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国際協力の目的で制定された「外国人技能実習制度」 その課題とは?

国際協力の目的で制定された「外国人技能実習制度」 その課題とは?

日本の技能や技術、知識などを開発途上国などの人たちに習得してもらい、経済発展を担う人材育成に協力しようと制定された「外国人技能実習制度」。今や、深刻な人手不足を救う一つの手として、利用している農家も少なくはありません。外国人実習生の数は年々増えていて、実習生たちは日本の農業の重要な担い手となりつつあります。しかし、労働環境の劣悪さ、在留期間の見直しなどさまざまな問題が指摘されていて、課題も多くあります。1993年に制定された「外国人技能実習制度」について、改めてどのようなものなのか振り返り、その課題について考えます。

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外国人技能実習生が農家の労働力を担う現状


農林水産省によると、2017年の販売農家(*)の数は120万300戸で、10年前より61万2700戸減少しています。また単に数が減少しているだけではなく、高齢化も進んでいるため、さらにその状況は深刻です。普段から主に農業に従事している人全体に占める65歳以上の割合は、2017年に66.3%で、10年前の58.2%に比べて約8ポイント増加しています。農家の数が減るとともに、高齢化も進んでおり、日本の農業は人材確保が大きな課題と言えます。(※1、2)
*耕地面積が30アール以上もしくは過去1年間の農作物の販売金額が50万円以上の農家のこと

「外国人技能実習制度」は1993年に国際協力を目的としてスタートしました。外国人の技能実習生たちは、日本の企業や個人事業主などと雇用関係を結び、自らの出身国で修得できない技能などを学び、身に付けます。実習生が所定の技能評価試験に合格していれば、最長5年間、日本に滞在することができます。法務省によると、2017年末における技能実習生の数は27万4233人で、2012年の15万1477人に比べて、12万人以上増えています。(※3、4)

農業分野においても実習生の数は年々増えていて、農林水産省によると、2014年現在で約2万4000人が従事していると言われています。(※5)
就農者が減り高齢化も進む日本の農業にとってみれば、技術を伝えるという本来の目的よりも、人材確保という目の前の課題を解決するために、実習生が欠かせない存在になってしまっていると言えるかもしれません。

実習生の労働環境や在留期間の見直しなど課題は山積み

農家は人材確保ができる、実習生も技術を習得できるといいことだらけのようなこの制度ではありますが、実は課題も山積みのようです。

まずは、実習生の労働環境をいかに守るかという問題です。言葉の壁、文化の壁などそもそも大きな隔たりのある雇用者と実習生の間には、労働環境を巡って対立が起きてしまうこともあるようです。
厚生労働省によると、2016年に全国の労働基準監督機関において、農業関係職種を含むすべての職種の実習実施機関に対して実施された監督指導のうち、約70%にあたる4004件について、労働基準関係法令違反が認められたという調査結果が出ています。(※6)

こうした事態を防ごうと、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を目的として、2017年に「外国人技能実習機構」という認可法人も設立されました。しかし、何よりも重要なのは、実習先となる雇用主が、しっかりと実習生の環境を守ってあげることだと言えます。

そして、実習生の在留期間の見直しも課題のひとつです。昨年、その期間が3年から5年になったばかりですが、来年度から最長10年までに延長できるよう、政府は出入国管理及び難民認定法の改正案の成立を目指しています。雇用者からは、せっかく技術を教えても出身国に帰ってしまっては意味がないという問題点が以前から指摘されてきたため、政府も対策をとったという形のようです。しかし、10年も日本に滞在するとなると、人材の確保という目的で制度を利用する人がさらに増えてしまうという懸念もあります。そもそも何のためにこの制度が始まったかということをしっかりと雇用者が理解し、実習生一人ひとりの思いに心を配る必要があると言えるでしょう。

外国人技能実習制度において、まだまだ課題はたくさんありそうです。しかし、実習生たちは日本で技術を磨きたいとの思いを持ち、実習生の力を求める農家も増えていて、お互いにとって必要な存在になってきています。双方が満足のいく実習をできるよう、しっかり支える仕組み作りが重要です。

実習生たちが日本で学んだことを出身国に持ち帰り活躍すれば、その国が発展することにもつながるという、世界規模での広がりが見られるこの取り組み。実習中だけでなく、その先である未来へと目を向けることが大切なのかもしれません。

※1 農業構造動態調査:農林水産省
※2 農業白書統計表22前付け:農林水産省
※3 平成29年末現在における在留外国人数について:法務省
※4 在留資格等別在留外国人数の推移:法務省
※5 その他の農林水産分野の検討における参考資料:農林水産省
※6 外国人技能実習制度 の現状、課題等について:厚生労働省

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