薬膳の観点から見た牛肉
薬膳の世界で牛肉は、五気は温、五味は甘にあたります。
肉は「胃がもたれる」、「内臓が疲れる」などと避ける方がいるかもしれませんが、牛肉は胃腸を丈夫にする働きがあるとされ、体が冷えたことで食欲がないときに向いている食材です。また、疲れからくる体調の改善にもおすすめできる食材でもあります。
明治時代から普及した牛肉料理
牛肉が日本の家庭用食材として普及したのは、明治時代に入ってからといわれています。明治以前は、一般的には牛肉を食べることはタブーとされていましたが、江戸時代には「薬食い(くすりぐい)」と称し、隠れて肉類を口にする文化があったと言われています。
牛肉の食べ方には、ステーキやロースとビーフ、シチューなど様々ありますが、中でもすき焼きは日本食の代表として、今や世界中で愛されています。
牛肉の薬膳的利用法
お腹が弱い方や、胃腸が冷えて調子が良くない時は、牛肉が煮崩れるまで煮込んだスープがおすすめです。シンプルにそのまま食べるのも良いですし、野菜を入れてアレンジしても良いでしょう。
牛乳アレルギーの人は注意
薬膳では、胃腸を健やかにする働きがあるといわれる牛肉ですが、アレルギー反応を起こす場合があります。牛乳アレルギーがある人や、体質的に合わない方は注意が必要です。一度に多量に食べず、少しずつ体調をみながら食べてください。
たっぷりの野菜も一緒に
和洋中のどんなメニューでも、野菜との相性が良い牛肉。特に和食の中では、ネギやマツタケ、シメジなどの野菜やキノコ類を同時にたくさん摂取できる、すき焼きやしゃぶしゃぶは、優れたメニューといえます。洋食ではビーフシチュー、中華料理ではチンジャオロースなども良いでしょう。
牛肉を使った薬膳料理
おいしく食べて、体をぽかぽかに温める働きがある「牛肉と黄ニラの炒め物」の作り方を紹介します。
「牛肉と黄ニラの炒め物」
材料と下ごしらえ(2人前)
・牛赤身肉(かたまり) 300グラム
・黄ニラ 1/2束(4センチの長さに切る)
・酒 少々
・枸杞子(くこし) 30グラム(酒に浸してもどす)
・ショウガ、ネギ、ニンニク 適量(細かく刻む)
・サラダ油 大さじ1
・ゴマ油 小さじ1/2
・カキ油(オイスターソース) 小さじ1/2
・塩、しょうゆ、みりん 各少々
作り方
1.牛肉を繊維にそって薄切りにし、さらに7ミリ幅の細切りにする。
2.鍋にサラダ油を熱したら、ショウガ、ネギ、ニンニクを入れて香りをだします。
3.牛肉をほぐしながら炒めます。
4.牛肉に火が通ったら、黄ニラを入れて素早く炒め、酒と一緒に枸杞子を入れます。
5.ゴマ油を入れて香りが広がったら、塩、しょうゆ、みりんで好みの味付けをします。
6.味が整ったら火を止め、仕上げにカキ油を混ぜて完成です。
体が冷えていると自覚している時や、胃腸の調子が悪い時にぴったりの料理です。ゴマ油とカキ油の香りが食欲をそそり、黄ニラと枸杞子、牛肉の味わいを楽しめるでしょう。牛肉も細切りにすることで火が通りやすく、胃腸にもやさしいため、家族で楽しめる一品です。
牛肉は焼肉やローストビーフ、テールスープなど、多くの調理法があります。ただ焼くだけでなく、煮ることで味わい深さが増す点が魅力でもあります。これからも、おいしく健康的に、牛肉を食事に取り入れていきましょう。
参考:『台所薬膳 身近な食べ物135種の薬効を活かす』(万来社)