独自の食文化を守る あいちの伝統野菜
愛知県は、古くは、尾張地域を中心に種苗業者が活躍したことにより、独自の地域野菜と新たな品種の生産を可能にしてきました。
しかし、近年は伝統的な地域野菜の需要や生産量が低下傾向にあります。このままでは、歴史ある名産品が途絶えてしまうという危機感から、愛知県では伝統野菜をブランド化して食文化の継承のためにPRする働きが見られるようになりました。
2002年からはじまった、「あいちの伝統野菜」の選定は、4つの条件を満たすことが必須です。
1.栽培歴が50年以上あること。
2.地名や人名がついていて、愛知県とゆかりがあるもの。
3.種苗が現存している。
4.種苗や生産物が手に入れられるもの。
この4つの条件を満たし、あいちの伝統野菜に認定されている野菜は、現在21品目。
伝統野菜の生産量増加と知名度向上のために、キャラクターを使用したPRを積極的に展開しています。
愛知県は美食家たちが常に注目するほど、豊かな食文化を形成する地域。あいちの伝統野菜以外にも、名産品として知っておきたい食材が沢山あります。今回は、多くの中の一部をピックアップして紹介していきたいと思います。
世界一長いダイコン、守口大根
かつては岐阜県で生産されていた守口大根ですが、戦後になってからは扶桑町で積極的に生産されるようになりました。守口大根の特徴は、その実長さ。およそ120センチ程度の長さになるように母本選抜をして育てています。直径は2〜3センチ程度なので、細長いビジュアルです。
用途は主に漬物として加工され、粕漬けにしたものは、守口漬として土産定番品となっています。名の由来は、安土桃山時代にまで遡り、当時は大阪府守口市周辺で栽培されていたことにちなんでいるという説が有力です。
愛知県を代表する果物、イチジク
食物繊維やビタミン、鉄分などの栄養素が豊富なイチジクは、古来より親しまれている果物です。美容と健康に良いといわれ、甘酸っぱく独特な旨みが特徴的です。
愛知県では安城市や常滑市、知多市などを中心に生産されており、ハウス栽培と霧地栽培の組み合わせにより、長期的な出荷期間を維持しています。
ハウス栽培の旬は5月から7月。霧地栽培の旬は8月から10月とされていますが、生食以外にも、ジュースやジャム、ワインへの加工がしやすいため、年間を通じて食べられます。
イチジクの名の由来は、「1日に1果ずつ熟す」という言葉が語源となり、イチジクとなったといわれています。
1970年代から愛知県内での栽培が盛んになり、40年近くものあいだ国内トップシェアを維持しているイチジク。栽培方法の安定化により、今後も愛知県を代表する名産品として君臨しそうです。
愛知県生まれの名産品、地鶏の王様・名古屋コーチン
愛知県の名品畜産物といえば、名古屋コーチンが有名です。名古屋コーチンは、国内でも珍しい純粋種の地鶏。赤みを帯びた肉は弾力のある歯ごたえと、コクを秘めています。
その歴史は110年以上と長く、中国産の「バフコーチン」と、尾張地方在来地鶏の交配により誕生しました。全国的に広まるにあたり、名古屋コーチンとして親しまれるようになりますが、生産地の多くは豊橋市や豊田市と、名古屋市周辺地域がメーンです。
名古屋の繁華街では、名古屋コーチンを売りにした飲食店も多く、非常に知名度が高い名古屋コーチン。食べ方もバリエーションに富んでおり、霜降り刺身や、しゃぶしゃぶ、唐揚げなどで楽しめます。また、味噌漬けとして加工されることも多く、土産物の定番品でもあります。
愛知県の郷土料理にかかせないウナギ
名古屋のひつまぶしに欠かせないウナギ。愛知県内では、西尾市、豊橋市、高浜市で養殖されています。蒲焼や白焼きで食べるのが一般的で、土用丑の日は全国的に需要が高まる日です。そんなウナギも、天然の稚魚の捕獲が困難となり、近年では養殖技術の進展に頼るばかりです。
ウナギの由来といえば、天然ウナギは腹が黄色く、ムナギと呼ばれていたものが、ウナギと呼ばれるようになったという逸話があります。
天然ウナギが流通するには、現状は様々な問題が課題となっていますが、養殖事業も懸命に取り組まれています。
新たな地域ブランド 愛知県のてん茶
西尾市、豊田市で生産されているてん茶もまた、愛知県の名産品の一つです。てん茶は石臼で挽くと、抹茶になります。その栽培方法は独自なもので、茶摘みの20日程前から、特殊な布で覆って光を遮り、濃い緑色へと変化した芽を摘み取るというもの。
カテキンやタンニンが豊富で、抹茶として飲用するか、パンや菓子へ使用することがあります。海外ではグリーンティーとして人気があり、アイスクリームなど、スイーツの原料としても需要を高めています。
「西尾の抹茶」は地域ブランドとして登録されており、名産品として積極的なPRが行われています。
地域野菜以外にも、様々な名産品が溢れる愛知県。しかし、天然ウナギの絶滅危機など、課題も残されています。
日々新たな品種や料理を生みだそうとする、愛知県の食へのパワーは衰えることがありません。伝統食材を守りながら、次世代の食材の誕生も期待されます。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)