直売所の会計では粗利益が大事
共同直売所は粗利益率が低い商売です。委託式の場合、マージン率が8~25%といわれ、これがそのままその店の粗利益率となります。ただし、野菜は委託式でも、調味料や飲料などの加工品は委託ではない直売所も多く、このときのマージンはまちまちです。
さて、儲かる直売所を目指すうえでは、粗利益を1%でもアップさせられたら、これはなかなか大きいです。
直売所においては粗利益の金額を重視すべきです。なぜなら、直売所では、仕入れ以外のコスト(会計でいえば販売管理費)は固定的であることが多いからです。
つまり、地代、水道光熱費、人件費などは客数や売り上げの多寡にそれほど比例しません。
したがって、粗利益がアップすると、そのまま営業利益がアップすることになります。
今回は粗利益がアップする小技を紹介します。
もちろん、小売業の王道は、よい商品を仕入れることであり、その点については、以前の記事を参照してください。
1. 価格表示を疑う
不思議なことですが、特段の理由もなく、税込みの価格表示になっている直売所も多いです。しかし、税率の8%は大きいので、税抜きにした方が安く見えます。それに、大手スーパーマーケットの青果売り場は税抜きであることが多いので、税抜きにした方がお客様にとっても分かりやすいです。
この際、価格表示の末尾を「0円」にするか、「8円」にするか、「9円」にするか、で迷うかもしれません。これは断然9円です。
149円と150円では見え方が異なる一方で、148円と149円ではざっくり粗利益率が0.5%も変わります。
0.5%は直売所にとって無視できない数字です。
なお、これまで「10円」刻みにしていた場合、1円玉と5円玉をつり銭として用意するという手間が発生しますが、その手間を考えてもなお、0.5~1%の粗利益率アップは直売所経営にとって大きなものです。
そもそもあなたの直売所で、価格表示が税込みでかつ末尾「0円」表示になっている場合、その理由は農家にとって分かりやすい、という理由につきます。
農家の手取りは税込みなので、委託マージン20%で売り値100円であれば、80円が手取りです。これを税抜き表示にすると売り値93円になるわけですが、何かと面倒です。
しかし、農家ファーストかお客様ファーストかといえば、商売なのですからどちらを優先すべきなのかは明らかです。
2. レジ袋を有料化する
レジ袋は国の政策としても有料化の方向があるくらいですから、有料化するのは一考する価値があります。たとえば、客単価600円の直売所で、3円のレジ袋を販売すると、単純計算で0.5%の粗利益率の改善です。繰り返しますがこれは大きなことです。
そして、地域差があるかもしれませんが、レジ袋が有料化されてもさほどお客様の満足度は下がりません。
3. 季節商材を買い取る
季節商材は、委託式ではなく、買い取りにするということも検討しましょう。
たとえば、冬至のゆずやお彼岸の仏花などです。
買い取りにする理由は、当日の売れ行きを見ながら値付けをフレキシブルに変更できるということです。一般的に、こうした季節ものはスーパーなどでも高値が付いているので、粗利益率をしっかりと確保しにいけます。
そして、もし売れ残った場合には、買い取りであれば、値段を下げて処分することができます。
4. 自販機を設置する
自動販売機を置きましょう。一般的な飲み物の自動販売機ですね。邪道ですが(笑)。
共同直売所にはたいていの場合、駐車場があります。レジと駐車場の動線上に自動販売機を置けば確実に利益アップに貢献します。
5. パッケージ資材を見直す
パッケージに使われる資材も検討対象です。
直売所では、野菜以外の地場ものの代表例は、たまご、ハチミツ、手作りジャムといったところですが、きちんとしたパックや瓶を使おうとすると金額はかなり高いです。とくに小規模農家では、パッケージ資材を小ロットでしか買えないので、とても割高です。
なので、パッケージ資材を回収してリサイクルしたり、飲食店などの業務用にはパッケージなしで販売したりすることも検討しましょう。
当社で運営する「しゅんかしゅんか」では、お客様からたまごのパックを回収してリサイクルすることで、仕入れ額を下げてもらっています。
6. 分割して販売する
野菜を分割して販売すると粗利益率はアップします。
白菜であれば、1個300円でも、4分の1にカットして100円で売れば合計は400円です。
冬野菜だけでなく、果菜や鶏卵も個数を少なく売った方が粗利益率はアップします。
粗利益の絶対額は減ってしまうように見えますが、意外と客単価は減らないことも多いです。つまり、その分他の商品を買ってくれるのですね。試してみてください。
「直売所の収益アップについては、初歩編、中級編、また売れる店長の習慣についてこの連載で書いているので、ぜひ参考にしてください。