大産地を支える農家が抱えるアブラムシとの戦い
茨城県八千代町は生産量日本一を誇るハクサイの大産地です。栽培の歴史は大正時代にさかのぼり、昭和41年に国の指定産地となりました。
地元農家の7代目となる清水さんは、秋冬に10ヘクタール、春に5〜6ヘクタールを作付し、実習生7名・従業員2名を擁する大規模経営を率いています。つくば市方面にも複数の圃場を構えており、防除の日はハイクリブーム(乗用散布機)をタンクごと回送車に積んで、1日中圃場を走り回ります。
なかでもハクサイは経営の柱で、春ハクサイを3月から5月頃まで、秋冬ハクサイを10月から翌3月頃まで出荷し、仲卸しを介して関西方面にも届けられています。ハクサイのほかにもキャベツ、ナス、トウモロコシ、リーフレタスなどを手がけており、年間を通じて必ず作物が育っている状態が続くため、防除の手を緩める余裕はありません。

特に秋冬ハクサイでは「9月の定植後から収穫前まで、週に1回は必ず防除に入る」のが基本です。加えて昨今の気候変動で害虫の発生が早まり、散布量も増加傾向にあります。
「以前なら10aあたり150リットルかければ十分だったところが、今では200リットルかけないと安心できないねという話を仲間とよくします」と清水さんは話します。
防除計画は毎年立てているものの、状況次第で現場で組み立て直すことも多く、プラスアルファの薬剤を積んで圃場に向かうのが常態化しています。周囲の生産者も似た状況で、アブラムシ防除の課題はハクサイ産地全体が抱える悩みでもありました。
主力薬剤の『限界』が防除計画を複雑化
清水さんは、長年アブラムシ防除の主軸に置いてきた薬剤について、「発売当初から使い続けて10年近くになります。アブラムシといえばこれというぐらい頼ってきました」と振り返ります。
ところが近年、農薬を散布しても害虫の取りこぼしが目立ち始め、効果に陰りが見えてきました。2025年の春には、薬剤抵抗性の問題に加え、通路の防風・防塵対策として撒いていた麦が育ちすぎて圃場内の風通しが妨げられたことも重なり、アブラムシが大量発生。「出荷ロスが半分以上」という甚大な被害を受けました。
「アブラムシ防除は単剤では厳しいと判断し、2つの異なる剤を混用する防除体制に切り替えました。アブラムシ防除で2剤、チョウ目害虫防除で1剤、加えて殺菌剤と複数の薬剤を圃場の状況を見ながら組み立てるのは骨が折れます」と清水さんは話します。

防除体系を変えると翌週のローテーションにも影響が出るため、毎回の組み立てに頭を悩ませる日々が続き、防除計画の複雑化とコスト増という新たな課題が生まれました。
抵抗性害虫に対応する新剤登場、試験的導入で長い残効性を実感
こうした課題を受けて試験的に使用したのが、2026年3月に上市した新規殺虫剤「エフィコンSL」です。有効成分ジンプロピリダズ(アクサリオン®)は、IRACによって新規の「グループ36」に分類された唯一の有効成分で、既存薬剤とは全く異なる作用機作を持ちます。既知の交差抵抗性がなく、既存薬剤抵抗性をもつ害虫にも効果を発揮できることから、抵抗性害虫の被害に直面する生産者が長年求めてきた解決策として満を持して登場した薬剤です。

早速、春ハクサイで試験的に導入しました。春ハクサイの2回目の防除として4月にエフィコンSLを散布し、従来の2剤混用区と比較。数日後、施用区で「ほとんど死んでいる」という状態が確認され、散布から約2週間後に圃場を確認した際も「動いている虫はいなかった」と清水さんは手応えを語ります。
「効き目の長さを実感しました。残効性は大きな魅力です」と清水さんは話します。
薬剤が葉表から葉裏へ、処理した葉から新葉へ、さらに根からも植物体全体へと移行する優れた浸透移行性も、大規模農家にとって重要なポイントです。複数圃場を1日で回る清水さんにとって、多少の散布ムラがあってもカバーしてくれるという頼もしさと安心感が、散布量の抑制にもつながります。
「エフィコンSL」はアブラムシ類だけでなく、コナジラミ類、アザミウマ類など幅広い害虫に登録があります。ナスやキャベツなど多品目を栽培する清水さんにとって「1剤で複数の害虫・複数の作物に使える」点も大きなメリットです。特に毎年悩まされるナスのコナジラミへの効果にも期待を寄せています。

ローテーションの新たな主力剤としてハクサイ産地全体へ
試験的導入で手応えを得た清水さんは、今秋冬のローテーションに明確なビジョンを描いています。抵抗性の問題で頼れる剤が限られていたこれまでとは違い、「エフィコンSL」という新たな選択肢が加わったことで、防除体系の組み立てに余裕が生まれそうです。
エフィコンSLの位置づけについて清水さんはこう表現します。
「既存のアブラムシ剤をローテーションしつつ、中継ぎのロングバージョンとして2〜3回に1回のペースで入れていきたい」
秋冬作は9月の定植時から防除が始まり、収穫期までアブラムシの防除には複数回の薬剤散布が必要になります。特に意識しているのは収穫を控えた、結束が始まる前のタイミングです。
「ハクサイの頭を結束したらもう防除に入れないので、最後に残効性の長いものを持っていきたい」と清水さんは話します。
産地の生産者間の情報交換でもエフィコンSLへの関心が高まっています。「今年の秋冬でエフィコンSLを使って、みんながこれで行けたねという話になれば、アブラムシ剤の主軸が変わるのではないか」と清水さんは展望します。
かつて10年間、他剤が担ってきた「アブラムシ防除の要」という役割を「エフィコンSL」が引き継ぐ日は、産地全体でそう遠くないかもしれません。

取材協力
茨城県八千代町 清水慎一さん
『エフィコン®SL』製品情報
有効成分: アクサリオン®(ジンプロピリダズ) 10.8%
登録番号: 第25005号
性状: 褐色~暗褐色澄明水溶性液体
毒性: 普通物(毒劇物に該当しないものを指していう通称)
危険物: 三石・Ⅲ・水溶性
有効年限: 3年
包装: 250ml×20本、500ml×20本(地域限定)
®=BASF社の登録商標


















