【プロフィール】
■山口一彦さん
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ベルグアース株式会社 代表取締役社長。 1996年に有限会社山口園芸(現・株式会社山口園芸)設立。2001年に野菜苗の生産・販売を中心とするベルグアースを設立。「日本の農業に革命を」を掲げ、苗の生産管理や研究開発に力を注ぎ、農業の生産性向上と持続可能な農業の実現を目指している。 |
■岩佐大輝さん
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株式会社GRA 代表取締役CEO 1977年、宮城県山元町生まれ。大学在学中に起業し、日本及び海外で複数の法人のトップを務める。2011年の東日本大震災後に、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。著書は『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)ほか。 |
時代の風が吹いた「接ぎ木苗」
岩佐:今日は愛媛県宇和島市にあるベルグアースにやってきました。宇和島といえば真鯛の養殖で有名な地域ですが、ここに日本を代表する農業企業、ベルグアースという上場企業があります。社長の山口さんにお話を伺います!
早速ですが、なぜ野菜そのものではなく、苗ビジネスを始めたのでしょうか。
山口:まず、農業を始めるにあたって、「親父と違う農業」というのが大きなテーマでした。
父は兼業農家で、豆腐屋と野菜の栽培をしていました。人より早くトマトを出荷することに喜びを感じる人で、「いいものができればそれで満足。そこからいくらお金をもらえるかは関係ない」という考え方でした。
私はそれを見て、「このままではいけない」と思ったんです。
岩佐:反骨心ですね。
山口:そうですね。農家に生まれて農業高校に進み、当たり前のように農業を継ぐ中で、「農家が飯を食えない」という状況を目の当たりにしました。飯を作っている農家自身が、ちゃんと飯を食えるようにしないといけない。家族会議をして、「これ以上、借金を増やしたら困る。もう一度チャレンジするなら、しっかり値段を決められるものを作ろう」ということになりました。
そこで目をつけたのが苗です。まずは家庭菜園向けにスイカやキュウリ、トマト、ナスなどの苗を作り始めました。

岩佐:苗の事業が一気に大きくなったターニングポイントはいつでしょうか。
山口:この地域では当時、キュウリ栽培が盛んで、カボチャを台木にキュウリを接ぎ木する「ブルームレス」の苗が広がっていきました。ブルームがなく、果実がピカピカになる苗です。
ただ、接ぎ木は生産者にとって難しい作業でした。そこで、苗を作ってほしいという需要が一気に増えていった。「苗に需要があるぞ」と分かったんです。まさに、時代の風が吹いたのだと思います。
分業による規模拡大
岩佐:ベルグアースの苗づくりの特徴は、オーダーメイドの受注生産ですよね。
山口:基本的に受注生産です。生産者から「こういう苗を作ってほしい」と注文を受けて、そこで売り上げが立つ。最終的な納品日が決まれば、そこから逆算して、いつ種をまくのか、いつ接ぎ木をするのかを決めていきます。
岩佐:つまり、最初に納品日があり、そこから工程を逆算していく。
山口:そうです。だから計画が作れるんです。
苗は、種類によって20日程度でできるものから、60日、90日かかるものまであります。ただ、受注生産なので、何をいつまでに作るのかが見える。そこが大きいですね。
岩佐:とはいえ、苗事業で規模を大きくするのは簡単ではないですよね。
山口:最初は、注文を取るところから種をまく、接ぎ木をする、育てる、出荷する、運ぶところまで、全部一人でやっていました。でも、一人には限界がある。
そこで、「すまん無理、頼む」が口癖になりました(笑)。
自分がやっている仕事を工程ごとに切り分けて、誰かにやってもらう。そうやって、種をまいてから苗を育て、出荷して運ぶところまでの仕組みを作っていきました。
岩佐:まさに分業による規模拡大ですね。
山口:そうですね。規模を拡大するためには、分業・分担が原則だと思っています。

ベルグアースの栽培施設。苗の大きさが綺麗に揃っている
管理しすぎない 現場の「考える力」を残す
岩佐:事業を拡大していくと、どうしても管理が重要になります。どのように管理しているのでしょうか。
山口:会社として必要な仕組みは作ります。ただ、管理しすぎないことも大事だと思っています。
特に植物を育てる仕事は、生き物が相手です。いつ何が起こるか分からない。だから、現場で考える力がないとできません。
岩佐:管理する仕組みと、現場の裁量のバランスですね。
山口:そうです。細かいところまで管理できる仕組みは作る。でも、管理しすぎると考える力がなくなる。だから、現場が自己判断できる余白を残すことが重要だと思っています。
岩佐:今回、若い社員の方にもお話を聞きましたが、入社2年目でも一つのハウスを任されている。これはかなり大きな裁量ですよね。
2年目とは思えないくらい、しっかりチームの一員として仕事を任されている印象でした。
山口:自分で考えて仕事をすることが大事ですからね。
岩佐:植物を育てるうえで、特に大切なのは何でしょうか。
山口:観察力です。観察力を磨くには、変化と違いを常に意識して見ること。仕事の中で苗を観察するだけではなく、いろいろなものを見る習慣をつける。
最終的に、いい苗を作れる人になるためには、そういう観察する癖が大事だと思っています。
岩佐:私も農家になって、植物は人間が理屈で理解できていることなんて本当に表層しかないと感じています。
だから、感じる力や植物と触れ合いながら「どうしようか」と判断する感覚は、理屈と同じくらい大事なんじゃないかと思います。

岩佐:今後、ベルグアースとしてどこを目指しているのでしょうか。
山口:最終的には、フードバリューチェーンを作っていきたい。その中で一番大事なのは、生産者がやりがいを持てるビジネスモデルを作ることです。
そのためにも、まずは苗のシェアをもっと大きくしたい。
現在、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、スイカ、メロンなどでシェア10%程度ですが、最終的には50%くらいまで伸ばしたいと思っています。
岩佐:なぜそこまでシェアを伸ばしたいんですか。
山口:生産者がある程度儲かって、消費者が望む価格で、生産者もしっかり経営できるようにするためには、計画生産が重要だからです。
一定の消費しかないのであれば、それに合わせて計画的にものを作る必要がある。
消費者が必要なものを、必要なだけ供給できる。そんな計画生産の仕組みを世の中に創りたいんです。
岩佐:かなり明確な拡大志向ですよね。
山口:そうですね。賛否があると思いますが、私はそこ(生産計画)をコントロールしたい。農家のために、消費者のために、そういう企業になりたいんです。
まとめ
| ベルグアースの戦略ポイント | ||
| ① | 徹底した拡大志向 | 苗のシェア50%を目指し、農業の生産・流通の仕組みそのものを変えようとしている |
| ② | マネジメントと個人裁量の塩梅 | 現場が考えて判断する余白を残し、「管理しすぎない」組織をつくる。 |
| ③ | 攻めのファイナンス | 農業企業の成長をファイナンスで支える、攻めの経営を実践。 |
岩佐:山口社長は、まず「苗」事業を選択したこと。そして、分業によって規模拡大を加速させ、計画生産につなげるという、明確な戦略がありました。それこそが、ベルグアースの成長の大きな要因だと感じました。


















