トマトの歴史
トマトはそもそも、南米アンデス高原生まれの野菜です。アンデスからメキシコに渡り、16世紀にスペイン人によってヨーロッパに持ち込まれました。日本には17世紀頃に伝来し、唐なすびや唐柿と呼ばれていたようです。
食用として栽培されたのは時代が下がり、明治に入ってからです。現代では、生野菜として食べられるのはもちろん、スープやトマトソースなど幅広い調理方法で食卓に並んでいます。
トマトはビタミンCやビタミンEが豊富なのに加え、抗酸化作用のあるリコピンが含まれており、美容にとって非常に良い野菜として愛されています。
トマトの品種
トマトは非常に品種が多く、日本国内で栽培されている品種は120種類ほどですが、世界では8000種類を超える品種があるとされています。
一般的な分類として、大玉トマト(200グラム以上)やミニトマト(30グラム)、その中間の中玉トマトなどの分類分けがありますが、これは品種による分け方ではなく、果実の重さによって分類されています。
本記事では、大玉トマトにポイントを絞り、解説をしていきます。
トマトの栽培時期
トマトの栽培時期、栽培スケジュールは上記のようになります。
は種から始めると栽培期間は1月から10月までになりますが、寒い時期のは種と育苗はハウス施設やビニールでの囲いが必要になります。
初めて挑戦するといった人や設備を持っていない人は5月の苗の植え付けから始めましょう。
トマトの種と苗はホームセンターで購入できます。種から始める場合、3月中頃に育苗ポットに種まきを行います。4月の終わりから5月にかけて定植を行い、7月から10月初旬まで収穫を楽しむことが可能です。
なお、あくまで目安なので、地域や品種により異なります。参考程度としてください。
育てる前に抑えておくべき! トマト栽培の特徴やコツ
種類 | 分類 | 好適土壌pH | 難易度 | 連作障害 | 発芽地温 | 生育適温 | 原産地 |
トマト | ナス科 | 6.0~6.5 | ★★★★ | あり | 20~30℃ | 20~30℃ | 南米アンデス |
トマトが好む環境と気候について
トマトはもともと南米アンデス高地が原産地です。日当たりがよく、よく乾燥した土地を好みます。また夏野菜ではありますが、比較的涼しい気温を好み、昼夜の温度差が大きいとよく成長します。
生育適温は20~30℃です。30℃を上回ったり、10℃以下などの寒い環境に置かれてしまうと結実が悪くなったり、奇形果ができやすくなってしまいます。トマトを長持ちさせ、美味しい果実を収穫するためには、温度管理が非常に大切です。
またトマトは陽光に当てることが大切ですが、未熟な青いトマトが強い日差しに当たってしまうと日焼けをしたり、裂けてしまうこともあるので注意しましょう。
大玉のトマトは肥料切れと肥料過多に注意
大玉トマトは茎葉を伸ばしながら、大きく成長し、たくさんの実をつけていく作物です。そのため、かなりの栄養を必要とします。栽培期間中、肥料を切らさないようにすることが大切です。肥料切れになると、葉が黄色くなり、茎が細く、見るからに元気のない姿になってしまいます。
一方、肥料が多すぎても障害が出てしまいます。
肥料過多になると、葉が内側にぐるりと丸まった状態になったり、茎が太くなりすぎてしまい、穴が空いてしまうことも。
また、つるぼけとなって株ばかり成長し、実がつかなくなってしまうおそれもあるので、肥料の管理は適切に行う必要があります。
トマトは連作障害が出やすい野菜!
トマトは連作障害が非常に出やすい野菜です。ナス科の植物なので、ナスやじゃがいも、ピーマンなど同じ分類の野菜を作った場所で続けて栽培することはできません。3~5年ほど間隔を空ける必要があります。
畑でトマトを栽培する際は、ローテーションを組んで同じ土で連作をしないように調整しましょう。どうしても同じ所で作らなくてはいけないときは、接木苗など連作や病害虫に抵抗性を持った苗を使用しましょう。筆者は、連作とならない場所で栽培する際も、接木苗を使うことをオススメします。
また、プランターや小さな花壇で栽培する場合は、栽培用土を入れ替えれば毎年同じ場所でトマトを栽培することができます。
トマトの栽培方法
トマトの種まき
トマトを種から育てる場合、植え付ける4月下旬に間に合わせるためには1~2月に種をまかなければいけません。ハウスや暖房設備がある人は少ないでしょうから、3月以降にビニールを被せて種まきをしましょう。ポットを囲むようにビニールを張るだけでも十分ですが、ホームセンターで売っているような小型の安いビニールハウスを使うと管理が楽になります。
は種する際は、ポットに直径3センチ、深さ1センチほどの穴をつくり、2〜3粒まきます。事前に種を水に浸すなどして、刺激をしてやると発芽が揃いやすくなります。種まきから苗の植え付けまでの育苗期間はだいたい60日ほどです。
購入したトマトの種をポットに一粒ずつまきます。2~3粒まいて最終的に一本に間引きするのも良いですが、トマトの種って一粒あたりがとても高価なので私は一粒ずつまきます。
土の表面が乾かないように、毎日水やりを欠かさないようにしましょう。
また、3月以降は、晴れの日は日中はビニールを外し高温になりすぎるのを防いで、夜間はビニールで覆うなど、毎日管理を欠かさないようにしましょう。
種まき後の発芽管理
トマトの発芽適温は20~30℃です。3月以降は、晴れの日は日中はビニールを外し高温になりすぎるのを防いで、夜間はビニールで覆うなど、毎日管理を欠かさないようにしましょう。ビニールによる管理が難しい場合、寒くなる夜間は部屋に入れてしまうなどといった対処も可能です。
トマトの発芽は、だいたい3日から1週間もあれば終わります。上記の手順で発芽適温を保持してあげましょう。また発芽が終わるまでは、土の表面が乾かないように、毎日水やりを欠かさないようにしましょう。
発芽後の間引きや育苗管理
発芽後は、間引きと温度管理が大切になってきます。
すべての芽が出揃い、第一本葉が出始めた頃に間引きを行います。間引く対象の見分け方としては、サイズが小さいものや元気がないものを間引きます。このときにすべて間引いてしまってもいいですが、一番小さいものだけを間引き、もう少し成長してから2回目の間引きを行う方法もあります。
第二本葉が出た頃に一本立ちとし、本葉4~5枚のときに12~15センチの育苗用ポットへ移し替えます。またこの間、温度管理として、保温温度を徐々に下げていき、できるだけ日に当て、苗が徒長しないようにしましょう。
トマトの苗の選び方のコツは?
種から栽培するのは難易度が高いので、確実性を求めるのであれば、苗から作ることをオススメします。
トマトは4月頃からホームセンターなどで販売されます。
良い苗の見分け方のコツとして、以下の5点に注意しましょう。
①双葉が奇麗な緑色をしているか
②葉の先端や縁が縮れていたり変色していないか
③葉の裏に害虫や病気の痕跡がないか
④茎が太く、節間が詰まっているか
⑤第一花房に花や蕾がきちんとついているか
悪い苗を買ってしまうと、どれだけ手をかけたところで上手く育たないので、必ず良い苗を選ぶことが大切です。
トマトの土作りと肥料
トマトを植え付ける2週間前から畑の準備を始めます。もしそこが初めて作物を植え付ける場所であれば、牛ふん堆肥(たいひ)か腐葉土を1平米あたり20リットル、苦土石灰を100グラム散布して耕します。
1週間前に、元肥として化成肥料を50グラム(窒素-リン酸-カリウムが8-8-8の場合)ほど施してよく耕し、畝を立てておきます。
肥料の量が多すぎると、つるぼけになってしまうおそれがあるので、種袋の裏面に書いてある施肥量をしっかりと守りましょう。
猛暑の草管理を軽減するためにも、マルチシートという農業用ビニールで畝を覆っておくことをおすすめします。
マルチングを行うことで、雑草管理のほか、雨や水やりの際の泥はねを防止することができます。
プランターでトマトを育てる場合の土作り
プランターで育てる場合、一株育てるために土の量が最低20リットル程度必要になると考えてください。直径30センチ×深さ30センチくらいのプランターが用意できると良いでしょう。野菜用培土がホームセンターで販売されていますので、それを利用しましょう。
シーズンになるとトマト専用培土なども店頭に出回るので、自身の使い方にあった土を選びましょう。
プランターの土を自作することも可能ですが、土の配合や肥料の量など調整が難しいため、初心者は完成品の土を使うことをオススメします。
このとき注意して欲しいことは、庭などの土を使わないということです。屋外にあるいわゆる普通の土には雑草の種や病害虫が潜んでいるため、栽培時の管理が大変になってしまいます。
トマトの植え付け
土の準備ができたら、いよいよトマトの植え付けです。
畑とプランターでは、注意点がそれぞれ異なるので注意しましょう。
また、植え付けはできるだけ午前中の涼しい時間帯に行いましょう。
プランターに植え付ける場合
プランターにトマトを植え付ける際は、以下の手順で行います。
①プランターの底に土漏れ防止のネットを敷き、底石と用土を入れる
②植え穴を掘り、土を全体的に湿らせる
③苗を浅く植える
④再度水やりを行う
⑤支柱を立てる
⑥農薬を散布する(農薬を使う方のみ)
プランターの底に鉢底ネットを敷いたら、鉢底石と用土を入れます。鉢底ネットを敷かないと、水やりのたびに土が漏れてしまったり、底から害虫が侵入してしまうこともあるので注意が必要です。
土を入れたら水をかけます。買ったばかりの土は乾燥しているので、根の活着をよくするためにもしっかり湿らせましょう。
苗を植え付けたら、なるべく時間をあけずに支柱を立てます。植えたばかりのトマトの茎は風などで倒れやすいためです。支柱の立て方については後ほど説明します。
畑に植え付ける場合
畑にトマトを植え付ける際は、以下の手順で行います。
ここでは、マルチングをしてある畝を例に説明します。
①株間50センチで穴をあける
②土を湿らせる
③植え穴をあけ、苗を浅く植える
④再度水をあげる
⑤支柱を立てる
⑥農薬を散布する(農薬を使う方のみ)
マルチに株間50センチで穴をあけます。2列で仕立てる場合、隣の列とは70センチほど間隔をあけます。
植え穴は育苗ポットよりも大きいものをあけ、苗を花房の向きが通路側になるように植えます。こうすることで、実ができたときに作業がしやすいようになります。
定植後は支柱を立てますが、苗がある程度大きくなるまでは仮のもので構いません。株の近くに棒を立て、茎を紙テープや麻紐などで支柱に結びつけます。
ただ、支柱は定植前に立てても特に問題はないので、作業がし易い順に行いましょう。
トマトの「寝かせ植え」について
トマトの寝かせ植えは、苗を横に寝かせた状態で畝に植え付ける方法のことです。
トマトは茎から根が伸びやすい性質をしており、土に触れている茎の部分からたくさんの不定根を伸ばすことができます。不定根が増えると、株の吸水力や栄養を吸う力が高まり、株が強くなります。
ここで注意するべきことは、土に埋めてしまう部分の葉はあらかじめ除去しておくことと、接木苗ではこの方法が使えないということです。
トマトの仕立て方|支柱立てと誘引
トマトの仕立て方については、1本仕立てと2本仕立てがあります。目的にあった仕立て方を選びましょう。
また支柱を立てた後はシルバーテープなどで畝を囲むようにすると、アブラムシの被害をある程度防げます。
大玉のトマトは1本仕立てが基本!
大玉トマトは茎を真上に長く伸ばし、大きな実をたくさん実らせるため、1本仕立てで育てましょう。
株ごとに棒を立てて、伸びた茎を都度誘引していくだけなので、作業としても簡単です。誘引する際は、茎と支柱を紐で八の字にするようにして結びます。
2列で仕立てる場合は、支柱同士を八の字に組み合わせる合掌造りで作ると、より強い作りになります。トマト栽培を行う夏にかけては突発的な雨風や台風などが多く発生するので、余裕があれば合掌造りで作ると良いでしょう。
2本仕立てについて
中玉やミニトマトにオススメなのが2本仕立てにする方法。主枝と第一花房下あたりのわき芽を伸ばし、2本の長い茎を作っていきます。こちらも2本に立てた支柱に、茎が伸びるごとに誘引していきます。
1本仕立てよりも収量が増え、手入れさえ欠かさなければ茎や葉が混み合うことも防げるので、トマト栽培に慣れてきたら挑戦する価値は十分にあるでしょう。
ただ、2本仕立てはスペースを広く使うため、隣の畝との間隔や作業スペースについては十分確保するようにしてください。狭いスペースで葉が茂ってしまうと、空気の通りが悪くなり病害虫が発生しやすくなってしまいます。
雨よけ屋根の設置
大玉トマトは雨に弱い植物です。特に強い雨が果実に直接あたってしまうと、実が裂けてしまうこともあります。また泥が跳ね返って茎や葉にあたることも、病気の原因になってしまいます。
雨よけをつけることでそういったリスクを減らせるので、余裕があれば雨よけ屋根を設置しましょう。もちろん、雨よけ屋根がなくても大玉トマトの栽培自体は可能です。ですが、どうしても実に傷がついてしまうので、奇麗なトマトを作りたければ雨除けをするようにしましょう。
また、雨よけ屋根はビニールや支柱などで自作することも可能ですが、家庭菜園レベルの広さであれば既製品の雨よけを使ったほうが確実です。
【トマトの手入れ】芽かき・摘果・葉かき・摘芯
トマトはデリケートな作物です。手入れをしっかりと行えば長持ちしますが、放置していると一瞬でダメになってしまいます。ここでは、トマトを健康で丈夫にするために必要なことを解説していきます。
芽かき
トマト栽培においてとても大切な「芽かき」という作業があります。
まっすぐ一直線に伸びているトマトの茎ですが、四方に広がる葉の根元から「わき芽」が発生してきます。これを放っておくと、果実をならせたいメインの茎の養分を奪ってしまうため、できるだけ早いうちに切除しておきます。
わき芽は小さいうちに手で摘み取るようにします。ハサミで切って回ると、樹液を介して病気が広がってしまうことがあるので、手を使うようにしましょう。
大きくなってしまうと摘み取りにくくなるので、適宜除去してください。
摘果
摘果は美味しくて大きなトマトを作るために必要な作業です。
一段目のトマトの実が、ピンポン玉ほどのサイズになったら行います。
1房につき、形のいい実を3~5個残して後は摘み取ります。勿体ないような気もしますが、形の悪いものを残しても、美味しいトマトにはなりません。余分に栄養を消費してしまうので、確実に摘み取るようにしましょう。
なお、芽かきのときは素手で行いましたが、摘果はハサミで行っても構いません。ただ、病気が出ているような株を摘果する際は、最後に回すか、ハサミを都度洗うようにしてください。
葉かき
葉かきでは主に、収穫したトマトの下の段の葉を除去していきます。トマトの下葉は、実に栄養を送るためにあるため、収穫してしまえば役割を終えるからです。
そのような葉は残していても意味がありませんので、必ず除去します。ただ、一気に葉かきをすると、株がダメージを受けるので、間隔をあけて少しずつ除去してください。
葉かきはハサミで行っても、手で行っても構いません。慣れてくれば手で簡単に折って取れるようになりますが、はじめのうちはハサミで切って取ったほうがいいでしょう。
摘芯
トマトは摘芯することで、枝が必要以上に成長することを防ぎ、実を大きくすることができます。美味しいトマトにするためにも、忘れずに行いましょう。
摘芯するタイミングは、5~6段目の花房が咲き出した頃になります。伸ばしている主枝の一番上にある花房から上の葉を2~3枚残し、その部分から先を摘み取ります。
摘芯もハサミで行っても、手で行っても構いませんが、葉かきや芽かきと比べ、傷口が大きくなりやすいので、ハサミで行うことをオススメします。
傷口が乾きやすいので、晴れた日の午前中に行うと尚良しです。
トマトの追肥
1段目のトマトがピンポン玉の大きさになった頃、1回目の追肥を行います。
マルチをめくり、肥料が茎に直接触れてしまわないように少し離して施肥します。
化成肥料でもいいですが、トマト用の肥料や液肥を使うと簡単です。
2回目の追肥は3段目の実がピンポン玉サイズになったときに行います。1回目と同じように、少し離した場所に施肥しましょう。
なお、肥料の種類によって強さや効く速さが異なります。注意書きをよく読んで使ってください。特に液肥は週に一度などこまめに使用する商品が多く、他の肥料と比べても施肥回数が多くなります。
もっとも、トマトが青々として元気一杯のときに追肥をする必要はありません。しっかりと株の様子を観察して、必要な量を施肥するようにしてください。
また、プランターは露地とくらべて肥料の持ちが悪くなりますので、注意が必要です。
トマトの水やり
水やりを控えたほうが美味しくなると言われるトマトですが、ある程度の水やりはやはり必要です。また、トマトの水やりは必ず朝に行います。
◯露地栽培の場合
苗を定植後、根が活着するまではしっかりと水やりをしましょう。
株が大きくなってきたら水やりを多少控えますが、土が乾燥しているときは水を与えます。
実がなり始めたら、土が乾いたタイミングで毎日水やりを行います。
◯プランターの場合
プランターは露地よりも乾きやすいので、基本的には毎日水やりを行います。
株が大きくなったら多少控えても良いですが、土が乾いたら水をやりましょう。
実がなり始めたら、土が乾いたタイミングで毎日水やりを行います。
トマトの収穫
トマトは開花してから2ヶ月位で収穫のタイミングです。
日中光合成でためた養分を、夜になってから実に移していくので、朝方収穫すると一番美味しい状態のトマトを採ることができます。完熟トマトを長く樹につけたままにしていると、実割れの原因になるので、真っ赤に完熟したトマトは早めに採るようにしましょう。
トマトを採るときは、軸の部分をハサミで切り取るようにして収穫します。果実を落とさないように手でしっかり持って、なるべく実に近い箇所の軸から切り落とします。
このとき注意する点としては、ハサミで他の果実や茎葉を傷つけないこと、病気を広げないように清潔なハサミを使うことです。
大玉のトマトをたくさん収穫するため|受粉・着果処理
トマト栽培でのよくある失敗が、トマトの実が全くつかないといった着果の失敗です。
トマトの花は何もしなくても受粉し、結実しますが、植物ホルモンの「トマトトーン」(商品名)を使用することで着果を確実なものとすることができます。
咲いた花に一吹きシュッと吹きかければ完了です。花がついている茎にかかるだけでも効果がありますので、かたまって咲いている花全体に一吹きで終わらせましょう。何度もかけてしまうと奇形などの不具合が発生してしまいます。
第1花房の第1花を確実に着果することが、トマト栽培では非常に大切です。ホルモン剤を使ったり、棒で叩いて振動受粉させるなど、必ず受粉作業・着果処理は行ってください。
トマトの生理障害や生育不良について
ここではトマトによく発生する生理障害や生育不良について解説します。
トマトにあらわれる障害や不良は、しっかり状態を管理していれば防げるものばかりです。以下のことに注意して管理を行っていきましょう。
尻腐れ病
トマトのお尻が黒ずんで腐ってしまう症状で、カルシウム欠乏によって誘発されます。
家庭菜園ではほぼ出ると言ってもいいくらい多い障害で、普段からカルシウム剤を散布していない限りは発生します。
ただし、多くの場合土中のカルシウムが足りない訳ではなく、水不足のせいでカルシウムが吸えていないだけです。梅雨明け以降は晴れ間が続いているようであればしっかりと水やりをしましょう。
トマトの空洞果
トマトの果実のゼリー部分が発達せず、内部が空洞状態になっている状態です。
急激に気温が上がったとき、トマトの肥大化に果肉部分が追いつかず、栄養が回りきらないときに発生します。
ホルモン剤が余分にかかってしまったり、養分や水分が異常に多かったりすると起きやすい奇形果です。対策としては、ホルモン処理は開花時に行い、高温時にはしない。日射量や気温に注意するなどがあげられます。
いずれも、適切に管理をすれば防げることなので、管理方法に注意しましょう。
トマトのすじ腐れ
果実の表面に黄色や緑色のすじが入り、実が着色しなくなる障害です。実の繊維が壊死して、黒い縦割れ線が生じるものと、表面が白く硬くなりでこぼこするものの2種類があります。
原因は日照不足や肥料の過不足、カリウム不足などが考えられます。初期段階では見つけ辛く、症状が進行してから発覚するという例が多く、被害が大きくなりやすいです。
対策としては、葉かきや整理を行い十分な日当たりを確保することや、窒素を減らしカリウムを増やすなどの調整をすることが大切です。
トマト栽培で気をつけたい病害虫とその対処法
トマト栽培では、一度かかってしまうと農薬を使っても治すことができないという、恐ろしい病気が存在します。
こういった病気を防ぐためにも、害虫防除や清潔な環境を整えるということが非常に大切です。
気をつけるべき害虫について
オオタバコガ
タバコガは大きいもので体長40ミリほどある蛾の幼虫です。生まれてすぐのころは、葉などを食害しますが、成長し体が大きくなると果実に穴を開け、果肉を食べるようになります。1つの果実を奇麗に食べるわけではなく、次々に新しい果実に移っていくので被害が大きくなりやすいです。普段の予防と、初期段階での防除が大切です。
オススメの対処法:若齢幼虫のうちに駆除する、防虫ネットを張る
ハスモンヨトウ
ハスモンヨトウ、ヨトウガは蛾の幼虫で、体長40ミリほどまで成長します。成虫は1枚の葉に数百個の卵を産み付け、孵った幼虫は集団となって葉を食い荒らします。
老齢幼虫になると食害量が多くなる上、トマト自体も食べるようになるため、被害が大きくなりやすいです。
オススメの対処法:見つけ次第捕殺する、周辺の雑草を刈り取り奇麗にしておく
アブラムシ
アブラムシは体長1~4ミリほどの小さな虫ですが、集団になってトマトを食害するため、放置していると大きな被害を受けてしまいます。
植物の養分を吸い取るだけでなく、ウイルス性の病気を媒介することもあるので、日頃からの予防と、早めの防除が必要です。
オススメの対処法:オルトラン剤・ベニカ剤の使用、捕殺、テントウムシなどの利用
ハダニ
ハダニ類は体長0.5ミリほどと非常に小さく、ルーペなどを使わないと目視できません。葉の裏面に棲み着き、養分を吸い取って繁殖します。放置しているとどんどん数を増やし、葉が枯れてしまうこともあるので、農薬を使ったり手で削ぎ落とすなどの駆除が大切です。
オススメの対処法:抵抗性害虫も多いので、様々な種類の農薬をローテーションする
オンシツコナジラミ
オンシツコナジラミは成虫でも体長1ミリほどと小さく、白っぽい体色をした虫です。葉に貼り付き、養分などを吸い取ります。卵や幼虫を目視で確認するのは困難なので、そもそも虫が寄り付かないように予防をすることが大切です。
オススメの対処法:ダントツ・ベニカ剤の使用、捕殺
アザミウマ類
アザミウマは体長1~2ミリほどの小さな昆虫のため、目視しづらく、気づいたときには繁殖してしまっているというケースが多く見受けられます。幼虫や成虫が花や葉、果実から養分を吸い取ってしまうため、実の見た目が汚くなり、肥大も悪くなってしまいます。
オススメの対処法:ベニカ剤の使用
気をつけるべき病気について
灰色かび病
灰色かび病はトマトにはよく発生します。苗のころから発生するカビの病気です。
葉に発生すると被害箇所が褐色化してカビが付着します。花や果実が枯れているときはこの病気を疑ったほうがよいでしょう。
カビが媒介する病気なので、風通しをよくしておくことや、過湿状態を避けることで予防が可能です。薬剤で対処する場合は、市販薬ではベンレートやダコニール1000で対応します。
うどんこ病
うどんこ病は湿度が低く、気温17~25℃前後の頃に発生しやすい病気です。特に梅雨時期に頻発し、葉の表面に斑点状の白いカビのようなものが生え、枯れていきます。初期防除が大切で、初期段階での農薬散布や、被害が小さいうちに病害を受けた葉を摘み取るようにしましょう。葉が茂って風通しが悪くなると一気に感染が広がるので注意が必要です。
青枯病
青枯病は株についた葉が青々としたまま、急に枯れてしまう病気です。葉っぱが萎れたと思ったら、数日後は枯死してしまいます。
伝染する病気であり、剪定作業などで感染株に使ったハサミから他の株へと広がってしまいます。
青枯病は治せないので、罹患した株はすぐさま抜き取り、圃場の外で処理するしかありません。
この病気にならないためには、何よりも予防が大切です。土壌消毒や残滓、排水の適正排出などで病原菌が株に寄りつけない環境を作るように心がけましょう。
疫病
疫病はカビが原因の病気で、茎や葉、果実など多くの部分に病害を起こします。
葉には最初、灰緑色の小さな斑点が生じ、病状が進むと斑点が大きく、また中心部が暗い褐色になります。下葉に多く見られますが、悪化すると株全体に広がります。湿度が高いと白いカビが発生します。
茎や果実では暗い褐色の病斑が現れ、その部分が腐ってしまいます。
株の風通しを良くすることや、泥はねを防ぐことで予防できます。一度出てしまうと農薬による防除も難しいので、予防防除を行いましょう。
モザイク病
トマトによく発生する病気で、ウイルス性のものです。
生長点付近の葉の色が、モザイク状に濃くなったり薄れたりします。
モザイク病自体は農薬で予防したり治療することができないので、病気を運んでくるアブラムシを防除することが一番の予防となります。
アブラムシはシルバーマルチやシルバーテープで物理的に防除できるほか、農薬を適宜散布することでも防除が可能です。
日々のこまめな管理がカギ
トマト栽培では、土作りはもちろん、日々の管理が大切になってきます。草勢が強く、茎葉が広がりやすいトマトは、放っておくと手がつけられないほどに。そうならないようにしっかりと管理をしてあげましょう。
トマトは栄養状態をよく保ち、病害虫の防除をしっかりと行えば、長い期間に渡って収穫を楽しむことができます。たくさん収穫して、長持ちさせたいのであれば、毎日トマトの健康状態をチェックして、トラブルが起きても早め早めに対処できるようにしましょう。
暑い夏の日に自らの手で、真っ赤に完熟したトマトを収穫する楽しさは、何ものにも代えられません。トマトは夏野菜の中でも、栽培難易度が高い作物ですが、挑戦する価値は十分あると思います。ぜひ、この記事を参考にして、自分だけの美味しいトマトを作ってみてください。