
株式会社サンホープ代表取締役の益満ひろみさん
昨今の急激な気候変動で重要度を増す、日本の農業の「水づくり」とは
2027年に創業50年を迎える株式会社サンホープは、低水量型のマイクロスプリンクラー等の普及に日本で初めて取り組んできました。創業以来、農業用のかん水システムをはじめ、様々な水にまつわる設備を販売し、日本の農業と水の関係を見つめてきました。

「動物と同様、植物にとっても水は重要。毎日きちんとかん水しなければ、植物は健やかに育ちません。サンホープは『水と環境をコーディネートする企業』を理念に掲げて、様々なかん水関連商品を取り扱ってきました。その長い歴史の中でも、特に近年は気候変動で農業と水の関係が大きく変わっていると感じています」
と話す益満さん。日本は比較的降水に恵まれる一方、近年は高温・少雨や降雨の偏りが大きくなり、必要な時に必要な量の水を届ける重要性が増しています。
「天候の影響を受けやすい露地栽培はもちろん、比較的かん水をコントロールしやすいハウス栽培まで、気候変動の影響は様々に出ています。『かん水についてしっかり考えましょう』というと、これまでは水不足への対策がパッと頭に浮かんでいました。ですがこれからの農業で求められるのは、かん水を適切にコントロールすること。求められるのは、安定し、ムダを省け、植物にとって効果的な水やりができるかん水システムです。私たちはこれを『水づくり』と呼んでいます」

農業を成功に導く水づくりを実現してくれるのが「ドリップかん水システム」だと益満さん。ドリップかん水システムは、作物列に沿って設置したドリップチューブなどから、根域付近へ少量ずつ水を届ける、点滴のようなかん水システムです。特長は、かん水の圧倒的な効率の良さ。FAO(国連食糧農業機関/Food and Agriculture Organization of the United Nations)が示している「Field Application Efficiency/圃場かんがい適用効率」の目安では、スプリンクラーでのかん水の適用効率が75%であるのに対し、ドリップかん水では90%とされています(※1)。ドリップかん水システムは、水のムダを少なく、効果的に植物に届けることができるのです。

パイプから点滴のように水滴が落ちる様子
「ドリップかん水システムは、水資源が限られる地域を中心に発展し、世界各地で活用されてきました。一方、日本でも近年、高温・少雨や降雨の偏りといった気候変動への対応に加え、作物に必要な水を少量ずつ、こまめに与える『少量多頻度かん水』を取り入れる栽培も広がっています。水を一度に多く与えるのではなく、作物の生育や天候に合わせて必要な量を届けるという考え方です。こうした水管理を実現する手段の一つとして、ドリップかん水の重要性は今後さらに高まっていくと考えています」
サンホープが扱うドリップかん水システムなら、日本の農業が直面している課題にも対応しているといいます。その強みについて、次章でじっくりと語っていただきます。
※1:FAO「Annex I: Irrigation efficiencies」
かん水だけではない、様々なメリットを享受できるサンホープのドリップかん水システム
「スプリンクラーのかん水では、風で水が飛ばされたり、枝葉に遮られて土に水が届かないというロスが生じています。一方、ドリップかん水は、土のすぐ真上から作物の植わっている根元に、点滴のように確実に水を落とすことができます。これで根にしっかり水分が届きます。さらに、ドリップかん水システムでは、液肥を水に混ぜ込むことができるので、施肥の効果も高まります。水と肥料を必要なタイミング・量で根域へ届けやすくする「ドリップ・ファーティゲーション」という技術で、近年注目を集めています。」

ドリップ敷設圃場にかん水システム(ドリップ・ファーティゲーションシステム)を設置した様子
農研機構の露地夏秋ピーマンの実証実験では、点滴かん水と同時に施肥を行うことで、慣行栽培と比較して11~24%の増収が達成されたという結果が出ています(※2)。また、農研機構では、ドリップかん水システムでのかん水と施肥の効率をさらにアップするため、みかん栽培において透湿性マルチシートの下にドリップかん水のチューブを敷く「周年マルチ点滴かん水同時施肥法(マルドリ方式)」を開発し、推奨してもいます(※3)。
他にも、サンホープが大学と共同して行った実証実験では、露地のピーマンやスイートコーンで、しっかりと水と肥料が届いたことで、増収につながったという結果も出ているのです(※4)。
また、サンホープのドリップかん水システムには、スマホでかん水量やタイミングを設定できる機能もあります。ドリップチューブ内部には、水の流れを調整する流路があり、製品によってはダイヤフラムによる圧力補正機構を備えています。これにより、水圧が変化しても吐出量を安定させるほか、細かな異物を排出しやすくし、目詰まりを抑える構造となっています。圃場の広さや水源、栽培する作物、必要な水量などに応じて、ドリップチューブ、フィルター、かん水タイマー、液肥混入器などを組み合わせてシステムを構築していきます。

安定して使用するためには、フィルターの清掃や、各機器・チューブ類の点検など、適切な維持管理が必要です。
「日本の農業は人手不足が大きな問題になっています。また、大規模な圃場を持つ農業法人も増えています。どちらのケースでも、サンホープのドリップかん水システムなら、かん水作業の省力化や、安定した水管理につながるため、他の作業に注力する時間が生まれるのです」
サンホープのドリップかん水システムのさらなる特長は、圃場条件や規模に応じたシステム設計が可能なこと。海外では数百ヘクタールの圃場に導入している例もあるそうです。
「安定して、効率良くかん水・施肥できるだけでなく、省力化・省コスト化にも貢献するのがサンホープのドリップかん水システム」と力強く話す益満さん。実証では増収につながった事例もあり、省力化と合わせて経営改善への効果も期待されています。
※2:農研機構:「日射制御型拍動自動灌水装置の利用による露地夏秋ピーマンの減化学肥料栽培」
※3:農研機構:「周年マルチ点滴灌水同時施肥法(マルドリ方式)マニュアル」
※4:露地ピーマン/農作業研究 53巻4号、2018年:「ドリップ灌漑およびドリップ・ファーティゲイションが露地ピーマンの収量に及ぼす影響」
:露地スイートコーン/農作業研究 54巻3号、2019年:「ドリップ灌漑およびドリップ・ファーティゲイションを用いたスイートコーン栽培における増収効果および多本取り」
水源・電源が限られる場所にも。小規模から始められる落差かん水ドリップキット
ドリップかん水システムに興味を持ち、導入を検討しようと思った方にまずオススメしたいのが「落差かん水ドリップキット」。落差かん水は、タンクを高所に設置し、重力を利用してかん水を行う仕組みです。これまで紹介したドリップかん水システムよりも小規模な圃場が対象となりますが、電力をまったく使用せず、設置も容易なのが特長。それでいて、適時適量でかん水でき、根元に水をしっかり届けることができるといったメリットはそのまま。水源が近くになく、電源の確保が難しい中山間地の圃場などには、特にオススメです。

落差かん水ドリップキット 視察の様子
「落差かん水ドリップキットは、非常にシンプルな仕様なので、一人でも設置ができますよ。私も使っていますが、それはベランダ菜園用のとても小規模なもの。ベランダに棚を設置し、その上にタンクを置いて、あとはプランターにチューブを這わせるだけで設置完了でした。設定した水量でかん水が行われるので、次に水を補給するタイミングがすぐに計算できます。天気や作物の様子を見ながらホースやじょうろで水やりをする必要がなく、とても楽ですね」
ドリップかん水の入り口として落差かん水ドリップキットを試用してもらえれば、さらに自動で施肥まで行え、省力化・省コスト化にもつながるドリップかん水システムに大きな魅力を感じてもらえるはず、と益満さんは話します。
「10月7日から開催される農業WEEK(通称:J-AGRI)に出展しますが、そこでは『水と環境をコーディネートする企業』として、ハウスへの屋根散水の様子なども展示を行う予定です。昨今の酷暑でハウス内の労働環境はより過酷になっています。弊社農場での実証実験で、同じ条件下で屋根散水前後を比較し、屋根散水によってハウス内の温度上昇を抑える効果を確認しました。今後はかん水システムをはじめ、当社の製品を有事の際に有効活用できないか、とも考えています。ぜひ皆さんとお会いしていろいろなお声を聞かせていただければと思います」
今後ますます、日本の気候変動の中で水を必要な時・場所・量で届ける『水づくり』が重要になっていきます。そこで大きく注目されるであろう、『ドリップ・ファーティゲーション』。収量増加に加え、省人化や省コストで増益も期待できるシステムから目が離せません。
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