センダングサとは?「くっつき虫」の正体と主な種類・見分け方
センダングサはキク科センダングサ属の植物です。日本の畑や道端では、コセンダングサやアメリカセンダングサなど、いくつもの近縁種を見ることができ、ほとんどが元々日本には生息していなかった外来種です。いずれも繁殖力が旺盛で雑草として困らされることも多いです。
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センダングサの「種」と呼ばれている細長い部分は、正確には「そう果」と呼ばれる果実です。アメリカセンダングサのそう果は長さ6~10mmほどで、先端には数本の芒(のぎ)があります。この芒には、先端とは反対方向を向いた小さなトゲがあります。つまり、構造としては小さなかえし付きの釣り針のようなもので、いったん繊維や動物の毛に入り込むと、簡単には抜けません。
植物からすれば、これは非常に優れた種子散布装置です。動物の毛や人間の衣服に付着し、その人や動物が移動した先で落ちることができます。自力では移動できない植物が数百メートル、場合によってはさらに遠くまで種子を運ぶことができるため、生息域の拡大につながります。ちなみに種は水に浮かぶので、水域へ運ばれることもあります。
センダングサの開花・結実時期
センダングサ類の開花時期は、種類や地域によってかなり異なります。アメリカセンダングサの場合、日本では早春から出芽し、8~10月ごろに開花するのが一般的です。その後、およそ1か月かけて種子が成熟します。一方、コセンダングサの花期はより長く、繁殖期は6~11月です。さらに九州南部~沖縄、小笠原にみられるタチアワユキセンダングサは通年開花します。「秋に花が咲く草だから夏までは大丈夫」と考えてのんびり構えていると、すでに種が落ちているかもしれません。
日本でよく見るセンダングサの主な4種類と見分け方
センダングサ属は変異が大きく、近縁の種類同士には中間的な個体もあります。そのため「葉だけ」で完璧に見分けようとするより、花・総苞・茎・果実をセットで見るのがおすすめです。
コセンダングサ

コセンダングサは、本州中部以西を中心に、荒地や路傍、河川敷、畑地など幅広い場所に生育する一年草です。高さは50~110cmほどになります。
頭花は黄色で、基本的に花びらのように見える舌状花がありません。黄色い筒状花だけが集まっているため、遠くから見ると小さな黄色いボタンのように見えます。
葉は3~5枚の小葉からなる複葉で、茎は淡緑色。果実(そう果)は細長く、先端には芒があり逆向きのトゲがついています。
アメリカセンダングサ

アメリカセンダングサは北アメリカ原産で、大正時代に日本へ侵入したとされる一年草です。湿った場所を好み、水路や湿った路傍、休耕田、排水の悪い畑などでよく見られます。
大型になりやすく、高さ100~200cmに達するとされています。茎は四角形で、暗紫色を帯びているのも特徴です。
最大の見分けポイントは、花の周囲にある細長い葉のような総苞片です。6~12枚ほどが放射状に広がり、黄色い頭花より長く伸びるため非常によく目立ちます。花は黄色で、筒状花だけの個体もあれば、ごく短い舌状花をもつ個体もあります。
葉は3~5枚を中心とした小葉からなる複葉です。果実は扁平なくさび形で、先端には2、3本の芒があります。
アイノコセンダングサ

アイノコセンダングサは、コセンダングサによく似た一年草で、高さは50~110cmほどになります。一説ではコセンダングサとコシロノセンダングサの雑種と考えられ、それが「アイノコ」という名前の由来にもなっています。ただし分類については諸説あり、独立した変種として扱う場合もあれば、コセンダングサの変異の範囲としてまとめて扱う考え方もあります。
コセンダングサは基本的に黄色い筒状花だけですが、アイノコセンダングサでは、黄色い中心部の周囲に白色で短く不揃いな花弁状の部分が現れます。ただし個体差が大きく、白い部分がごく小さいものから、やや目立つものまであります。
葉はコセンダングサと同じような3~5小葉の複葉。果実は細長く、先端には2~4本程度の芒があります。
タチアワユキセンダングサ

タチアワユキセンダングサは九州南部から沖縄、小笠原などに分布し、今回紹介する4種の中では花が最も目立つため、比較的見分けやすい種類です。高さは50~150cmほどになり、暖地では一年草~多年草として生育します。
中央に黄色い筒状花があり、その周囲を大きな白い舌状花が囲みます。頭花の直径は約3cmあり、コセンダングサなどと比べてかなり大きく見えます。
茎は淡緑色で毛が多く、葉は3または5小葉の複葉です。南西諸島では周年的に生育・開花します。さらに成長すると茎が倒伏して横へ広がり、地面に接した部分から不定根を出して新しい株を作ることがあります。このため、種子だけでなく茎からも広がるのが厄介なところです。果実は平たい四稜形で、先端に芒をもち、人や動物に付着して広がります。
| 種類 | 花の見た目 | 総苞 | 茎 | 一番の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| コセンダングサ | 黄色、舌状花なし | あまり目立たない | 淡緑色 | 黄色いボタン状 |
| アメリカセンダングサ | 黄色 | 長く非常に目立つ | 暗紫色 | 花の周囲の長い総苞 |
| アイノコセンダングサ | 黄+小さな白 | 目立たない | 淡緑色 | 中途半端に白い花 |
| タチアワユキセンダングサ | 黄+大きな白 | ― | 淡緑色・多毛 | 直径約3cmの白い花 |
農家や庭師を悩ませる「センダングサ」の被害と危険性
農作物への深刻な影響
センダングサ類の問題は、単に「見た目が邪魔」というだけではなく、作物より大きくなる、作物を覆う、収穫作業を邪魔する、大量の種子を翌年へ残すといった点で農業生産上の大きな問題となっています。中でもアメリカセンダングサは、東北から九州にかけてダイズ畑の強害雑草となっています。生育条件が良いとダイズの草丈を超えるほど大きくなり、作物と競合します。また、水田でも畦ぎわや湛水が不十分な場所でも旺盛に育ちます。巨大化した株は茎の基部が硬くなるため、鎌で刈るのも容易ではありません。収穫時にはコンバインに詰まる原因となり、高密度で発生すると収穫作業そのものの妨げになることがあります。
タチアワユキセンダングサも、沖縄のサトウキビ畑では深刻な雑草です。半つる性になってサトウキビの上まで覆いかぶさり作物と競合し、問題になっています。このようにセンダングサ類は農家にとって厄介な要素をいくつも兼ね備えた雑草なのです。
放置は厳禁!1 株から数千個発生する「シードバンク(種子銀行)」の脅威
アメリカセンダングサは1頭花に、多い時には100近い花をつけ、1個体から7,000粒を超える種子を生産する場合があると言われています。そこで重要になるのが「シードバンク」という考え方です。シードバンクとは、土の中に蓄積された発芽可能な雑草種子の集団のことです。地上の雑草だけを刈っても、土の中に種子が残っていれば、条件が整うたびに新しい個体が発芽してきます。アメリカセンダングサについては種子の寿命は比較的短いとされていますが、「何十年も生き続ける種があるから怖い」というより、毎年大量の種を補充してしまうことが問題です。1株7,000粒の場合、10株残せば単純計算で7万粒です。「今年は少しくらい残っていてもいいか」で、翌年の除草作業が恐ろしいことになるかもしれません。
【農家直伝】センダングサを根絶・駆除する 3 つの方法
センダングサの防除方法は主に下記の3つに大別されます。
1. 発生初期に手取り・機械除草する
2. 必要に応じて適切な除草剤を使う
3. 種子を作らせず、翌年の発生源を減らす
駆除の際の原則のほか、この3つを組み合わせた方法についても見ていきましょう。
駆除の絶対原則:「花が咲く前」に対処する
センダングサ防除で最も重要なタイミングは、開花・結実する前です。センダングサは開花後約1か月で種子が成熟します。しかもアメリカセンダングサの大型株では、刈り倒した後の植物体上でも種子の成熟が進むことが報告されています。つまり「種がまだ黒くなっていないから大丈夫」と畑に放置するのも危険なのです。センダングサの種類によって開花時期も違うので、「花が咲く前=夏」などと決めつけずに、「見つけたら小さいうちに。遅くとも開花前」と覚えておきましょう。
物理的駆除(手除草・草刈り)のコツと注意点
小さな株で、狭い範囲であれば手取りが最も確実です。特に開花前に抜き取ってしまえば、種子を圃場へ追加することもありません。土が乾いて硬いと根だけ残しやすいため、雨の翌日など土が柔らかいタイミングは作業もしやすくなります。
広い範囲になると草刈り機が便利です。ただし、草刈機を使う場合は「一度刈れば終了」と思わないことが大切です。
特にタチアワユキセンダングサでは、かなり厄介な研究結果があります。タチアワユキセンダングサを対象にした研究では、刈取り後に残った茎の腋芽から新しい枝が伸び、再び開花することが確認されています。さらに12~16週間隔で刈った区では、刈らなかった区より花序量が増える「過剰補償」もみられました。一方、4~8週間隔で繰り返し刈った区では繁殖が抑えられています。つまり、中途半端に一度だけ刈って安心するのが危険です。刈取り後は再生を確認し、必要に応じて再度除草しましょう。
また、秋になると夏に比べて草の伸びが落ち着いてくるので頻繁に草刈りをしない人が増えます。しかし、センダングサは種類によっては11月まで花を咲かせて種を落とすので、しっかりこちらの隙をついてきます。夏の間に刈り残しがある場合は秋の除草も忘れずに。「去年はこの辺にくっつき虫が生えていたな」という場所があれば、そこだけでもピンポイントで刈りにいくと効果的です。
効果的な除草剤の選び方と散布タイミング
一般的な防除では葉に散布するタイプの除草剤、茎葉処理剤で対処することが多いです。ただし、アメリカセンダングサが問題となるダイズ作や、タチアワユキセンダングサが問題となるサトウキビ作では、発芽前~出芽初期の雑草を抑える「土壌処理剤」と、発生している株に散布する「茎葉処理剤」を組み合わせる体系が効果的です。まずは芽が出るところを叩く、そこで対処できなかったものについては茎葉処理剤で叩く、という二段構えです。
茎葉処理剤の使用のポイントは、株が大型化する前に処理することです。大きくなってから薬をかけるより、小さいうちに防除する方が効果を得やすいということです。センダングサは種で増えるタイプの植物なので、茎や葉が枯れればよく、多年草のように根こそぎ枯らすことを目的とする必要はありません。そのため、根への浸透移行性は特に必要ないでしょう。
除草剤を使用する際は、「センダングサに効く成分だからどこでも使える」という訳ではありません。農地、家庭菜園、庭木、芝などに除草剤を使用する場合は、農薬登録のある製品を選び、対象作物、使用量、希釈倍数、使用時期、回数などラベルに記載された使用方法を必ず守ってください。登録内容は変更されることがあるため、実際に使用する時点で最新情報を確認しましょう。
センダングサを再発させないための防除・予防策
防草シート・マルチングによる遮光
センダングサ類は種子から発生するため、土壌表面を覆って光を遮り、幼植物が地上へ出にくい環境を作ることも有効です。防草シートやマルチによる被覆は雑草の出芽抑制に効果的です。防草シートは家庭菜園の通路や果樹園の樹間など、作物を植えない場所では特に使いやすい方法です。ただし、すでに種子をつけたセンダングサの上からシートを敷くだけでは、周囲に種子が残ってしまいます。先に地上部を除去してから施工するのがおすすめです。また、植え付ける畝についてはマルチが栽培面でも費用面でも使いやすいでしょう。
耕起と被覆植物(カバークロップ)の活用
タチアワユキセンダングサは、地下7cm程度までなら出芽しますが、10cmの深さからは出芽しないとされています。そのため深耕は発生密度低減に有効と言われますが、耕起だけに頼ると、別の場所にあった種子を表層へ持ち上げることもあります。そのため、一回深く耕したら根絶できるというものではありません。
また、裸地を作らず、ムギ類など成長の早いカバークロップで地表を覆う方法も、一般的な雑草抑制策として利用されています。カバークロップが光や生育空間を先に確保することで雑草との競争を強め、刈り倒した残渣をマルチとして利用すれば土壌表面への光も減らせます。ただし、これはセンダングサだけを狙い撃ちする技術ではありません。作物とカバークロップ自身が競合することもあるため、栽培体系に合わせて利用しましょう。
刈り取った株と種の正しい処分方法
開花前に抜いたり刈り取った株は圃場内に放置しておいても問題ありませんが、開花後の株では扱いに注意が必要です。アメリカセンダングサは、大型株では刈り倒された後にも植物体上で種子の成熟が進む場合があります。そのため、「刈ったから終わり」と畑の隅に積んでおくとそこから種が拡散してしまうおそれがあります。開花後に除草した株は、圃場内へ放置せず圃場外へ持ち出し、種子を農地へ落とさないようにしましょう。また、草刈り機や衣服などに付着した種で、自分自身がセンダングサの「種まき機」になる可能性もあります。やはり、開花・結実前に刈り取ることが大切です。
【覚えておきたい】服やペットについてしまった種を簡単に取る方法
ニットや綿についた種を生地を傷めず取る道具

センダングサの種がズボンやニットに大量につくと、一本ずつ指で取るのはかなり大変です。家庭で手軽なのは、乾いたタオルやウエットティッシュで、種がついた方向に沿って軽くこする方法です。衣服より細かな繊維に種のトゲを引っ掛け、そちらへ移していきます。
また、ICカードや薄いプラスチック片などの縁を使って軽くしごく方法もありますが、生地によっては毛羽立ちや傷みにつながるので、まず目立たない部分で試してください。
ちなみに種がついたまま洗濯機に入れるのはおすすめできません。黒い棒の部分は取れても、細い芒だけが残って再びチクチクする〜となった経験があります。しかも芒は非常に細かいので、どこについているのか見つけるのが難しく、余計に取り除くのが大変になります。洗濯機に入れる前にとっておいた方が後々の手間を省けます。
犬や猫などペットの毛に絡まったときの安全な外し方
毛に付着した種が少量なら、まず指で毛をほぐし、スリッカーブラシやコームなどで毛先側から少しずつとかして取り除きます。無理に一気に引っ張ると毛や皮膚を傷めるため、優しく作業してください。大きな毛玉になっている場合は注意が必要です。皮膚の近くをハサミで切ろうとすると、毛と一緒に皮膚を切ってしまう危険があるため、バリカンを使用するか、難しければトリマーや獣医師に相談してください。散歩から帰ったら、耳の後ろ、脇、腹、足の指の間などもチェックしておくと安心です。
意外な一面も? センダングサの薬草としての歴史
雑草として嫌われるセンダングサですが、世界的に見ると古くから食用・薬用植物として利用されてきました。アジア、アフリカ、中南米などで伝統的に利用され、若い葉を食用としたり、茶や民間薬として利用したりしてきた歴史があります。薬草として利尿や血流改善、炎症の治療に使われていたこともあるようです。
宮古島の「ビデンス・ピローサ(タチアワユキセンダングサ)」と健康茶
沖縄県宮古島では、タチアワユキセンダングサを管理栽培し、「宮古ビデンス・ピローサ」の名称で健康茶や食品、化粧品などに加工する取り組みがあります。なお、「宮古ビデンス・ピローサ」は植物の別種名ではなく、管理栽培・加工されたタチアワユキセンダングサにつけられたブランド名です。タチアワユキセンダングサの抽出物については、抗酸化作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用などを調べた研究があります。実は人間に役立つ効果を秘めているのかもしれません。
まとめ
センダングサは、服にくっつく「くっつき虫」として身近な植物ですが、農地では強い繁殖力をもつ厄介な雑草です。農作物の競合となる場合は機械除草と除草剤による総合的な防除が必要となります。種子で繁殖する植物なので、最も重要なのはタネを落とさせない事。次の世代を作らせないことです。1株でも数千粒の種を残す雑草だからこそ、巨大になってから格闘するより、小さいうちにさっと対処する方が圧倒的に楽です。衣服につくと取り除くのが厄介で草刈りが嫌になってしまうので、畦や通路のセンダングサはまだ小さい段階で早めに除草してしまいましょう。
















