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畑の雑草図鑑〜ツユクサ編〜【畑は小さな大自然vol.45】

畑の雑草図鑑〜ツユクサ編〜【畑は小さな大自然vol.45】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。夏が近づいてくると大変になってくるのが、雑草の問題ですね。ただでさえ暑くて畑仕事がおっくうなのに、雑草の成長はとても早く、刈っても刈ってもまた生えてきます。その中でも繁殖力の高い夏草といえばツユクサでしょう。気がつくとあっという間に広がって野菜を飲み込んでしまいます。今回はこのツユクサについて知り、対策を考えていきましょう。

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ツユクサとは?

ツユクサはツユクサ科の一年草で、春から夏にかけて発生します。特に5〜6月ごろが最も勢いよく成長し、6月ごろから奇麗な青い花が咲くのが見られます。この花は古くは万葉集で月草(ツキクサ)と呼ばれていましたが、朝露を帯びて咲く姿や、朝に咲いて昼過ぎにはしぼんでしまう朝露のようなはかない様子から、ツユクサと呼ばれるようになったという説などがあります。またその青い色素が染料として使われていたため、色が着く草ということで「着き草」からきているのではないかという説もあるようです。

ツユクサの繁殖力がすごい理由

このツユクサはとても繁殖力が高く、除草剤などでも根絶が難しいため、畑の強害雑草として知られています。その繁殖力が高い理由には主に以下の2つの理由があります。


①茎からも根を出して広がる
②地中にもタネを残す

理由①茎からも根を出して広がる

ツユクサは茎をまっすぐ上に伸ばすだけでなく、横にも広げていきます。その横に伸びた先で、茎から根を出すことができるため、そこでもまた成長に必要な養分や水分を集めることができます。そのため、他の植物に比べて横に広がっていくスピードがとても早く、気がつくと一面ツユクサだらけになっているということがあります。

理由②地中にもタネを残す

茶色くて細い根とは別に、白くて太い茎を地中に伸ばし、そこにタネを作る

ツユクサは花を咲かせた後にタネができ、そのタネで子孫を増やしていくのですが、実は地上部だけでなく地中にも閉鎖花と言われる花をつけ、そこにもタネを作ることができます。ですので除草剤などで地上部を枯らしても地中のタネが残りますし、そのタネの寿命も20年以上もつ場合もあると言われているため、これもまた根絶が難しい理由の一つになります。

ツユクサが生える地力のレベルは?

地力 特徴 生えやすい雑草 適した野菜
レベル4 ほとんどの野菜が少肥料でも育つ ハコベ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなど ナス、ピーマン、キャベツ、ハクサイ、タマネギなど
レベル3 肥料を入れることで、大体の野菜の栽培が可能 ツユクサ、スベリヒユ、カラスノエンドウ、ノボロギク、ツユクサなど ミニトマト、キュウリ、ニンジン、ダイコンなど
レベル2 栄養の絶対量が少ない ドクダミ、スギナ、ハハコグサ、シロツメクサなど サツマイモ、ダイズ、エダマメ、ジャガイモなど
レベル1 土が硬く痩せている セイタカアワダチソウ、ヨモギ、チガヤなど ヒエ、アワ、タカキビなど

畑にどんな雑草が生えて増えるかは、その畑の地力(ちりょく)レベルが大きく影響します。地力とはその土地が持つ植物を育む力のことです。上の表は地力レベルを4段階で分けた時に、どの地力レベルでどの雑草が生えやすいかを便宜的に分類したものになります。つまりそこに生えている雑草を調べれば、その畑の大体の地力レベルを推測することができます。また地力レベルを上げることによって、生える雑草を意図的に変えていくこともある程度可能です。この診断方法についてや地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではなく、僕自身やさまざまな農家の経験則による分類ですので、あくまでも参考程度にしてください。

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雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】
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ツユクサをこの地力レベルで分類するとすればレベル3にあたると考えています。この段階ではある程度地力がついてきているため、ほとんどの野菜が栽培可能になります。地力レベル4に適している野菜も肥料で補うことで栽培が可能になります。地力が上がり、レベル4になるとツユクサなどのレベル3の草の割合は次第に減っていきます。

ツユクサ予防のポイント

ツユクサは繁殖力がとても強く、生えてくるのを完全に防ぐのは難しいですが、できるだけその割合を減らすことは可能です。そのためのポイントは以下の3つになります。

① 畝を耕すのは4月以前に行う
② マルチングを行う
③ 地力レベルを上げる

予防ポイント① 畝を耕すのは4月以前に行う

5月中旬に畝立てを行った場所。見事にツユクサだけが茂っている

ツユクサは5月・6月に最も繁殖します。そのため5月以降に耕すと他の雑草よりもツユクサが優先的に出てきやすくなってしまいます。春夏野菜を作る際は4月以前のできるだけ早めに土作り・畝立てを行っておきましょう。

予防ポイント② マルチングを行う

土の表面をビニールマルチや雑草・落ち葉・ワラなどで覆う方法です。特にビニールマルチは草刈りの手間をかなり省いてくれますので、ツユクサが生える5〜7月の時期にあまり手入れができない場合や初心者の方にはオススメです。ビニールマルチほどではないですが、雑草・落ち葉などを敷き詰めておくだけでもツユクサが生える数は少なくなります。

予防ポイント③ 地力レベルを上げる

雑草堆肥。畑のミネラルバランスを整えてくれる

地力レベルが変化すると生えてきやすい雑草が変わる自然の仕組みを利用し、ツユクサが生えにくい環境にするという方法です。ツユクサの生えやすい地力レベルは3ですので、4まで地力レベルを上げていくことでツユクサの割合を年々減らしていくことを狙います。

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地力レベル3の段階ではある程度畑の生態系も豊かになり、栄養素の総量も増えてきている状態ですので、そこからレベル4まで上げていく際はミネラルなどの微量栄養素も含めてバランスを意識していきます。基本的には自然界の働きで勝手にバランスを取ろうとしてくれ、特に雑草はそのために大きな役目を果たしています。そこに生えてくる雑草を刈って敷く、または雑草堆肥にしてから土に還すことで、自然と栄養素のバランスは整いやすくなります。

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生えてきたツユクサへの対処のポイント

生えてきたツユクサへの対処の仕方を誤ると野菜がうまく育たなかったり、またすぐにツユクサが生えてくることがあります。そうならないために以下の3つのポイントを押さえて対処しましょう。

①根元をしっかり刈りとる
②小さいうちにとる
③刈った後のツユクサは野菜の近くに置かない

対処ポイント① 根元をしっかり刈りとる

このように根元が少しでも残っているとまたすぐに生えてくる

ツユクサは根元が残っていてもまたそこから芽が出てきます。そのため草刈りの際に根元を残してしまうと、せっかく草刈りをしてもまたすぐツユクサが茂ってしまいます。土の上に緑色の部分が残らないようにしっかりと根元の下から刈り取りましょう。根から抜くのもダメではないですが、できる限り根を残した刈り方の方が土が硬くならないためオススメです。詳しくは以下の記事をお読みください。

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対処のポイント② 小さいうちにとる

どの雑草でもそうですが、小さいうちにとる方が大きくなってからとるよりも圧倒的に楽です。特にツユクサは横に広がるスピードが早いため、優先的に抜いておきましょう。小さいうちでしたら手でつまんで簡単に取れます。

対処のポイント③ 刈った後のツユクサは野菜の近くに置かない

刈ったツユクサは野菜から離れた畝の端などに置くと良い

刈り取った後のツユクサは、その茎から根が出てきて、また根付いたりするため、なかなか枯れにくく、しばらく生き続けることもあります。そのため刈り取ったツユクサを野菜の根元に置いたりすると湿気がたまりやすく、病気の原因となる可能性もありますし、野菜の生育の邪魔になりますので、少し離れた場所に置くようにしましょう。

地道に刈り取っていこう

ツユクサの根はあまり深く張らないため、刈り取る作業自体はあまり大変ではないのですが、その広がるスピードがとにかく早いため、精神的に辛くなりやすい点が最も厄介だなと感じています。暑い中の草刈りなどはなかなか大変なものがありますが、今回紹介したポイントを押さえながら地道に対処していきましょう。

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