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変わる「買い物」の意味! 令和時代の直売所のコンセプトとは【直売所プロフェッショナル#38】

変わる「買い物」の意味! 令和時代の直売所のコンセプトとは【直売所プロフェッショナル#38】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。消費者の行動が変わってくるという観点から、令和時代の直売所のあるべき姿を見ていく。

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買い物はもはや家事ではない

みなさんは、家事というと何を思い浮かべますか?
炊事、洗濯、掃除……。そこに「買い物」は入るでしょうか?

買い物は家事の一種ではあります。しかし一方で、単純にそうは割り切れない側面があるのも確かです。ある種の買い物には「楽しさ」が付随するからです。
つまり、レジャーとしての要素や趣味的な要素もあるのです。

消費者にとって、食材をそろえるだけなら今はいろいろな方法があります。
とくにインターネットでの購入はどんどん便利になってきています。買い物を単なる家事だと定義すると、直売所はインターネット通販に負けてしまう日が来るかもしれません。

直売所などのリアル店舗のよいところは、その空間や接客を楽しめるということです。インターネット通販の隆盛によって、その重要度はますます上がっています。
ですから、店舗づくりをするときに、どんな商品を揃えるのかと同じくらい、「どんな空間をつくるのか」「どんな接客をするのか」といったコンセプトが大事になってくるのです。

この点は、直売所業界にもっと女性スタッフを入れるべきという観点にもつながります(直売所の店長に女性は少ないと思います)。
以前は、買い物は食材を調達することに主眼が置かれていました。なので、お店の雰囲気はあまり売り上げに関係がありませんでした。つまり、かつての店舗づくりは、自動販売機を作るのに似ていたのです。商品が分かりやすく並んでいれば十分でした。
しかし、これからは店舗づくりのセンスが不可欠です。極端に言えば、テーマパークをデザインしているのに近いです。なので、Instagramをまったく触ったことのないような男性だけで直売所をつくろうとしているとしたら、かなり不安です。
買い物は、レジャーとか趣味とか、そういう意味合いを持つものなのだということはいくら強調しても強調しすぎることはありません。

スタッフ

また、楽しめる店舗づくりというのは、時代の変化にあわせて店舗を変えていくということでもあります。直売所業界では、往々にして、設置団体の幹部は開店さえすればプロジェクト終了だと思っている節があります。しかし、それはスタートにすぎません。
店頭にはつねに世の中の動きにアンテナを立てて売り場を柔軟に変えていくスタッフ(直売所プロフェッショナル)が必要となるのです。

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残念な空間デザインの「あるある」

楽しめる店舗づくりのためには、いろいろな方法が考えられますが、まず大事なのは店舗の空間デザイン(意匠)による雰囲気づくりです。なので、以下は店舗の空間デザインについて書いていきます。

直売所でよく見かける残念なデザインの「あるある」を2つ示します。
(1)無機質な壁、無機質なPOP、それに無機質な蛍光灯
(2)木材を使った気のきいた内装、でも薄暗い

ポイントは、その空間にいることを楽しめるかどうかです。その観点から、客観的にお店づくりを見直してみましょう。

残念なデザインの1番目、まるで事務所のような無機質な壁や蛍光灯の場所で、心が躍るでしょうか?
また、2番目のパターンは、木材によって手作り感や温かみを出そうとしています。それは大事なことなのですが、こういう意匠だと壁や天井が暗くなりがちなので、照明の明るさを設計段階で意識しておく必要があります。ただ、明るくするにしても無機質な蛍光灯だと台無しになりがちなので、できれば照明にも予算をかけたいところです。
照明は、雰囲気づくりのために重要な要素だと心得ておきましょう。

ターゲットとお店の雰囲気はリンクさせる

最新型のスーパーマーケットに行ったことがあるでしょうか?
(直売所プロフェッショナルはライバルであるスーパーのチェックも欠かさないようにしましょう。)
スーパーマーケットの内装の進化も、目を見張るものがあります。
新しく直売所をつくる際には、設計に入る前にぜひチェックしてみましょう。

どのようなお店づくりをするにしても、お店のターゲットとお店の雰囲気はリンクしていなくてはいけません。
当社の直売所の場合は、「必ずしも高所得者狙いではないけれども、質の高い食品を求めている人たち」をターゲットにしているので、POPやお店の質感を大事にしています。

店頭
農家

直売所が安売りになりがちな理由として、連載の第3回(「こんなにあった! 直売所に不毛な安売りがはびこる7つの理由【直売所プロフェッショナル#03】」)において、直売所同士の競合をあげました。
近隣の直売所が競合になるのを完璧に防ぐことは難しいですが、お店の雰囲気はその防波堤のひとつとなります。誰しもより楽しい場所、居心地のよい場所で買い物をしたいものです。
また、他の直売所と区別してもらうために、ロゴマークにしっかりと予算をかけることも大事です。

ロゴ

当社が運営する「くにたち野菜 しゅんかしゅんか」のロゴマーク

私たち直売所にとっては、お店の雰囲気もまた商品であり、お客様に吟味されている。そのことを忘れないようにしたいものです。

店舗設計・空間デザインでの盲点リスト

最後に、店舗を設計したり空間をデザインしたりするときに盲点となりがちな点をリストで示しますので、参考にしてください。
なお、POPについては、以下の連載別稿も参照してください。

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直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第7回は、直売所の‟優秀な販売員”にもなり得る、POPについて。

店舗デザインの盲点リスト

照明 現代の主流は明るい店舗である。その方が商品はおいしそうに見える。また、天井が高い場合は普通の白色蛍光灯でも問題ないが、普通の天井高の場合は白色蛍光灯だと無機質に感じられやすいので注意。
BGM BGMも雰囲気作りには大事な要素だが、もっともおざなりにされやすい要素。内装のコンセプトにあったものを。落ち着いたクラシックなどは避ける。音量にも注意。
フラッグ フラッグやのぼり、天井つり下げPOPのような“動き”が生まれるアイテムは、売り場を無機質に見せないために重要。店舗の外だけでなく、店内でも使いたい。ただし、ありきたりなデザインだと逆効果のことも。
店舗正面外観
(小規模店舗)
出入り口が狭すぎないか注意。小規模店舗は「何も買わずに出にくいお店には、入りにくい」。
なので、なるべく出入り口は広くとる。また、外から見える位置に商品が陳列されている方が圧倒的に入りやすいため、鮮度保持の観点から南向きの店舗レイアウトは避けたい。
店舗正面外観
(大規模店舗)
敷地の道路側に大きい駐車場を用意すると、店舗の位置が奥まってしまい、通行している車からは店内の様子が分からないし、徒歩来店者が不便に感じることがある。また、駐車場の入り口に大きな看板は必須だが、屋号を書くだけでなく直売所であることが認知されるものにすること。
POP POPに質感や丁寧さがあれば、消費者が無意識においしそうだと感じる。なので、できればありきたりなフォントは使わない。コンセプト次第ではあるが、無難なのは手書き。
併設飲食店 飲食店と小売店は、望まれている雰囲気は異なる。飲食店は原価3割と言われるが、つまりは7割は食材以外のもの(雰囲気や接客など)を消費者は買っている。したがって、飲食店にはそれなりの雰囲気が求められ、原則として、直売所の売り場とは非連続的であった方がよい。

(PHOTO=山本 大介)

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