「復興」から「発展」へ。福島県相双エリアの先駆者たちが「法人化」で目指す、これからの地域農業とは

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「復興」から「発展」へ。福島県相双エリアの先駆者たちが「法人化」で目指す、これからの地域農業とは

「復興」から「発展」へ。福島県相双エリアの先駆者たちが「法人化」で目指す、これからの地域農業とは
最終更新日:2020年02月27日

復興に向けて歩みを続ける福島県相双エリア。
東日本大震災からまもなく9年が経とうとしている今、地域農業の未来を見据え、個人経営から脱却したベテランファーマーたちがいます。
相馬市と楢葉町の2つの法人が目指す、これからの農業とは。
「復興」から「発展」へと進む彼らの軌跡からは、日本の農業が抱える問題解決への糸口が見えてきました。

純国産大豆で営農継続を目指す『合同会社飯豊ファーム』

福島県浜通りに位置する相馬市は、海の幸、山の幸に恵まれた農林水産物の宝庫として知られています。
東日本大震災によって甚大な被害を受けた同市は着実に復興への歩みを進め、現在は水稲を始めとしたさまざまな農作物の栽培を再開しています。

『合同会社飯豊ファーム』代表取締役竹澤一敏さん

『合同会社飯豊ファーム』代表取締役の竹澤一敏さん

相馬市の飯豊地区にある『合同会社飯豊ファーム』は、各地域の農地保全・管理を行っていたリーダーたちが集結し、2012年4月に設立されました。
当時の様子を代表取締役の竹澤一敏(たけざわ・かずとし)さんはこう振り返ります。

「相馬市は地区によって津波による被害状況が大きく異なる地域です。農地は無事だったが自宅や作業場、農機具を失った方、その反対、またはその両方という状況が混在するなか、復興に向けた取り組みがスタートしました。会社を設立した背景には、会社組織にすることで、1人では無理でも仲間とならできることがあるのではという思いがありました」。

その様な時に舞い込んだのが、相馬市が応募した『公益財団法人ヤマト福祉財団』の「東日本大震災生活・産業基盤復興再生募金事業」、「農地復旧復興(純国産大豆)プロジェクト」です。

採択されたことにより、各種農業機械を取得した相馬市はそれら全てを『合同会社飯豊ファーム』に貸与し、事業がスタートしました。

(左)同社取締役の小野内善彦さん (右)同社取締役の小島良金さん

(左)同社取締役の小野内善彦さん (右)同社取締役の小島良金さん

「私自身、農地整備よって集積された広大な農地を前に、1人でどこまでやれるかという不安がありましたが、法人化することで営農継続が困難になった地域の人を助けることにもつながると思い、決意しました」。

こう、話すのは取締役の小島良金(おじま・よしかね)さん。

設立当初、11haだった農地は現在、85haにまで拡大しました。
大地の恵を取り戻した農地では大豆を中心に飼料用水稲、麦が作付けされています。

若い世代が「ここで働きたい」と思える会社に

高齢化や後継者問題による労働力不足は震災を機に一気に加速し、離農する農家が急増しました。
農地が整備されても耕す人がいないようでは営農再開には至りません。

『合同会社飯豊ファーム』は、離農者の農地を預かり、作付けすることで地域農業を守る役目も担っていると、取締役の小野内善彦(おのうち・よしひこ)さんは話します。

「農業が抱える問題は、震災が起こらなくてもいずれ地域農業の衰退を招いたことでしょう。個人から法人にすることで地域農業の継続、さらには発展につながると思います。若者がここで働きたい! と思える会社を作っていきたいですね」。

『合同会社飯豊ファーム』の大豆乾燥調製施設

『合同会社飯豊ファーム』の大豆乾燥調製施設。飯豊地域の農業の発展を担う拠点

同社は週休2日制や給与面など、次世代の農業を担う若者たちが「会社員」として働くことができる環境づくりを行っています。

こうした取り組みは高く評価され、2019年8月27日には農業経営の改善や、集団活動に意欲的に取り組み、優れた業績をあげている経営体や集団を表彰する第60回福島県農業賞で復興・創生特別賞を受賞しました。

順調に業績を伸ばしていますが、これまで経験のない広大な農地を作付けするため、作業工程や農地・栽培管理などの難しさに直面したこともありました。
また、2019年に発生した台風19号による被害にも見舞われました。

被災した仲間のこと、営農再開のこと、地域農業の未来等について熱い思いを語る3人

被災した仲間のこと、営農再開のこと、地域農業の未来等について熱い思いを語る3人

「農業は、天候による不作の年も覚悟しなければなりません。その年によって収益にばらつきがあっても、他の作物でカバーできたり、資金という体力を常に身に付けておくことも大切です。今後は10aあたりの収益を上げ、より確かな経営の安定化を図っていくことが目標です」(竹澤さん)。

震災による津波被害が少ない山間部の農地は集積が行われず、同じ相馬市でありながらそこには格差があるのが現状です。
この様な地域の課題にも同社は真摯に向き合いっています。

「震災直後は自分たちのことで精一杯でした。しかし、地域全体を考えると課題はまだ残っています。1人では微力でも、企業としてならできることは必ずあるはずです」(小島さん)。

『合同会社飯豊ファーム』は、生産者と行政の農業復興への思いから誕生した企業と言えます。同社はその思いを経営に生かし、地域全体の発展に尽力しています。

次世代への架け橋として。『大谷水稲受託組合』の取り組み

西に阿武隈高地、東に太平洋、そして中央に木戸川や井出川が流れる福島県楢葉町。

この地で福島第一原発事故を乗り越え、営農を再開したのが『大谷水稲受託組合』代表の猪狩富夫(いがり・とみお)さんです。

『大谷水稲受託組合』代表の猪狩富夫さん

『大谷水稲受託組合』代表の猪狩富夫さん(大谷水稲受託組合の乾燥調製施設内)

震災前は兼業農家として水稲栽培を行っていた猪狩さんは避難指示が解除され、作付け可能となった2018年に経営を個人から組合組織に移行しました。
現在、水稲12haとタマネギ70aを栽培しています。

「復興組合の一員として農地の維持管理を行っているなか、よく耳にしたのが、長引く避難生活から離農を考える人たちの声です。このままでは楢葉町の農業は復興以前に衰退してしまうと思い、組合の立上げを決意しました。何よりせっかく整備した農地が手付かずではもったいないですよね。個人ではできることが限られてしまうけれど、組合なら作業分担ができ、資金面でも大きなメリットがあると考えました」。

猪狩さんご夫妻や娘夫婦など、近親者が役員となり運営している組合をゆくゆくは農業を志す就農希望者を雇用し、猪狩さんが培ってきた技術や知識を継承したいと話します。

『大谷水稲受託組合』のビニールハウス4棟

綺麗に整理された猪狩さんのビニールハウス4棟

「米作りは大変な面もあるけれど収益を上げ、成功することでその楽しさを証明することができます。まず自分が架け橋となって農業の面白さや、やりがいを伝えていきたいですね」。

古里に黄金の輝きを取り戻すために

震災前、猪狩さんは低農薬栽培と自然乾燥で米の品種の一つである「ミルキークィーン」を作付けし、個人で全国の顧客に販売していました。

原発事故の影響で同じ方法での販売が難しくなった今、猪狩さんはFGAP(※注1)を取得しました。

「FGAPを取得したことで、安全と安心という付加価値を付けることができます。いつかまた、自分の名前で米を売ることが目標です」。

支援事業や補助金によって整備された4棟のハウスでは、主に水稲とサツマイモ、タマネギの育苗が行われています。
また、田植えや収穫、米の乾燥などを請け負うことで、農家の作業負担の軽減や効率化も担っています。

タマネギの苗

ハウス内で育てられているタマネギの苗

「震災直後、農地には一面セイタカアワダチソウが黄色い花を付けていました。そこに黄金色に輝く稲穂があるのが本来の楢葉町の姿です。1日も早く故郷の景色を取り戻したいですね」。

笑顔で思いを語る猪狩富夫さん

「農業は本当に楽しいです」と、笑顔で思いを語ってくれた猪狩さん

個人経営から法人化、組合設立という新たなフィールドに踏み出した相馬市と楢葉町のベテランファーマーたち。
地域農業の発展は、彼らのあくなきチャレンジ精神によって次世代へと受け継がれていきます。

「復興」から「発展」へ。
福島県相双エリアの未来は、希望に満ち溢れていました。

(※注1) 
「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」に準拠し、放射性物質対策を含めた本県独自の基準に基づき、GAPを実践する生産者、団体を県が認証する新たな制度

■相双地域の営農再開に関する問い合わせ■
福島県相双農林事務所 農業振興普及部
住所:〒975-0031 福島県南相馬市原町区錦町1-30
電話:0244-26-1145

福島県相双農林事務所 農業振興普及部ホームページ

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