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コロナで見えてきた中国産に競り勝つ戦略

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

コロナで見えてきた中国産に競り勝つ戦略

新型コロナウイルスの感染拡大による混乱で思わぬ特需が発生した品目がある。神事に使ったり、神棚に飾ったりするサカキだ。サカキを栽培する東京都青梅市の農業法人、彩の榊(さいのさかき)はこのチャンスにどう対応しようとしているのか。社長の佐藤幸次(さとう・こうじ)さんに取材した。

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一時は5割減、コロナのもとで需要がV字回復

佐藤さんは実家が花屋。家の仕事を手伝うかたわら、大手の花屋で修業のために働いてみて、サカキに安定した需要があることを知った。さらに近くの山に大量のサカキが自生していることにも気づき、独立してサカキの伐採と販売を手がけ始めた。約10年前のことだ。

「彩の榊」設立までの話を読む
国産サカキを商機に。売り手優位のビジネス手法とは
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日本の神事にとって欠かせない植物であるサカキのほとんどは、じつは中国産だ。彩の榊(さいのさかき、東京都青梅市)を運営する佐藤幸次(さとう・こうじ)さんはそこにビジネスチャンスがあるとにらみ、約10年前に国産サカキの供給に…

伐採するサカキは、山の所有者である鉄道会社にかけあって確保した。鉄道会社は当時、山の中に遊歩道を造ることを計画していた。佐藤さんは遊歩道の造成を手伝う代わりに、サカキを切っていいという約束を取りつけた。
苦労したのは販売だ。市場に持って行っても期待したような値段で売れず、アパートに家賃を払えずに車で寝泊まりしていた時期もある。だが佐藤さんの熱意を知った花屋から指名で市場に注文が入るようになり、販売は徐々に軌道に乗っていった。市場を通さず、花屋などに直接売るルートも開拓した。
拡大する需要に応えるため、栽培も始めた。天然のサカキは山の斜面に生えていることが多く、伐採は危険を伴うため、量を増やすには限界があった。そこで太陽光パネルの下で作物を育てる「営農型発電」という制度を活用。売電事業を手がける企業と組んで農地を借り、サカキを栽培し始めた。日があまり差さない場所でも育つサカキの特性が強みになった。

「営農型発電」のビジネスモデルを詳しく読む
1年で売上倍増! サカキの特徴を生かした魔法のビジネスモデルとは
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神事に使われるサカキを取り扱うため、佐藤幸次(さとう・こうじ)さんは10年近く前に彩の榊(さいのさかき、東京都青梅市)を立ち上げた。だがやってみてわかったのは、山林から切り出したサカキの枝を販売して経営を安定させることの…

天然のサカキの多くは山の斜面に生えている

コロナの影響に話題を移そう。サカキの枝を数本、ひもで結んで束ねる「造り榊(さかき)」の販売数をみると、4月は前年同月と比べて約5割減った。まずホームセンター向けから減り始め、スーパーや花屋にも影響が広がっていった。緊急事態宣言で外出を控える人が増えたためだ。飲食店向けに食材を販売している農家と同じようにダメージを受けた。
ところがその後、販売はみるみるうちに回復していった。5月は前年同月と比べて3割減で、6月は2割減。7月に早くも前年並みまで戻すと、お盆で需要が集中する8月には一気に6割増まで販売が急伸した。
原因は市場の約8割を中国産が占めるというサカキの特殊事情にある。中国からサカキを輸入するルートは航空便と船便があるが、そのうち航空機で運んでくる量が大幅に減ったのだ。コロナの影響で運航が減ったためだ。その結果、国産サカキの需要がにわかに高まった。
そこで佐藤さんは、これまで構想をあたためてきた新たな販売方法を実行に移すことにした。目標は、安値で日本のサカキ市場を席巻してきた中国産に取って代わること。「新鮮で品質の高い国産のサカキをもっと家庭に広めたい」。早ければ9月中に彩の榊の新しい商品が店頭に並ぶことになる。

国産のサカキの普及を目指す

中国産に競り勝つための戦略とは

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