防寒対策のポイント
1月と言うと、気温が低くて何も種まきできないイメージがあります。しかし、しっかりと防寒対策をすることで、この時期でも種まきできる野菜はあります。そこで冬の寒さから野菜を守る防寒対策について、4つのポイントをご紹介します。
ビニールトンネルとビニールマルチの合わせ技
1月の寒さに対しては完全に外気を遮断する必要があるため、ビニールフィルムで野菜を完全に覆ってトンネルを作り栽培します。横から風が入ると気温が下がってしまい、さらにビニール自体が飛ばされてしまうこともあるため、土や重い鉄パイプなどで押さえたり、杭などでしっかり固定するなどしましょう。
そしてさらに畝をビニールマルチで覆うことで、地温もあげていきます。ビニールマルチは自分で種まきする場所に穴をあけてもよいですが、初めから穴が等間隔であいているものもありますので、そちらを利用してもよいでしょう。
特に冷え込みが強そうな地域や時期の場合は、不織布を野菜の上にじかに被せておくとさらに保温効果が高まります。
温度管理が大切
ダイコンやニンジン、コマツナなどの冬野菜はある一定の期間、寒さに当たると、冬が来たと判断し、トウ立ち(花芽のついた茎が伸びること)の準備をし始めてしまいます。これを春化(しゅんか)と言いますが、昼間の気温が20度以上あればこの春化をリセットすることができます。そのため温度計を用意しておき、昼間にきちんと20度以上になっているかを確かめましょう。逆に35度以上になると野菜がダメージを受けてしまいますので、この場合は換気をして温度を下げましょう。
土の乾燥に注意
ビニールトンネルをする場合、中に雨が入らないため、土が乾燥しやすくなります。土が乾いている場合はたっぷりと水やりをしましょう。中途半端な量の水分をあげると野菜が根を伸ばさなくなるので、土の下の方までしっかりと水分が染み込むようにあげるのがポイントです。
冬栽培用の品種を選ぼう
冬に種まきを行う場合は、寒さに当たってもトウ立ちしにくい晩抽性品種など、それ用の品種を選ぶ必要があります。冬の間に栽培可能かどうかは、種の袋に記載してありますのでぜひチェックしておきましょう。
トンネル栽培にオススメの野菜5選
1月のトンネル栽培を行う時に、特に育てやすい野菜5つをご紹介します。10月・11月の記事でご紹介したものもありますが、冬栽培用の品種でトンネル栽培をすればこの時期にも育てることができます。
ホウレンソウ
ホウレンソウは葉物野菜の中でも特に寒さに強い野菜の一つです。トンネル栽培を行う場合にもオススメの野菜です。
ホウレンソウは酸性土壌を嫌い、中性に近い環境を好みます。土が酸性に偏っている場合、有機石灰や草木灰、もみ殻くん炭などを使って、土壌を中和しましょう。一般的には筋まきで種をまきますが、ビニールマルチを敷く場合は、15〜20センチ間隔ほどに穴をあけ、そこに3〜4粒ずつ種をまいていきます。10センチほどまで育ってきたら、2本ずつ残して間引いていきます。スーパーで売られているような大きさまで待つと、一気に収穫する必要があり、それだと食卓では消費仕切れなくなりがちですので、少し小さめでも大きくなったものからどんどん間引きがてら収穫していく方がオススメです。
ホウレンソウは“長日条件”によって春化が起こります。つまり光の当たる時間が長いと春が来たと判断して、トウ立ちのスイッチが入り、気温の上昇と共にトウ立ちが始まります。そのため太陽光でなくとも夜間に街灯などで光が当たっていると、春化が始まってしまうことがありますので注意しましょう。
小カブ
カブは比較的痩せた土でも育ちやすく、生育も早いので作りやすい野菜です。特に実がそこまで大きくならない小カブが作りやすいのでオススメですし、カブはスズナとして春の七草の一つでもありますから、間引き菜を七草がゆとして楽しむのもよいでしょう。
こちらもビニールマルチに10〜15センチ間隔で穴をあけていき、3〜4粒ずつまいていきます。本葉が3~4枚出た頃から隣同士の葉が重なり合わない程度に間引いていきます。間引く時は残すカブの根が動かないように押さえて抜くか、ハサミで根元から切りましょう。
カブは約10度以下の低温条件で春化するタイプの野菜です。その中でも種子春化型といって種子の頃から低温に反応して春化が促されていきますので、種まきの段階から温度管理に注意が必要です。トンネル内を25〜30度まで上がるようにしておけば脱春化できますので、昼間の温度を計測して管理しましょう。
ダイコン
ダイコンもトンネル栽培でよく作られる野菜です。トウ立ちしにくい品種を選びましょう。ダイコンもスズシロとして春の七草の一つですね。若いダイコン葉は柔らかくて食べやすいので、ぜひ間引き菜から楽しんでみてください。
こちらもビニールマルチに20〜30センチ間隔ほどで穴をあけていき、2〜3粒ずつ種をまいていきます。15センチほど育った段階から少しずつ間引いていき、1本に残します。あまり大きくするまで待っても一気にトウ立ちしてしまい、結局あまり食べられないというようなこともありますので、小さめでも少しずつ収穫していきましょう。
ダイコンもカブと同様に種子の段階から低温に反応して春化が始まるタイプの野菜です。日中の温度が25〜30度になるように管理しましょう。もしトウ立ちが始まってしまったときは、そのままにしておくと根がスカスカになっておいしくなくなります。すぐに収穫して食べてしまうか、土に埋まった状態のまま葉の付け根の部分から葉を切り落としてしまいましょう。葉を落とすと根の肥大は止まってしまいますが、トウ立ちも防げるので、畑でダイコンをしばらく貯蔵しておけます。
ニンジン
ニンジンもトウ立ちしにくい品種を選ぶことで、この時期も栽培することが可能です。ビニールマルチに10センチ間隔ほどで穴をあけていき、4〜5粒ずつほどまいていきます。特にニンジンは発芽するまでに土の水分を保っておく必要があるため、種まきの時点で土が乾いている場合は、しっかりと湿らせてから種をまきましょう。
ニンジンもカブ、ダイコンと同様に10度以下の低温に反応して春化のスイッチが入り、そのあと気温が高くなるとトウ立ちが始まるタイプの野菜です。しかし異なる点として、小さい段階では低温に反応せず、ある程度大きくなった段階で反応する緑植物感応型と言われるタイプに分類されます。低温に反応するサイズは品種によって異なり、トウ立ちしにくい品種ほど反応する時期は遅くなります。
コマツナ
コマツナも寒さに強く、収穫に至るのも早いため作りやすい野菜の一つです。こちらもトウ立ちの遅い品種を選びましょう。ビニールマルチに10センチ間隔ほどで穴をあけていき、3~4粒ずつ種をまいていきます。こちらもホウレンソウと同じように、少し小さめでも大きくなったものからどんどん間引きがてら収穫していく方がオススメです。
コマツナはカブ・ダイコンと同じく種子の段階から低温に反応し、春化します。日中の気温が25〜30度になるよう管理することでトウ立ちを遅らせることができます。
プランターで栽培する場合には地温の低下に注意
今回ご紹介したトンネル栽培はプランターでも可能です。プランターごとに大きめで透明なゴミ袋などをかぶせるのでもよいでしょう。ただし注意点としてプランターはプラスチックなどの素材の場合、地温が下がり過ぎてしまうことがあります。木製のプランターカバーをつけるなど断熱性のある素材でプランターを囲い、土の温度が下がり過ぎないように注意しましょう。