全国有数の“キジ産地”を未来へつなぐ
日本で唯一、名称に「鬼」の字を持つ自治体がある。
愛媛県南予地方、四万十川上流域に位置する鬼北町。町の約85%を森林が占めるこの町は、清流と山々に囲まれた自然豊かな地域。鬼をモチーフにした町おこしも盛んだ。道の駅には巨大な鬼のモニュメントが立ち、食用ほおずき「鬼灯(ほおずき)」の栽培など、町の名前を生かした取り組みも行われている。

鬼の肩にキジが乗るモニュメントは観光スポットにもなっている
鬼北町ではその豊かな自然を生かし、ゆずや栗、きゅうりの栽培も行われている。なかでも「鬼北熟成雉」は町を代表する特産品である。平成初期から町内で本格的なキジ飼育が始まり、現在では全国でも有数の規模を誇る産地へと成長。鬼北町で育てられたキジは、関東や関西の飲食店へ出荷され、高級食材としてフレンチなどの料理にも使われている。
しかし今、その産地を支える生産者は減少している。かつて10人以上いた生産者は、現在わずか数名にまで減ったという。それでも、この産業を未来へつなごうと、鬼北町では地域おこし協力隊の制度を活用し、新たな担い手の育成に力を入れている。
今回は地域おこし協力隊OBであり、キジ農家の大村怜さんに仕事のやりがいや思いを聞いた。
コロナ禍を経て真剣に向き合った働き方
大村さんの就活期はコロナ真っ只中。働き方や生き方について真剣に考えた時、満員電車に乗り続ける人生に疑問を抱き、働き方の可能性を模索し始めた。ある時インターネットで「田舎インターン」というイベントを見つける。「何かヒントになるかもしれない、行ってみよう」と1ヶ月間高知県へ。大学4年の6月だった。

新天地で挑戦を続ける大村さん
「この田舎インターンの期間中に地域おこし協力隊のことや、鬼北町のキジ飼育のことを知り、やってみたい!と気持ちは固まりました」と大村さん。
地域おこし協力隊として学んだこと
卒業後、まずは鬼北町の地域おこし協力隊として、町から給与をもらいながら、キジの飼育から精肉するまでの一連の流れを学んだ。鬼北町サイドからは、キジ飼育のノウハウを持つ人で地域のキーパーソンとも言える藤城さんを紹介してもらったという。今では自宅も徒歩圏内で、藤城さんと大村さんはまるで師弟のような関係を築いている。

キジ飼育の魅力は可愛いひなたちの成長を見られること。命をもらう責任を持って心を込めて育てることもやりがい。
飼育だけではなく、“売る”視点も知る
「飼育に関しては藤城さんに手解きを受けました。また「鬼北きじ工房」((一社)鬼北町農業公社内のキジの加工・販売部門)では精肉にするための処理や加工、販売についても学ぶことができました。鬼北きじ工房では「鬼北熟成雉」を販売するにあたって、どのようにブランディングされているかを学べたことは、興味深かったですね。キジ肉のおいしさは数値で証明されていて、それは18種類の豊富なアミノ酸が含まれているからです。食肉にこんなにもアミノ酸が含まれているのは稀で、キジとスッポンくらいなのだとか。こういう知識を得るとさらにポテンシャルを感じました。また、イベントに参加して販売を行うことでどんな人が食べるのかも知れました。飼育するだけでなく、マーケットにどんな人がいるのか知ることも生産者にとって大事なことだなと改めて実感しました」
キジとゆず。複数の仕事で暮らしをつくる
現在は、キジ飼育とゆず栽培を軸に農業経営を行っている大村さん。キジは180日間かけて育て、冬場に出荷するため、収入が立つのは年に一度。そのため、年間を通して経営を安定させるために、ゆず栽培にも取り組み、無農薬で主に地元企業に卸している。
「春夏は、自分の仕事の合間に、地域おこし協力隊の時にお世話になった鬼北きじ工房にもアルバイトに行っています」。こうして技術や人脈を活かしながら生活の糧を手に入れているのだ。
「町の特産をつくっている」という誇り
鬼北町のキジ肉は、個体差を最小限にするため、生産者で使用する飼料のルールを作り、また配合にもこだわっている。また、熟成や急速凍結など「鬼北町熟成雉」の優れた加工技術もあって、高い品質を保っている。

初年度の研修を経て、2年目からはある程度の量を自身の裁量で生育する
「飼料代の値上げで大変なこともありますが、町の特産品ということもあり、バックアップがあるので助けられています。我々生産者は町の特産物を作っているというのが誇りですね。鬼北町の小学校の給食ではキジ肉料理が出る時もあります。そうやって地元の人の郷土愛みたいなところに関われるのも嬉しいですね。キジ飼育は20年くらいの歴史があります。先代たちが試行錯誤しながら地域の産業にと大切に育ててくれたものですから、私も大切に後世に残していきたいですね。東京出身で縁もゆかりもない自分が、鬼北町の人たちの優しさに本当に救われてきました。だからこそ、恩返しという意味でも、この仕事を守り続けていきたいです」。
鬼北町で、人とのつながりに救われた
大村さんは仕事のほかに、地域の太鼓集団への加入や県指定無形民俗文化財にも指定されている「五つ鹿踊り」の文化継承活動にも積極的に参加している。
「鬼北町は本当に皆さん人がいい。知り合いのいない私のことも、子や孫のようにして受け入れてくれるし、そういう風土があります。だから安心してきてほしいですね。私も移住者の先輩として、悩み相談ならいつでも受け付けますよ」と笑った。
鬼北町のキジ産業は、特産品である前に、人の思いによって支えられている産業なのかもしれない。
地域おこし協力隊として、“産地を支える側”へ
鬼北町では現在、地域おこし協力隊制度を活用し、キジ飼育の担い手育成に取り組んでいる。
協力隊として採用された場合、まずは鬼北きじ工房に所属し、キジの飼育から加工、販売まで一連の流れを学ぶ。3年間で飼育や加工はもちろん、経営感覚も身につけていく仕組みだ。ルールに沿って育てたキジは買い取り制度も整備されており、未経験からでも挑戦しやすい体制が整えられている。また、キジは鬼北町を代表する特産品であることから、鬼北きじ工房が販路を開拓・確保しており、加工から販売まで一貫して行っている。

農家は町の特産品を作っているという誇りがあり、町は特産品を守っていく責務があり二人三脚でキジ産業を進めている。
さらに、協力隊期間終了後は、キジ農家として独立しながら、ゆずや栗、野菜の生産など地域農業で収入の柱を増やし暮らしを築いていく道もある。また、鬼北きじ工房でアルバイトを行うなど、複数の収入源を組み合わせた働き方も可能だ。もちろん、命を扱う仕事だからこそ簡単なことばかりではない。それでも、大村さんのように地域の人たちと関わりながら、自分の手で産業をつないでいく生き方は、都会では得難い実感に満ちている。
「生き物が好き」
「自然の中で、新しい生き方をしてみたい」
そんな人にとって、鬼北町は人生を変える出会いになるだろう。
条件
元気な方、生き物が好きな方、人・自然が好きな方
資格等
普通自動車第一種運転免許
(キジの飼育や日常生活の移動に必要となります)
雇用形態
地域おこし協力隊(会計年度任用職員)月給制 1年ごとの更新・3年間まで
募集時期
随時
勤務地
愛媛県鬼北町
お問い合わせ先
鬼北町役場 農林課
Tel:0895-45-1111(代表)
メール:nourin@town.kihoku.ehime.jp
\イベント出展のお知らせ/
鬼北町は、下記イベントに出展予定です!
ぜひ、直接会ってお話しませんか?
イベント出展情報
2026年7月4日(土) 【東京】マイナビ農林水産FEST
●開催場所
TKPガーデンシティPREMIUM池袋 バンケットホール4B
●時間
・1部 11:00~13:00(受付時間 10:45~12:30)
・2部 13:00~15:00(受付時間 12:45~14:30)
2026年9月5日(土) 【大阪】マイナビ農林水産FEST
●開催場所
マイドームおおさか 2F 展示ホールD
●時間
・1部 11:00~13:00(受付時間 10:45~12:30)
・2部 13:00~15:00(受付時間 12:45~14:30)
【自治体情報】
鬼北町役場 農林課
〒798-1395
愛媛県北宇和郡鬼北町大字近永800番地1
電話:0895-45-1111(代表)
メール:nourin@town.kihoku.ehime.jp















