ONIGIRIでなくOMUSUBI

海外発の路面店となるフランス・パリ店
いずれもお米の消費量が多いアジア圏ではなく、あえてお米文化ではない欧米圏。日本企業が海外でおむすび店を展開している事例は、アメリカのほか、お米の関税がないシンガポールや香港などがありますが、ヨーロッパはめずらしい選択。果たして、ヨーロッパでおむすびが受け入れられるのでしょうか。
お米文化でない国を選ぶ理由について、おむすび権米衛を運営している「株式会社イワイ」の岩井健次(いわい・けんじ)社長は、「アジアはすでにお米の文化があり、すでにお米を食べているのだからわざわざお米を普及しなくても…」と言います。つまり、お米同士での競合はやめようということ。お米が受け入れられやすいかどうかは二の次で、あくまで目的はお米の普及。「パンやパスタなど小麦を食べている国で、こんなにおいしくワンハンドで食べられるお米の食べ方があることを知ってもらいたいのです」と管理本部の内田法子(うちだ・のりこ)さん。海外では「ONIGIRI」が「OMUSUBI」よりも知られていますが、おむすび権米衛は「OMUSUBI」にこだわっています。決して「握る」のではなく、ふんわりと「むすぶ」ことで、ごはんが1粒1粒呼吸しているような、ほろりとした食感に仕上がるのです。
かつては真っ黒い見た目が欧米で嫌厭された海苔は、現在ではまったく抵抗なく受け入れられているそうです。パリ店では「天むす」、「和風ツナ」、「うなぎ(日本では夏限定)」といったこってりとしたものが人気で、海外事業本部の栗田潤子さんによると、1番の人気は「天むす」。2番目は日本でも人気が高い「鮭」、そして3番目はパリ店限定の「ゆかりたくわん」と意外にも和風。客層はほぼフランス人で玄米よりも白米のほうが売れていると言います。
一方で、昔ながらの酸っぱい梅干しはフランス人には不人気で、もっぱらパリ在住の日本人向け。ちなみに、パリと言えば、朝食はクロワッサンとカフェオレ…というイメージがありますが、コーヒーは出さず、販売しているのは日本と同様にお茶と水。そして、ニューヨーク店ではスープ、パリ店では味噌汁を販売しています。
お米になじみがなかった欧米人にもおむすびは受け入れられてきているようですが、パリ店オープン後は文化や宗教の違いによる海外での人材育成の難しさに直面していると言います。
内田さんによると、特に日本人の感覚の衛生基準を伝えることに非常に苦労しているそう。「たとえば、店内調理での異物混入を防ぐためにヒゲやアクセサリー類は禁止なのですが、ヒゲは剃れないとか結婚指輪は絶対に外せないとか…。当初は海外展開を加速する予定でしたが、しばらく既存店で腰を据えて現地の文化に合わせた仕組み作りを摸索していこうと思います」