ひと玉3千円超えも「雪中キャベツ」のブランド化 2mの雪を付加価値に転換
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ひと玉3千円超えも「雪中キャベツ」のブランド化 2mの雪を付加価値に転換

ひと玉3千円超えも「雪中キャベツ」のブランド化 2mの雪を付加価値に転換
最終更新日:2019年05月31日

冬場は2メートルもの雪に覆われる長野県・小谷村。作物の栽培が困難になる冬場の農家の収入を支えているのが、雪の下で根を付けたまま育てる「雪中キャベツ」です。水分を含むしっとりとした雪が積もる小谷村だからこそ栽培可能なキャベツは、甘くみずみずしい味わいからひと玉3千円を超えるものも。生産組合の小池利治会長と見田勇治さんに、栽培とブランド化の経緯について伺いました。

絶妙な自然環境、糖度10度にもなるキャベツ

根を付けたまま雪の中で育てる栽培方法が特徴の小谷村の「雪中キャベツ」。晩秋に収穫された野菜を土や雪の中に保存した「越冬野菜」などと呼ばれるものは北海道や東北で栽培されていますが、小谷村では雪が降り積もってから2週間以上おいて収穫されます。

積雪時にキャベツを見失わないよう、畑には目印の細い棒が立てられている

日本海からの湿った空気が降らせる水分を多く含んだ雪が、キャベツを冷たい外気から守り凍りつかないギリギリの零度前後に保ちます。一方キャベツは雪の下で糖分を蓄えることで凝固点を下げ、寒さから身を守ります。この小谷村の自然環境がもたらす絶妙なバランスが、糖度が10度にもなる雪中キャベツの果物のような甘さとみずみずしさを生み出すのです。

実際に、4年前に村が行った比較調査では、根を付けたまま雪の下で栽培したキャベツの方が、収穫後に雪の下で保管したキャベツに比べ糖度も食味も優れているという結果が。特に水分を多く含んだ新鮮なみずみずしさは雪中キャベツならではの味わいだそうです。

(雪の中から収穫された雪中キャベツ(小谷村提供))

隣県からの依頼で栽培始まる 「忘れられない味」商品化

積雪により冬場の農業が難しい小谷村では、1960年代まで男性は「小谷杜氏」として酒造りに出かけ、女性はミカンの収穫など遠くは関西まで出稼ぎに出ていました。その後、スキー場ができたことにより出稼ぎに出る人はほとんどいなくなりましたが、雪中キャベツは観光業と並ぶ冬場の貴重な収入源として小谷村の農家の暮らしを支えています。

雪の中でキャベツを栽培するという手法は、1960年代に新潟県内の業者の依頼で取り組んだのがきっかけとのこと。当時は2年ほど出荷しましたが、全て手作業で掘り起こしてそりで駅まで運ぶという手間に採算が取れなくなり、「幻のキャベツ」となっていました。
しかし、「一度食べたら忘れられない」と家庭用に栽培は続けられ、1999年にできた「道の駅 小谷」で販売する冬場の特産品として、小池さんと見田さんら5人の生産者が再び商用栽培に取り組み始めました。

ショベルカーで表面の雪をかき、その後はスコップと手で掘り収穫する(小谷村提供)

道の駅で販売を始めるとその美味しさはすぐに評判に。村内1地区で1000本あまりの苗を植えることから始まった雪中キャベツの栽培は、この15年ほどで7地区に広がり、現在では個人と団体の12~15の生産者が計100アールの畑で栽培を行っています。人口3千人ほど、農家の高齢化も進む小谷村で、雪中キャベツの普及は遊休農地を効果的に活用する手段にもなっています。

ひと玉3千円のブランドを守るために

道の駅の店先に並べると、毎日あっという間に売り切れてしまう雪中キャベツ。インターネットなどでの直販ではひと玉3千円をこえる値で取引されるものも出てきました。県外から買い求めに来る客も多く、一度に数十個単位で購入する人もいるそうです。

おたり雪中キャベツ生産組合のみなさん(小谷村提供)

しかし人気の高まりとともに、県外で作った大量のキャベツをトラックで運んできては村内の雪の中に埋め「小谷村の雪中キャベツ」などとして販売する業者が出るなど、品質の維持に課題も出てきました。

雪の中で栽培する雪中キャベツは、雪の中でダメになってしまうものやネズミ等に食べられてしまうものも多く、無事に収穫できるのが定植した苗の7割程度。2メートルの雪の中、手作業での収穫も重労働です。

手塩にかけた雪中キャベツをきちんと評価してもらいたい。その手段として、取り組んだのがブランド化です。2016年には生産者らが「信州おたり雪中キャベツ生産組合」を結成し、それまで「雪中甘藍」「ゆきわりキャベツ」「雪下キャベツ」などの名前で販売されていたものを「雪中キャベツ」と統一。栽培方法などの基準を設け、統一マークのシールをキャベツに貼付して販売を始めました。また、生産者の収入の安定を図るため、組合では品質の統一と併せて重量での買い取り価格の目安も定めています。また、畑の雪を一緒に詰めて出荷する商品も用意するなど、小谷村の自然と雪中キャベツらしさを楽しんでもらえるよう、付加価値づくりに工夫を凝らしています。

キャベツの生育状況を見る小池さん

雪中キャベツがもたらす、新たなつながり

雪中キャベツは真冬の風物詩としてテレビや雑誌で取り上げられる機会も増え、長年にわたり高い人気を維持しています。しかし、生産者にとっての魅力は高値で売れることだけでなく、雪中キャベツを通した村外の人との交流にもあるといいます。

例えば、6年前から村の観光連盟が中心となって始めた収穫体験。真っ白な雪の中からキャベツを見つけて掘り起こすという宝探しのようなワクワク感が、幅広い世代に人気をよんでいます。
「生産者は70代、80代が中心。雪の下から掘り起こす収穫は大変で出荷にもコストがかかる。それでも、『美味しい』と言ってくれるお客さんの顔や、収穫体験の観光客がキャベツを見つけた時の『やったー』という嬉しそうな声は忘れられない」と見田さんは話します。現在では地区ごとに様々なツアーが企画され、地域の魅力を村外の人に伝えています。

小池利治さん(左)と見田勇治さん

11月下旬、雪が降る前のキャベツ畑を訪ねると、大玉のキャベツが朝露を浴びてキラキラと輝いていました。「雪が早く降らないかなぁと待ち遠しいよ。毎年えらい目に合うのにね」。キャベツの生育状況を見ながら、小池さんと見田さんは笑います。
今年は23000本の苗を植え、16000個ほどの収穫を見込んでいるとのこと。真っ白な雪の下で育まれる甘いキャベツが、今年も多くの人を驚かせ楽しませる季節が、今年もやってきます。

 
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