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「おむすび権米衛」のおむすびが大きいワケ【前編】(2/3)

柏木 智帆

ライター:

連載企画:お米ライターが行く!

「おむすび権米衛」のおむすびが大きいワケ【前編】

首都圏を中心に国内43店舗、海外3店舗を展開するおむすび店「おむすび権米衛」は、契約農家直送のお米を店内で炊き上げ1つ1つ手でむすんでいます。その大きさは具も含めて140グラムとコンビニおむすびの1.5倍。この大きさにも象徴されるように、目指すは一貫してお米の消費拡大。立ち上げ当初から農家が再生産可能な一定価格でお米を買い取るなど、生産現場の下支えにも貢献しています。パンやパスタといった輸入小麦による主食の多様化が進むなか、お米の消費を増やして田んぼを守るという強い信念を持っておむすびの販売を拡大し続けています。

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再生産可能価格でお米を買い取る

おむすび権米衛のおむすびはコンビニおむすびの1.5倍の大きさ

オープン当初から変わらないのは、おむすびの大きさ。具も含めて140グラムとコンビニおむすびの1.5倍です。「もっと小さくして」という要望もあるそうですが、この大きさは絶対に譲れないのだと言います。「とにかくお米をたくさん食べてほしいのです」と話すのは、管理本部の内田法子(うちだ・のりこ)さん。
多くのお客は1食で2個食べる。すると、コンビニおむすびを2個食べるよりもごはんの量は100グラムほど多くなる。こうした1食1食の積み重ねがやがてお米の消費拡大につながっていくのです。

「米価高騰」と言われるなか、コンビニや飲食店では1人前のごはんを減量してコスト減を図ることなどが話題になっていますが、おむすび権米衛はこうした米価の変動に左右されることはありません。オープン当初から農家がお米を再生産できる価格として1俵2万4,000円で買い続けているためです。現在使っているお米は、関東以北1道6県の契約農家15グループの計5品種。店ごとに生産者が違えば品種も違います。いずれも減農薬・減化学肥料の特別栽培米で、3店舗では農薬・化学肥料不使用のお米を使っています。

店長たちは契約農家で田植えと稲刈りを体験

そして、田植えと稲刈りの季節には店長が契約農家へ1泊2日の研修に行き、農作業を体験。「天候不順など栽培の苦労話を聞いたり、こちらからは店舗でのお客の反応を伝えたりと、とてもいい交流の場となっています。間柄が近しくなると、前回のお米はいつもと違ったとか気軽に言えるようになります」(内田さん)。お米が育つ現場に立って稲に触れることで、おむすびのむすび方も自然と変わってくるのだと言います。

こうしたおむすび権米衛の姿勢は、農家を経済的に支えるだけでなく、農家のモチベーションアップにも大きく貢献しています。
各店舗ではその店で使っているお米の農家を顔写真付きで掲示しています。稲作が一段落した冬期になると、店舗を訪れる契約農家もいるそうです。自分のお米が都会の客に喜ばれていることは農家のやりがいにつながります。以前は後継者がいないと悩んでいた契約農家もいましたが、おむすび権米衛と取引することで生まれる経済的安定とやりがいが将来の希望につながり、今では後継者問題に頭を悩ませる契約農家はいないと言います。

ちなみに、「うちのお米を使ってほしい」と送られてきた場合は、必ず何度も試食を繰り返して、さらに農家と面談して想いを共有できた上で、初めて契約を交わしています。さらに年5回、社員が契約農家のお米で塩むすびを作ってブラインドの食べ比べを行い、味、香り、甘さ、外観などをチェックして順位をつけ、年間トータル順位が3年連続で最下位だった農家は契約終了。厳しいようですが、現在までに3年連続で最下位になった農家は1軒もないそうです。農家を支えながらも、味に妥協はしない。それがおむすび権米衛の姿勢です。

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