感を強く感じました。その後、コロナ禍で保健所の応援業務に就いた際、若手保健師さんが必死に市民に寄り添う姿を見て、自分に問いかけたんです。自分は本当に人生をかけて農業に貢献できているのか? 僕にしかできないことがあるはずだ、と」

公務員という立場を捨て、「伴走者」として農家に寄り添う道を選んだ藤原さんは、45歳のときに生産者と消費者、市民と地域が繋がるポータルサイト「どっこい市場」を運営する「80831(ヤオヤサイ)」を開業。個人向けの宅配や生産者の代わりに飲食店へ自ら配達するのが負担になっている農家の代わりに納入や配送を受託し、飲食店向けの販売などを行っている。加えて規格外品の利用についての提案もしているという。
「誰かの上に立つ商売はしない」というのが藤原さんの理念である。農家から仕入れる価格は農家の言い値だそうだ。ときには安すぎる価格設定に藤原さんの方からもっと高くしたらとアドバイスすることもあるらしい。

常に農家に足を運ぶ藤原さん

缶詰に入れる野菜は唯一無二。農業を続けられる環境を整えるための決断

なぜ、未利用野菜を「缶詰」にしたのか。そこには藤原さんの「農業の価値を守る」という強い意志がある。
「旬を味わってもらいたい、というのが発想の原点ですが、単に『規格外だから安く売る』のでは、農業は持続しません。土づくりから手間暇かけて育てられた野菜が、少し形が悪いだけで価値を失うのはあまりに悲しい。大事なのは、付加価値を付けて農業の正当な価値を創造することです」」

規格外のニンジン。形は良くなくとも味は一級品

「Vege-Can」のレシピを監修したのは、大阪府藤井寺市のイタリアン「ベッカフィーコ」の藤井学(ふじい・まなぶ)さん。地域食材を熟知した名シェフである。

「野菜の目利きができるバイヤーはたくさんいると思いますが、栽培まで知っているバイヤーはあまりいない。缶詰に入れる野菜は、唯一無二のもので『これはおいしい』と確信できる野菜しか使用していません」
地域の食材を生かした藤井さんの手腕も光り、備蓄品のイメージを覆す本格的な味わいに仕上がっている。

現在、自治体の備蓄食はアルファ化米などの主食が中心だが、被災時の健康管理には野菜のおかずが欠かせない。「Vege-Can」は以下の「3つのCan」を掲げている。
・Can Eat(災害時でもすぐに食べられる)
・Can Reduce(フードロス削減)
・Can Communicate(農と食を伝える)
農家、福祉施設、飲食店と連携し、製品の原材料の調達から販売に至るまでの一連の流れを完結している。地域で育った野菜を地域で加工し、地域に備えるという非常食のカタチをつくろうとしている。

缶詰の製造風景

温めなくてもおいしく食べられる(ラタトゥ―ユ)

「農家が本気でやっているからこそ応援したいと思っています。野菜は農家に行って仕入れていますが、わざわざ取りに行ってるのではなくて農家としゃべりに行っています。密にコミュニケーションすることが大事なんです」

農家の話をするときの藤原さんは楽しそうである。未使用野菜に付加価値を付けるだけでなく、藤原さんがいう“農家の価値が想像できる”旬の野菜料理の缶詰である。

野菜を提供してくれているしきファームのみなさん(左から3年目が藤原さん)

写真提供:藤原亮介さん

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