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総工費わずか55万円!工期は12日! 農家がDIYで3連棟のビニールハウスを建ててみた

総工費わずか55万円!工期は12日! 農家がDIYで3連棟のビニールハウスを建ててみた

農業を始めると、いつか欲しくなる設備のひとつが農業用ハウスである。雨風を避け、作物を育てる、苗を育てる、作業スペースを確保するなど、ハウスがあるだけで農作業の幅は一気に広がる。しかし、いざ導入しようとすると、想像以上に費用がかかる。そこで今回は、筆者らが実際に農業用ハウスをDIYで自作した経験を紹介する。専門業者ではない、いわば素人が試行錯誤しながら作ったハウスである。もちろん大変な作業もあったが、自分たちで作ることで費用を抑えられ、構造や管理の仕組みも深く理解できるようになった。作業の流れや苦労した点、実際にやってみて感じたメリットと注意点まで詳しく紹介したい。

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農業用ハウスをDIYで作ろうと思った理由

農業用ハウスは、作物を守るための設備であると同時に、農業の可能性を広げてくれる空間でもある。筆者の場合、熱帯果樹や苗木を扱うことが多く、雨、強風、強すぎる日差し、寒さなどから植物を守る場所が必要であった。特に苗木は、露地に置いておくと管理が難しい。雨が続けば過湿になり、風が強ければ葉が傷み、日差しが強すぎれば葉焼けを起こすこともある。

果樹栽培では苗木を健全に育てる期間がとても重要である。畑に植える前の段階で、ある程度しっかりした根鉢を作り、枝葉を充実させておくと、定植後の生育が安定しやすい。そのためには、苗木をまとめて管理できる場所が必要になる。

しかし、農業用ハウスを業者に依頼して建てるとなると、それなりの費用がかかる。規模や仕様にもよるが、個人農家や小規模経営では、導入のハードルが高いと感じることも少なくない。そこで考えたのが、自分たちで農業用ハウスを作るという方法である。

ハウスを建てる前の畑の様子。ここに苗木管理用の空間を作っていく

今回のハウスは、主に熱帯果樹や観葉植物の苗木を管理するための空間として作った。果樹栽培では、苗木の管理場所があるかどうかで作業効率が大きく変わる。苗木を一か所にまとめて置けると、水やり、施肥、剪定、観察がしやすい。病害虫の発生にも気づきやすくなる。

さらに、作業スペースとしての価値も大きい。苗の植え替え、接ぎ木、取り木後の鉢上げ、資材の仮置きなどができ、非常に便利である。このハウスは、黒色のネットだけを被せているが、雨を当てたくない植物の上には、ビニールを張っている。

完成後のハウス。苗木をまとめて管理できる空間になった

ハウス自作は簡単ではないが、不可能ではない

ハウス自作は決して簡単な作業ではないが、ある程度のものであれば、初心者でも建てることができた。パイプを立てる、水平を確認する、資材を固定する、ネットやビニールを張るなど、作業のひとつひとつに手間がかかるが、実際にやってみると、作業の原理は意外とシンプルでもあった。

地面にパイプを立て、骨組みを作り、その上に被覆資材を張る。大きく見れば、この流れの繰り返しである。もちろん細かな技術は必要だが、一つずつ作業を進めれば、素人でも形にすることはできる。安全性と強度を確保しつつ、自分の目的に合ったハウスを作ることが重要である。

DIY①:骨組み作りはハウスの基礎になる

ハウスの設計図

今回のハウスは3連棟にする。U字型の野菜用ハウスのパイプ(4.86m)を活用したものである。このU字型パイプを60cm間隔で45本立てて、奥行き27mにする。高さは、それぞれパイプを地面に30cm打ち込み、全体の高さを1.9mにする。

基準のパイプから90度出して、水糸を引いておく

1棟目。先に深さ30cmの穴を開けていく

水糸の位置に従い、60cm間隔に穴をあけていく

穴を開け終えたら、パイプを差し込んでいく

60cm間隔で差し込んでいく

一棟目の骨組み

2棟目も同様に

穴をあけ終えたら、パイプを差していく

奥まで差していく

2棟目の枠組み完成

3棟目

3棟目も完成

3棟目をちょっと近くで

骨組みが立ち上がってくると、一気にハウスらしい形になる。この段階は、作業していてかなり楽しいところでもある。それまで何もなかった場所に、目に見える形で空間ができていくからだ。

それぞれのハウスの奥行き方向に水糸を張ってパイプを入れる

奥行き方向のパイプは、ハウスの長さの27mを作るために、パイプをつなげて自作した。
22.5mmのパイプを繋げるために、一回り大きな25mmのパイプをジョイントとして活用している。 

奥行き方向のパイプは27mの長さが足りない

25mmのパイプをジョイント用に切断していく

パイプを繋げる方法①:違う径のパイプをジョイントとして活用

パイプを繋げる方法②:ビスで固定する

パイプを繋げる方法③:ビスで固定した

ビスはステンレス製のものを使用

上部と側部に奥行き方向のパイプを入れるための位置を決める水糸

上部と側部に奥行き方向のパイプを入れる

パイプはこのように固定していく

水糸の高さに合わせてパイプを入れていく

ハウス作りで最も大切な作業のひとつが、骨組み作りである。農業用ハウスは、パイプの組み方によって強度が大きく変わる。パイプの位置がずれていたり、高さがそろっていなかったりすると、全体の形がゆがみ、ネットもきれいに張れない。

まず、ハウスの外周を決め、パイプを建てる位置を確認する。この段階で、できるだけ正確に位置を出すことが大切である。少しのズレでも、反対側まで進むと大きなズレになることがある。

パイプを地面に差し込む作業は、思った以上に力がいる。地面が硬い場合は、穴を開けたり、打ち込みやすいように工夫したりする必要がある。筆者らは22.5mmパイプを地面に差し込む前に、20mm幅で30cmの穴を開けた。これで、背の高いパイプもすぐに差し込むことができた。

また、左右の高さをそろえることも大切である。ハウスは全体でひとつの構造物なので、一部だけ高さが違うと、後の作業に影響する。

DIY②:ネットを張るための準備

骨組みがある程度できたら、今度は奥行き方向に、ビニペットを入れていく。ビニペットとは、ビニールハウスのフィルムをパイプに固定するための、レール状の止め材(固定具)である。これとスプリングによって、ネットやビニールを固定していく。

ビニペットを入れていく。ビスで固定する

ハウスの上部にもビニペットを入れる

側部にもビニペットを入れる

ビニペットは専用のジョイントがある

ビニペットは、多少ハウスの補強にもなる

DIY③:ネットを張っていく

今回のハウスは、ビニールは張らずに、遮光ネットだけを張るシンプルなものにした。遮光ネットのみでも、ある程度雨風や直射日光を凌げて、苗が育てられる。ただ、遮光ネットが、3m幅のものしか用意できなかったので、重ねて張っていくことになった。ビニペットのレールも、遮光ネットの幅に合わせて入れていった。

二人がかりで、上と下を同時に止めていく

上部もスプリングで止めていく

下から引っ張りながらゆっくり止めていく

ネットがだらっとしないように、全体的に伸ばしながらとめていく

上からのアングル

ゆっくり伸ばしながら全体に張っていく

下からの様子

DIY④:防草シートで全面を覆う

今回のハウスは、地植えをせずに、鉢植えで植物の苗木の育苗を目的としたハウスであるため、地面はすべて防草シートで覆うことにした。地面の草をすべて刈り、大きな石などを取り除き、ある程度地面を平らに均したあとで、市販されている物の中で、耐久性の一番高いシートを張った。

ハウスの全面積に防草シートを張る

風の向きに逆らわないように張っていく

ゆっくり慎重に真っ直ぐに張っていく

3棟目

すべて張り終えたあとはとても気持ちが良かった

DIY⑤:ハウスの出入り口、奥行き方向の壁など

奥行き方向の壁に当たる部分にも、取り外しができる専用のパイプ資材が用意されている。もともと野菜用ハウスだったため、トラクターなどが出入りしやすいように、すぐに取り外しができるようなものになっている。今回は、そちらを固定する。

奥行き方向のパイプで余った分はパイプカッターで切り落とす

奥行き方向の壁に当たる部材

3連棟なので、合計6か所取り付けていく

このようなジョイントで簡単に取り外しができる

別アングル

ネットもかけていく

ざっと横方向にかける

出入り口はとりあえず、ネットを切って作った。側面にビニペットを配置し、ネットが開け閉めできるようにした

DIY⑥:完成

周囲に防草シートを張って完成

内側

徐々に植物や植え替え用の土を搬入していく

かん水用のタンクも入れた

苗木たちも元気そう

ハウスの裏には、防草シートを敷き、余った資材を保管している

DIYでかかった費用は約55万円

ハウスの材料代

今回のハウス自作では、資材費として約55万円かかった。内訳は画像の通りだ。
ハウスネットの一部は、中古で用意でき、そのほかのビニペットや防草シート、ビス代などを新品で購入した。

もちろん、ハウスの大きさ、資材の種類、地域の価格、既に持っている道具の有無によって費用は変わるため、この金額はあくまで一例である。

今回は、いろいろな中古部材を活用して費用を抑えたが、その分時間と労力はかかった。このハウスを建てるまでに、途中天気が崩れるなどして作業が中断したこともあり、完成までは12日間を要した。
DIYは、単純に「安く済む」というだけで考えると失敗しやすい。費用を抑えられる可能性はあるが、その代わりに、調べる時間、作業する時間、やり直す手間が発生する。また、施工の精度や強度についても自分たちで責任を持つ必要がある。そのすべてを含めて楽しめる人には、ハウス自作は非常に面白いと感じる。

実際に作ってみて大変だったこと

ハウス自作で大変だったことは、作業の全体像が最初から完全には見えないことである。プロであれば手順が頭に入っているかもしれないが、筆者らのような素人の場合、一つ作業するたびに次の課題が出てくる。
例えば、パイプを立ててみると高さがそろわない。なぜか長さが揃わない。ネットを張ろうとすると風で飛ばされる。などのように、作業中に細かな問題が次々に出てくる。そのたびに何度もやり直しを行い、ようやく現在の形になった。

しかし、これはDIYの面白さでもある。問題が出るたびに考え、調べ、試し、改善していく。その過程で、ハウスの構造や資材の使い方が少しずつ理解できるようになる。完成品を買うだけでは得られない学びがあった。
また、体力的にもかなり大変である。屋外作業ということもあり、朝早起きして作業をし、日中は資材などの買い出しに行った。お店と畑を何度も往復して、重い資材なども運んだ。ハウスの材料以外の工具(インパクトやグラインダーなど)もその都度、買い足した。大変であったが、終わってみるとそれなりに楽しいものでもあった。

まとめ

今回、ハウスを自作している時に、一昔前の知り合いの農家さんから「今の時代はハウスは建てるのではなく頼むものだよ」と言われた。インターネットがない時代はどこに頼めば良いかわからないし、手軽でなかったので、自分で建てる必要があったと言う。一昔前の農家は野菜や果樹作り以外にも、このようなDIY作業もこなさないといけない環境であった。確かに、現在は、多くのサービスがなんでもそろっているため、果樹作りや野菜作りのみに集中できるかもしれない。とても良い時代になったのだと感じる。

一方で、農業という仕事そのものは、作物を作るだけでなく、環境そのものを作っていく側面もあると思う。畑に必要なものを考え、自分で工夫し、少しずつ形にしていく。その積み重ねが、自分の農業を面白くしていくものでもあると感じる。そういった意味では、ハウス自作は大変でもあるが、果樹作りに必要な環境を考えながら、一つずつ構築していくのも、長期的な視点で考えれば、十分に価値のある選択肢なのではないかと思う。今の時代、ハウスDIYは少し時代錯誤に見えるかもしれない。しかし筆者としては、自分の農業に必要な環境を自分で考え、手を動かしながら作っていく経験には、十分な意味があると感じている。

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