酢飯と合う白ワイン、出汁感のある赤ワイン
まず、「呼じろう」のあん肝いなりをひとくち食べたいなり王子は、少し考えた後に「これは日本酒ですね」と一言。あん肝と日本酒。酒呑みにとっては最高の組み合わせです。

「これは日本酒ですね」
今回の赤ワインはタンニンがある重めではなく、薄めでフルーティー。旨みのある出汁のような味わいのワインは、いなり寿司と味の方向性が似ています。

「いなり寿司を食べ続けたくなるのは日本酒」
「この赤ワインも割と合いますが、次のものをいただきたいときは口の中をきれいにしたい。いなり寿司を食べ続けたくなるように食欲を誘ってくれるのはやはり日本酒です」(いなり王子)。あん肝は濃厚ですが、お揚げが繊細なため、しつこさがありません。
いなり王子によると、「南関あげは乾燥させると独特のえぐみが出ます。それをこの店ではわざと残して、弾力、歯ごたえも残るように仕上げています」。このお揚げだからこそ、いなり寿司にあん肝という難しそうな組み合わせを成り立たせているのかもしれません。
同じく「呼じろう」の数の子を入れたいなり寿司も驚きの組み合わせです。「お米とお酒のペアリングを探る」では魚介系のペアリングは磯臭さが際立ってしまう場合もあって難しいように感じましたが、「これは白ワインが合います」といなり王子。今回の白ワインは、やわらかい口当りで旨みと酸味のバランスが良く、どことなく酢飯っぽい味わい。これもまた、いなり寿司と味の方向性が似ているように感じられます。果実味もあるワインですが、ほんのりと甘みがあるお揚げのおかげで数の子からは磯臭さがみじんも感じられません。コリコリぷちぷちとした数の子の食感を楽しめるいなり寿司です。
次に、「どちらも辛い大人の味」といなり王子が言う「銀座魚勝」の「わさび穴子」と「香る五目」。これはお酒とのペアリングが期待できます。

わさびが効いているいなり王子
お揚げに黒ごまが乗った「わさび穴子」に入っているのは、茎わさびと穴子。「わさびが超効いていて、日本酒に合います。昼から売っていますが、これはお酒ですね。白ワインも合います」(いなり王子)。お揚げがジューシーで穴子がねっとり濃厚なためか、ビールの炭酸や薄旨赤ワインも脂をさーっと流してくれるため相性良く感じます。
そして、「香る五目」はまるで豚の角煮のように練りからしを付けて食べるタイプ。シャキシャキとした歯ごたえの五目入りで、柚子が香るいなり寿司は、日本酒が欲しくなります。
「いなり寿司は、ただ甘いだけじゃないんですよ」といなり王子が言うように、お酒と楽しみたくなる多彩ないなり寿司たち。今回は用意しませんでしたが、サワーやハイボールなどにも合いそうです。