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小笠原諸島のコーヒー栽培事情。野瀬農園で採れる年間200kgのコーヒー豆(2/3)

泉 友果子

ライター:

小笠原諸島のコーヒー栽培事情。野瀬農園で採れる年間200kgのコーヒー豆

小笠原諸島の父島で、明治時代からコーヒーを栽培している農家があります。年間200kgのコーヒー豆を生産する野瀬農園にお話を伺いました。

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明治時代から生き抜いたコーヒー

天日干しは約2週間/画像提供:野瀬農園

野瀬農園は、父島でコーヒーやマンゴーを生産している農園です。始まりは、明治初期にさかのぼります。小笠原諸島の開拓が始まり、その頃に野瀬農園の基盤が作られました。政府により、南国の植物の試験栽培が始まり、そのなかのひとつがコーヒーでした。しかし昭和19年、戦争で全島民が内地に疎開することとなります。現在4代目農園主の野瀬昭雄(のせ・あきお)さんは、疎開当時10歳でした。

終戦後も島はアメリカ統治下に置かれます。島が返還され昭雄さんが島に戻ることができたのは、昭和43年、38歳の時です。家族が暮らす内地と父島とを行ったり来たりしながら、10歳の時の記憶を頼りに、ジャングル化した農園を復興させていきました。そんななか、野放しになっていた農地に明治時代より生き抜いていたコーヒーの木の苗を見つけ、なんとかまた栽培を開始したそうです。

今回お話を伺ったもとみさんは、昭雄さんの娘にあたります。もとみさんは内地で生まれ育ち、20年ほど前から野瀬農園で農業に携わるようになりました。

「明治時代からのコーヒーを守っていきたいという思いは、とても大きいです。コーヒーが、戦下を小笠原の土地に順応して自力で生き抜いたこと。30年近く手放さざるを得なかった土地にも関わらず、多くの犠牲を払って取り戻し、その昔に命を懸けて島に渡った初代から受け継いだ農園だということに誇りをもっています」。

小笠原諸島では他品種のコーヒーを生産する農園も増えていますが、野瀬農園では明治時代からの品種を守っています。父島の元々の自然を必要以上に壊さないように配慮し、無農薬で育てていると話します。コーヒー豆は手摘みで収穫、ハニープロセスで加工処理し、約2週間天日干しをしています。

父島でのコーヒーの木は、春に花を咲かせ、収穫時期は9月から12月。今の時期は収穫が終わり、コーヒーの木を剪定(せんてい)したり、春に花を咲かせる準備をしています。通年でコーヒーツアーを行い、季節によって花が開花しているのを見たり、コーヒーを収穫することができ、収穫期以外も通年、収穫後の脱穀や焙煎といった作業が体験できるそうです。

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