ドリアンとはどんな果物?
ドリアンは、東南アジアのマレー半島が原産で、アオイ科の常緑の多年生植物です。樹木の高さは、10〜30メートル、高いものでは50メートルにもなります。果実は、品種によって楕円(だえん)形か円形で、直径が15~30センチ、重量は一般に1~3キロ、大きいものだと5キロにもなるものもあります。
硬い殻にはゴツゴツした鋭角のトゲがあります。食べるのはその中身ですが、殻が分厚く、実の中に大きな種があるので、可食部分は多くありません。ドリアンの殻は、熟す前は緑色ですが、熟すと薄茶色になります。
その巨大な果実が、幹からたくさんぶら下がっている様子は圧巻ですが、頭に落ちたら大変なことになりますので要注意です。ドリアンが「果物の王様」と呼ばれる他に「フルーツの悪魔」などさまざまな呼ばれ方があるのも、匂いや味だけでなく、巨大で風変わりな見た目にも由来するのかもしれません。
名前の由来
ドリアンというのは、日本語の呼び方です。英語では、Durian、カタカナで表すとドゥリアンやデュアリアンと聞こえます。マレーシアではドゥリアン、タイではトゥリアンと呼ばれています。
古いマレー語でトゲを意味する「duri」という言葉に「an」という接尾辞がついたものです。つまり、トゲトゲの見た目が名前の由来だったのです。
ドリアンの産地は?
ドリアンは、原産地のマレーシアとインドネシア、ブルネイが主要な生産地ですが、現在、生産量が最も多いのは、タイです。
タイの東部と南部で栽培されていて、日本で販売されているものはほとんどがタイ産です。その他、フィリピンやベトナム、カンボジア、ラオスなど東南アジアやインド、スリランカ、カリブ海、フロリダ、パプアニューギニア、北オーストラリアなど多くの地域で栽培されています。
旬の時期はいつ?
ドリアンの東南アジアの最盛期は、4~8月です。年中出荷はされていますが、この時期以外は非常に高価なものになります。日本に最も多く輸出されているタイのドリアンの旬は、東部地方が4~6月、南部地方が6~8月です。
最近は、生の他に冷凍ドリアンが流通するようになり、年中楽しめるようになりました。
ドリアンはどんな匂いがする?
ドリアンの匂いについては、見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
苦手な人は、「匂い」ではなく「臭い」という字をあてるに違いありません。
ホテルや飛行機など公共の建物や乗り物で、ドリアンの持ち込みを禁止しているところも多くあります。嗅いだことのない人には、ますますドリアンの匂いや味の正体が気になりますね。
ドリアンの匂いは、何かが腐ったような匂いと表されることが多いようです。2018年に、離陸前のインドネシアの旅客機で悪臭が漂い、機内から乗客が脱出、出発を一時見合わせる騒ぎが起きました。
その原因は、貨物室のドリアンでした。ドリアンの匂いに慣れている原産国でも警戒されることがあるということですね。
また、ガスの臭いに似ていると言われることもあります。2019年、オーストラリアでガス臭が発生、何百人もが避難して消防隊が駆け付けたところ、ゴミ箱に捨てられていたドリアンが発見されたというジョークのようなニュースが2度もありました。避難騒ぎになるほどとは、よほど強烈だったのでしょうね。
最近は、匂いを抑えた品種が出回って人気になっています。ドリアン好きからは、匂いがないドリアンは、ドリアンではないという嘆きも聞こえてはいるようですが。
ドリアンの匂いの正体とは?
臭い、臭いと言われるドリアンですが、好きな人にはたまらなくいい匂いだと言います。
ますます不思議なドリアンの匂い、それだけ複雑だということでしょう。ドリアンの匂いの成分には、タマネギやカリフラワーなどの硫黄の臭いを含むものがあり、その臭いがキャラメルやパイナップルのような甘い香りと複雑に絡み合っています。
まだ不明な部分もありますが、わかっているだけでも26種類の揮発成分と8種類の硫黄化合物が存在します。この中の揮発性硫黄化合物が成熟する過程で発生し、熟す頃に匂いが最高潮に達します。
ドリアンの味は?
とかく匂いばかりが話題になるドリアンですが、そのお味はどうなのでしょう? ドリアンラバーたちをひきつけてやまない魅惑の果物のその味は、多くの人が口をそろえて、「濃厚で甘く、クリーミーなカスタードのよう」と言います。濃厚だからといってくどいわけではなく、なめらかな食感で上品な味がします。
何度か食べていると匂いが気にならなくなり、やみつきになってしまいます。ドリアンは、食べれば食べるほど、さらに食べたくて仕方なくなるという魔性の魅力があるのです。
ドリアンに含まれる栄養素とその効果・効能
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カリウム
マグネシウム
リン
銅
葉酸
ナイアシン
ビタミンB1 など
ドリアンは栄養価の高い果物
ドリアンが「果物の王様」と呼ばれるのは、外観や匂いの強烈さや味に加えて、その栄養価の高さにも由来すると言われます。
その果肉は、水分が少なく、ミネラルが豊富で、ビタミンB1は果物全体の中でもトップクラスの含有量です。
貧血予防・疲労回復に役立つ
ドリアンに含まれているマグネシウムやリン、銅などの豊富なミネラルは、身体機能を維持するために欠かせないものです。ドリアンに含まれる葉酸やナイアシンの含有量は、果物の中でトップクラスになります。
葉酸は、血液を作り貧血予防に役立ちます。ナイアシンは、代謝を促進して血行を良くし、冷え性を改善する働きがあります。
ビタミンB1が豊富
ビタミンB1は、糖類を分解してエネルギーに変える重要な栄養素です。疲労回復に効果があり、不足すると乳酸等がたまりやすく疲れやすくなります。ビタミンB1は水溶性のビタミンで熱に弱く、加熱調理では摂取しにくいため、果物など生食で補給するといいでしょう。
ドリアンはまさにビタミンB1の補給源として理想的と言えます。
果物の王様と呼ばれる理由は?
ドリアンが果物の王様と呼ばれる理由はさまざまですが、そのひとつが男性的な見た目です。また、高級な果物なので一般市民が気軽に食べられるものではありませんでした。
さらに、ドリアンは非常に栄養豊富で、国王が精力増強のために好んで食べていたといわれています。
これによって王様が食べる果物、王様の果物と呼ばれるようになりました。
それがいつのまにか果物の王様と呼ばれるようになったという説もあります。
ドリアンの食べ方は?
ドリアンは種まで食べることができるため、原産地では種を焼いて食べることがあります。ただ、種を除去して果実部分のみをそのまま食べたり、アレンジして食べたりするのが一般的です。
たとえば、スムージーとしてほかの果物やミルク・豆乳と合わせるとトロピカルな優しい味わいになります。ほかには、ドリアンジャムにする、アイスクリームに添えて食べるといった方法も。
バニラアイスのようなシンプルなものと合わせると、ドリアンならではの香りや味わいを堪能できます。
ドリアンをおいしく食べるには?
ドリアンを食べる機会があったら、少しでもいい状態でおいしく食べたいですね。
ドリアンを買う時は、均整のとれた形のいいもの、同じサイズであれば軽い方を選びましょう。重いものは種が大きく水分が多く、おいしくありません。
カットしたものを購入する場合は、果肉につやとハリがあり、変色していないものを選びましょう。食べる時は、恐る恐る少しずつ口に入れたのでは、匂いが気になるだけで甘みを感じられず、おいしさがよくわかりません。思い切って一口いってみましょう。
食べ頃の見極めかた
こだわりがある人は、ドリアンの熟成度にも好みがあるようです。木から落ちたドリアンは、2~4日で熟成し食べ頃となりますが、さらに熟成したものを好む人もいます。
市場には、木から落ちる前に収穫したものが出荷されます。熟すと色が薄茶色に変化し、完熟すると硬い殻に亀裂が入ります。割れていなくても特有の芳香があれば食べ頃です。
熟す前のドリアンはおいしくありませんし、熟したと思っても根元部分がまだ熟していない場合もありますので、見極めが難しいところです。
実の取り出しかた
ドリアンは、熟してくると厚くて硬い殻に亀裂が入ります。その部分から手やナイフで縦に割ることができます。手が痛いので軍手などをするといいでしょう。また、テーブルが傷つかないように敷物を敷くことをおすすめします。亀裂が入る前でも芳香が十分であれば、鉈(なた)などを使って縦に割ります。
割ってみると、ドリアンの実は、縦に5つの房に分かれて入っていて、その1つに種が2~3個あります。取り出す時は、その形のまま傷つけないように注意します。
それぞれ白い膜のような薄皮に包まれていますので、丁寧に取り除いて果肉を出します。薄皮に切れ目を入れてスプーンを使って食べてもいいですし、特に気にならなければ薄皮のついたまま食べても大丈夫です。
果肉をカットして中の種を出すと食べやすくなります。
匂いが気になる方には冷凍加工されたものもおすすめ
ドリアンの匂いは、カットしたての時はあまり気になりません。フルーツ園や市場などで熟したものをその場で食べると、それまで嫌いだったのにおいしいと感動する人が多くいます。
また、冷凍したものも匂いが少なめです。カットしたてのおいしい状態をすぐに冷凍加工した商品は、年中食べることができ、各国で人気となっています。冷凍は、日持ちがする上に、真空パックで匂いが漏れません。気を使わず持ち運びができるのも魅力です。ただし、一度パッケージから取り出して時間がたてば匂いは強くなります。
最近は、フリーズドライの商品もあります。匂いは抑えられていますが、食べるとしっかりドリアンを感じることができます。匂いが苦手な方や手軽に食べたいという方におすすめです。
食べ過ぎには注意が必要
栄養がありおいしいドリアンですが、果物の中でも糖質が高く、カロリーも高いので、注意が必要です。一度に食べる量は、1房くらいまでにしておくとよいでしょう。
NGな食べ合わせ
糖質やカロリーが高いためか、産地では、ドリアンを食べると熱が出たりのぼせたりすることがあるため食べ過ぎには注意し、毎日は食べないようにと言われています。また、甘いお菓子やドリンク、糖度の高い果物などと一緒に食べるのも避けるべきとされています。ドリアンを食べた後は、いつもより多く水を飲むといいそうです。
さらに、ドリアンを食べながらアルコールを飲んだり、食後にアルコールを飲むことはNGという話をきいたことはあるでしょうか。科学的な根拠が証明されていないため、迷信だと言われることもありますが、タイでは、保健省から警告が出されています。
命にかかわるケースもあるので、注意をするようにとのことです。
ドリアンの冷凍・保存方法は?
完熟までの保存方法
ドリアンは、殻が緑色で匂いがなく、亀裂がないものは未熟ですので、常温で放置して食べ頃を待ちましょう。また、果肉だけで販売されている場合は、熟したものをカットしているはずですが、もし硬くてまだ熟しきれていないようであれば、タッパーに入れて密封して冷蔵庫に入れておくと2日くらいで柔らかくなるでしょう。
完熟したドリアンの保存
完熟したドリアンは、実を取り出して保存する必要があります。ラップして冷蔵庫で1週間くらいもち、冷凍すればさらに長期保存できます。冷蔵保存すると冷蔵庫全体が臭くなりますので、冷凍保存がおススメです。いずれにしてもラップは、厳重にした方がいいでしょう。
ドリアンは種まで食べることができるため、原産地では種を焼いて食べることがあります。ただ、種を除去して果実部分のみをそのまま食べたり、アレンジして食べたりするのが一般的です。
たとえば、スムージーとしてほかの果物やミルク・豆乳と合わせるとトロピカルな優しい味わいになります。ほかには、ドリアンジャムにする、アイスクリームに添えて食べるといった方法も。
バニラアイスのようなシンプルなものと合わせると、ドリアンならではの香りや味わいを堪能できます。
ドリアンはどこで買える?
ドリアンを買える場所は?
ドリアンはスーパーマーケットやショッピングサイト、青果店などで購入できます。ただ、スーパーマーケットについては店舗にもよりますし、旬の時期など販売されている時期やタイミングが異なるので必ず購入できるとは限りません。
購入できる可能性が高い場所は、さまざまな店が集まっているショッピングサイトです。
また、よく行く青果店があれば、ドリアンが入荷できそうなときに教えてほしいと依頼しておくのもよいでしょう。
ドリアンの値段
ドリアンは1玉まるまる購入すると、2kg前後の小ぶりなものでも4000円ほど、2kg以上のものになると6000円する場合も珍しくありません。フレッシュな味わいを楽しみたい場合はお試しで小ぶりなものを購入してみるのもよいでしょう。
旬ではない時期に食べたくなったときはフリーズドライされたものがあります。ドリアンの種類や品質によって値段は異なりますが、冷凍されたものでも2〜3,000円ほどです。
高級ドリアンの場合は1万円以上するものもあります。生、冷凍などのこだわりがなければ、冷凍ドリアンは新鮮な状態ですぐ冷凍されていますし、比較的安く購入しやすいです。
ドリアンの種類は?
チャネー
チャニーと呼ばれることもある、日本でも販売されているのをよく見かけるドリアンです。
ちなみに、チャネーはテナガザルを意味するタイ語。木にぶら下がっている実がテナガザルに似ていることから名づけられました。チャネーの味は甘味が強く、柔らかな果肉です。
ただし、少し離れた場所からでもわかるほど強烈な香りがあります。
モントン
こちらも日本で見かけることが多いドリアンで、チャネーより少し高めの値段です。
果肉は程よい硬さで、甘味もあります。モントンが人気となっている理由のひとつには、一般的なドリアンよりも独特の香りが柔らかいことが挙げられます。
ガンヤオ種
ガンヤオ種は日本ではあまり見かけない品種なので、見かけたときには手にとってみるのもおすすめです。ドリアンの独特の香りが弱く、非常にクリーミーで、まろやかな味がします。
クラドゥムトン
クラドゥムトンはクラドゥム(ボタン)とトン(金)が組み合わせられた言葉です。
かつて着用されることがあった中国風のシャツについていたボタンに似ていたことから名づけられたといわれています。
日本ではほぼ見かけることがない品種で、種が大きめで果肉部分が少ないのが特徴です。
ドリアン栽培は難しい?
ドリアンは純熱帯性果樹なので、栽培するのに適した気候は周年高温多湿であることです。また、雨季は高温多湿、乾期は温暖といった条件も必要になります。最低気温が15度以下になる地域での栽培は不可能に近いです。
しかも、20度以下になると実がなりにくいため、気温調整をするのが難しいフルーツといえます。
ドリアンが高級フルーツである理由は、こういった結実の難しさによるものです。ドリアンの品種のなかでも、チャネーは比較的低温でも結実しやすいといわれています。
気温以外にも雨風や日光に直接当たるのは成長や病気にかかわるので避けたほうがよいため、栽培する方法や場所も厳選しなければなりません。土は酸性が適しているのでpHを適切なものに調整し、根が詰まりすぎて養分を吸収できない状態になることも避ける必要があります。
こういった細かな条件を揃えた環境で栽培しなければならず、日本の一般家庭でドリアンを育てるのは不可能に近いといえるでしょう。実際、日本国内でこれまでドリアンの栽培に成功しているのはわずか2例、いずれも専門的な知識のもと行われました。
匂いや味だけじゃない! ドリアンは栄養価の高い果物
ドリアンは、匂いや味、その巨大さや不思議な見た目、さらに高い栄養価など、他の果物に比べて何もかもが別格、王の座に君臨するにふさわしい果物であることがよくわかります。なんとか王様に謁見して、その魅力を味わう機会があるといいですね。
監修:日本野菜ソムリエ協会