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コミュニケーションの真髄は“挨拶”だ! 農場で役立つ人材育成マニュアルの話

maruyama_jun

ライター:

連載企画:牛乳は愛

コミュニケーションの真髄は“挨拶”だ! 農場で役立つ人材育成マニュアルの話

新人教育に注力している農場はそれほど多くないのかもしれません。マナーやコミュニケーションのスキルを高めることは、指示系統の円滑化や社内風土の健全化、関係者からの信頼向上など、農場のレベルアップにつながります。私が経営する朝霧メイプルファームを例にとり、新人教育の実例を学んでいきましょう。

過ごしやすい職場環境のために、新人教育を

酪農に限らず、農業も法人化に伴い従業員雇用が当たり前になってきました。私が経営する朝霧メイプルファームでは、毎年新卒を採用しています。
酪農は専門性の高い特殊な業界ではありますが、社会人としてのマナーやコミュニケーションスキルの大切さは一般企業と同じ。そこで我が社では入社1年目に新人教育でそれらをしっかり学んでもらっています。中途採用の多い農場の場合でも、社会人のマナーを学んでほしいな、と思っている経営者も少なくないのではないでしょうか。この記事をきっかけに研修をするのもいいかもしれませんよ。
「丸山とかいう変な酪農家が面白い記事書いてるぞ。うちもやってみるか」みたいに。
実は、仕事をするうえでの対人関係のトラブルは、思いやり以前の、マナーやコミュニケーションのテクニックに問題があることも多いです。それは新人に限らず、古参の社員にも言えることだと思います。社内のマナーやコミュニケーションは、円滑な職場環境づくりにつながりますし、社員の職場以外の生活、ひいては人生全体に好影響を及ぼすと考えています。

そこで今回は社会人経験の少なそうないつもの2人を農場に呼び、朝霧メイプルファームの新人教育を一緒に体験していきましょう。

新人教育してくれるって聞いたんですけど、もしかしてメイプルファームに入社してほしいってことですか、丸山さん! いいですよ。僕も鬼じゃありません。入社しましょう。

ライター

丸山

どうもこんにちは。ライターさん。ご無沙汰してます。相変わらず失礼な方ですね。ライターさんはマナーを学ぶ余地が多そうです。まず大事なのは挨拶。ちゃんと挨拶しましょうね。
あれ? 言ってませんでしたっけ? いや、言った気がするなあ。言いましたよ! 嫌だなー! 失礼なのは丸山さんじゃないですかー! 僕多分、挨拶しましたよ! 助手! 挨拶したよな!

ライター

ライターさんは挨拶してないっス! なぜなら自分もしてないからっス!

助手

丸山

挨拶してないそうですよ。2人とも挨拶は大事ですからね。しっかりしましょうね。
……。

ライター

……。

助手

丸山

挨拶しないんかい! 謝んないのかい! 2人ともすごいです! 伸びしろしかありません!
よくわかりました。ではもう早速新人研修に入りましょう。こちらのマニュアルを見てください。これは新人研修で最初に配るマニュアルです。
社会人心得

挨拶をしよう
挨拶は全ての基本。第一印象はその後の関係に大きく影響します。
朝の挨拶も同じ。その日、気持ちよく一日過ごすために挨拶を元気よくしましょう。
また、挨拶は目上の人に先に言わせないようにしましょう。
それは社会では失礼に当たります。新人のうちは積極的に進んで挨拶しましょう。

 
返事をしよう
仕事中は指示を受けたり、注意を受けたりします。その時は必ず返事をしましょう。
返事をしないと、相手が理解できているのか、そもそも聞いているのかわかりません。
注意をしたにもかかわらず返事をしないというのは、職場間の関係を悪化させてしまうことを覚えておいてください。
 

ホウ レン ソウ
報告(report)…指示された仕事が一つ終わるごとに終了の報告をしましょう。
連絡(inform)…餌の内容、仕事の内容など、何か変更した場合は全員で意思の共有をしなければなりません。
相談(talk)…問題を抱えて、悩んでいても一人では解決しません。相談は後からするよりも、早ければ早いほど解決も容易です。後になって手遅れになる前に、積極的に相談しましょう。
 

積極性を持とう
積極性とは、よく質問をすること。
気が付いたことは、なんでも話しましょう。
ただ眺めているだけではあまり成長できません。
積極的に仕事に参加して、レベルアップしてください。
 

従業員同士、仲間としての自覚を持とう
個人で働く仕事とは違い、牧場は仲間であり、チームです。
自分がチームの一員であることを自覚してください。
助けてもらった時は感謝をし、迷惑をかけたときは素直に謝りましょう。
 

元気な声で話そう
牧場内では様々な騒音の中で仕事をします。
小さい声でしゃべっても聞き取れません。

又、元気な声で返事・挨拶をする方が、相手の印象も良くなります。
心がけましょう。

クラウドに保存されたマニュアル

マニュアルはクラウドに保存され、誰でもいつでも再確認できる

挨拶をしよう

丸山

マニュアルの一番上に書かれているように、挨拶は全ての基本です。これはつまり、第一印象が、その後の関係性を変えてしまう、ということです。
わかるっス。いらっしゃいませの一言がない店で食べるラーメンは、なんだか味気ないっス。挨拶が気持ちいいと、ある程度の凡ラーメンでもスープまで飲み干すっス。それがマナーっス。

助手

丸山

塩分のとりすぎには注意してくださいね。

今日も2人が挨拶をしなかったことで、私からするとこの2人はやる気がないのかな? それならあんまり親身に話をしたくないな。そんな風に感じてもおかしくなかったと思いませんか?
一日の初めに挨拶がないと、そのあとの行動全てがネガティブに映ってしまうかもしれません。同じ行動をとっても、第一印象次第では全く逆の評価をされてしまうことだってあるんです。

そうなんですか。そんなことなら挨拶だけはしっかりやっておけばよかったです。損しました。

ライター

丸山

実際その通りです。一日中相手のことを気遣って神経を張り詰めるのは疲れますよね? とりあえず挨拶だけはしっかりしておこう。最初はそれでもいいんです。とにかくそこに集中すること。そこに対人関係のほとんど全てがあるといっても過言ではありません。挨拶をしっかりして相手の好印象を勝ち取っておけば、そのあとの失敗はある程度大目に見てくれるものですよ。
なるほど! 勉強になりました。これからは挨拶に全力を注いで、あとはダラダラと過ごします!

ライター

丸山

……まあいいでしょう。何事も形から入るのが一番です。
1年目に研修を受ける新人

もちろん現場での研修もあります。写真は1年目の新人に餌づくりのマンツーマン指導をする4年目のM君(左)

ホウ(報)レン(連)ソウ(相)

丸山

次のホウレンソウ、2人は聞いたことありますか。
ほうれん草。緑黄色野菜の一種で、ゆでてよし、炒めてよし、万能の食材ですね。

ライター

家系ラーメンには必須っス。

助手

丸山

やあ、つまらないですね! 2人の第一印象が良かったら笑えたのかもしれませんが。

ホウは報告、レンは連絡、ソウは相談。コミュニケーションの基礎を端的に表した合言葉ですよ。
この三つに共通する大事な点があるのですが、2人はわかりますか?

なめられたものですね。そんなの簡単ですよ! どの言葉も漢字2文字。違いますかっ!?

ライター

丸山

全然違います。なるべく早い方がいい、という点です。報連相は言い換えれば、自分しか持っていない情報を、他者と共有する、ということです。例えば牛舎の機械を壊してしまったとします。怒られるのが怖くてずっと報告をせずに黙っていたら、問題はどんどん大きくなります。その故障で牛や人が更なる2次被害を引き起こすかもしれません。
相談も同じです。会社の人間関係がうまくいっておらず、それを相談せずに1年間ずっと我慢してしまう。それである日嫌になって会社をやめてしまう。そうならないために、早めに相談すると、案外簡単に解決することも多いです。
そうですね……。私もお母さんの大事なお皿を割ってしまい、自分の部屋に隠しているんですが、罪悪感で毎日つらいです。早くこのストレスから解放されたいです。

ライター

丸山

同情しますね。なるべく早い報連相は、日ごろから心がけてください。一度遅らせる癖がついてしまうと、いざというときになかなか動けません。
同情してくれるんですか? ありがとうございます。報告頑張ります!

ライター

丸山

お母さんに同情しているんです。

積極性が仕事に必要なことはもちろんとして、仲間としての自覚を持つことも大事です。
私はそれを感謝と謝罪で表すことができると思っています。これは後で述べることにしますね。

元気な声で話そう

丸山

元気な声で話そう。これはもちろん元気な方が好印象なこともあるんですが、言葉は伝わらなければ意味がない、という意図も含んでいます。

ライターさん、先ほど「挨拶したはず」とおっしゃってましたね。もしかしたら本当に挨拶したのかもしれませんよ。私に聞こえなかっただけで。

やっぱり絶対そうです! 僕、丸山さんの顔を見たとき一言こんにちは、って言った記憶ありますよ! ちゃんと聞いていてくださいよ! 謝ってください! 非常に理不尽な気持ちです! 謝罪を要求します! 遺憾です! 被害者の痛みを知ってください!

ライター

丸山

まあまあ落ち着いて。聞き取れなかったとしたら、それは申し訳なかったです。
でも、結果だけ見ると挨拶が通じていないという事実があるのみですよ。
厳しいようですが、ライターさんの挨拶にはほとんど意味がなかったと言えます。
意味がないんですか? せっかく挨拶したいという気持ちがあったのに?

ライター

丸山

はい、そうです。あえてドライな言い方をしますが、所詮は他人です。家族でもなければ恋人でもない。思いがあってもそれは相手の耳に入らなければ、伝わりません。

今ここにいる牛舎、機械音や環境音で、静かとは言えないですよね。ある程度の音量で話さないと相手には届きにくいんですよ。相手に届けるために単純にできること。それは元気な声で話すことなんです。

世の中にはしっかりと返事や挨拶をしたのに、返事がない、挨拶がない、と怒られて理不尽な思いをした人が、多くいると思います。確かにせっかく言ったのに怒られるのは不条理ですが、目的はあくまで、相手に伝えることです。

ラーメン屋さんって、時々めちゃくちゃ大きい声でいらっしゃいませって言うっス。絶対に伝わるっス。そしたらスープは完飲っス!

助手

丸山

お客さんへの思いが伝わるのは間違いないでしょうね。ただし牧場では牛を驚かせないように、過度な音量にならないように配慮が必要です。

また、音量以外にも、相手がちゃんと返事をしてくれたか、確認することも大切です。
「挨拶をしたのに返事がない。でも自分はちゃんと言ったからいいや」ではなくて、ちゃんと挨拶が返ってくるまで何度でも挨拶をしましょう。
仮に元気に挨拶をしても、相手が考え事をしていると伝わらないこともあります。「そんなの知らないよ」って思いたくなる気持ちもわかります。「一回挨拶したのに何度も言いたくない」。それもわかります。でも挨拶は全ての基本です。元気な声で返事があるまで相手に伝えましょう。きっとそれはあなたを助けてくれるはずです。

元気な声で、挨拶。たしかにこんな簡単なことで、いろいろな失敗が大目に見てもらえるならやっておいた方がいいなあ。

ライター

丸山

そこまで何でも許されるのかはわかりませんが、元気な挨拶で印象が良くなるのは間違いないです。挨拶にお金はかかりません。
更に、農場へ来るお客さんにもしっかり挨拶することを心がけています。
農場のスタッフは、全員が会社の顔です。スタッフが元気に挨拶をすれば、業者の方も気持ちよく農場に貢献してくれますよね。

逆もしかりです。スタッフが他農場や関連施設へ訪問する際、とにかく挨拶だけはしっかりするように教育をしています。めったに会わない人だからこそ、第一印象はそのスタッフ、会社の評価を決定づけてしまいます。社会に愛されること、それはこれからの時代、大切なことだと思います。

5年前は新人だったM君

上の写真で立派に餌づくりを指導していた4年目のM君も昔は新人でした

新人研修で好印象な人間になろう

農場でここまでマナーやコミュニケーションスキルについて研修すると思っていませんでした。失礼な言い方かもしれないですけど、技術の求められる専門職なのに会社員と同じなんだな、というか。

ライター

丸山

言いたいことはわかりますよ。それは昔ながらのイメージが大きいのかもしれませんね。

でも、従業員を雇用していようが、家族労働だろうが、働く上で大きなストレスになるのが対人関係なのは、農業だって同じだと思うんです。
部下がいうことを聞いてくれない。先輩がつらく当たってくる。同期とうまくいかない。そういう対人関係のトラブルは、案外挨拶なんかが始まりだったりするかもしれません。
好意的な第一印象は、お互いを好きになるいいサイクルの始まりです。
第一印象が良ければ、その人がする行動全てがポジティブに捉えられていくかもしれません。

「第一」印象、というからには、後から悪い印象を覆すのは難しいです。だから、新人のうちにしっかりと教育を受け、働きやすい環境を作っていきたいですね!

本日は以上です。次回は「感謝と謝罪の重要性」について話したいと思います。どうもありがとうございました!

……。

ライター

……。

助手

丸山

……いや挨拶しないんかい!
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