そもそも肥料の定義とは
肥料とは、植物の成長に必要な栄養を与えるために使用するものです。多くの場合は土壌に施すものですが、植物に直接散布する肥料もあります。
また、肥料の定義にはもう一つの側面があります。一般に販売されている肥料は、肥料取締法に定められている規格に適合し、農林水産大臣または都道府県知事の登録を受けたものに限られています。いくら植物にとって栄養となる物質でも、登録されていないものは、公的には肥料とは認められません。
つまり、肥料とは、植物の栄養になるものという機能面と、公的に認められているかどうかという法律面の両方を満たしたものであるということです。
肥料の成分「三要素」
窒素 | たんぱく質の基になる成分で、葉の緑を濃くする働きがある。光合成を活発にさせ、実、葉、茎、根など植物体全体の生育を促進する。 |
リン酸 | たんぱく質の合成などエネルギー代謝で重要な役割を果たす。根の伸び、発芽や開花、葉のツヤなどを良くする働きがある。 |
カリ | 細胞液の中を常に動き回り、たんぱく質や炭水化物などの合成・移動など、植物体内の調整をする。葉からの水分蒸散の調節などにも関わり、病害虫や寒さへの抵抗力をつける役割もある。 |
窒素、リン酸、カリは三要素と呼ばれ、植物を育てる際の基本的な栄養分です。また、三要素以外にも植物には大事な栄養素があります。カルシウムやマグネシウムといった中量要素や、鉄やマンガンなどの微量要素です。名前の通り、中量、微量なので三要素ほど施用が必要なものではありませんが、植物の生育には必須の元素なので覚えておくといいでしょう。
肥料は農作物にとって本当に必要?
自然界では、特に肥料を与えることなく植物が育っています。そのため、農作物に肥料は本当に必要なのかと疑問に持つ方がいるかもしれませんが、肥料は植物の栽培に欠かすことのできないものです。
自然界で植物が育つのは、動物の排せつ物や虫の死骸、枯れた植物などの有機物が、分解・発酵されて養分になっているからです。
しかし、人の手による田んぼや畑には、基本的にこうした有機物の循環がありません。そのため、不足している栄養分を肥料で補う必要があるのです。
あわせて使いたい。土作りに欠かせない資材
このほか、土の通気性や保湿性を改善するなど、耕作に適した土質に変える「土壌改良材」もあります。作物に栄養を与えることを目的としている肥料とは用途が異なりますが、こうした栄養を土がうまく吸収できるようにするために有効です。
肥料を与えているのに生育が思わしくない場合は、土壌改良材を試してみると良いでしょう。
編集部おススメの土壌改良剤
農業用酸素供給剤/保土谷化学工業株式会社
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出典:保土谷化学工業株式会社
近年の極端な気象条件下で作物を安定に栽培するためには、良い根張りが重要。特に、初期の根をしっかり張らせることで、その後の環境ストレスにも強くなります。その根張りのカギとなるのが、根の呼吸。植物の根もヒトと同様、酸素を必要としています。そのため酸素が十分にある土壌では、根の呼吸が活発に行われ、健全な根が育ちます。粘土質・締まりやすい・水田転作・堆肥を多く使用-。このような畑は土壌が酸欠になりやすいです。ここで、根の呼吸をサポートするのが『酸素供給剤』です。土壌の酸欠を回避し、健全な生育を助けます。
超省力土つくり資材恵土プレミアム/ライフイン株式会社
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出典:ライフイン株式会社
農家にとって大きな課題であった土壌改良作業を省略化する「恵土プレミアム」。腐植酸供給能は堆肥の約35倍。わずか2袋(30㎏)で堆肥1トン分の腐植酸を補うことができます。
同社の腐植酸は発売から29周年を迎え、全国の農家様から圧倒的なリピート率を誇ります。堆肥以上の土壌保肥力改善効果により効率的な肥料効果が期待できます。
土を柔らかくし、植物の根張りを良くする有機JAS適合の天然土壌改良材。独自の品質基準を設け、最高品質の原料のみを厳選して使用。丸粒ですので、機械撒きしやすく作業の効率化が図れます。
土壌消毒なしで連作が可能に! 「OKY-999」「Dr.放線菌」「Dr.トリコ菌」/アルム農材
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出典:株式会社オキ
「収量を落とさず減農薬を進めたい」「土が年々肥える圃場を作りたい」。そんな方におすすめなのが、漢方生薬として国内初の農薬登録をはじめ有機JAS認定を取得したアルム農材の微生物土壌改良材です。多くの微生物が生きて働く基本資材OKY-999。フザリウム抵抗性を持つ放線菌資材Dr.放線菌。リゾクトニア菌への抑制効果があるトリコデルマ菌資材Dr.トリコ菌。どれも自然界から採取した種菌を10の8乗以上の密度で資材化しているため、土壌の持つポテンシャルを高め作物が持つ本来の力を引き出します。詳細はHPをご確認ください。
肥料の種類一覧
分類 | 種類 | 具体的な肥料名 |
化学肥料 | 窒素質肥料 | 尿素・硫安・塩安・石灰窒素 |
リン酸質肥料 | 過リン酸石灰・よう成リン肥 | |
カリ質肥料 | 塩化カリ・硫酸カリ | |
複合肥料 | 高度化成肥料・普通化成肥料・配合肥料 | |
石灰質肥料 | 消石灰・炭酸カルシウム肥料 | |
その他の肥料 | ケイ酸質肥料・苦土肥料 | |
有機質肥料 | 堆肥(たいひ) | 牛ふん堆肥・豚ふん堆肥・鶏ふん堆肥 |
動植物質肥料 | 魚粕粉末・菜種油粕・骨粉 | |
有機副産物肥料 | 汚泥肥料 |
肥料は、大きな分け方として、化学的に合成された化学肥料と、動植物性の有機物を原料とする有機質肥料の二つに分かれます。
次に、窒素質肥料やリン酸質肥料などのような成分による分類や、堆肥や複合肥料などのような製造工程での分類があります。
その大きく分類された項目からさらに細かく分けられたものが、いわゆる「肥料」として登録されたものであり、その数はおよそ200種にものぼります。
肥料の使い分け方
化学肥料か有機質肥料かといった前章のような分類方法もありますが、肥料はその他にもさまざまな観点から分類することができます。肥料は、その効果や使用方法などがそれぞれ異なり、作物の種類や栽培の段階などによって使い分ける必要があるからです。
分類の方法は、例えば次のようなものがあります。
・原料の違い
・形状の違い
・成分の違い
・効き方の違い
・与えるタイミング
上記の分類方法それぞれの意味を解説し、具体的な商品の一例を紹介します。
原料の違いによる使い分け
肥料は原料で分類することができ、大きく化学肥料と有機質肥料の二つに分けられます。
化学肥料
化学肥料とは無機物を原料として、人工的に合成して作られたもので、効果が早く表れるのが特徴です。ただし速効性のため、与えすぎると効果が強すぎて過剰障害を起こす可能性があります。
有機質肥料
有機質肥料は、動植物などの有機物を原料とする肥料です。化学肥料と比べると、効果が表れるまでに時間がかかる一方、長く続くという特徴があります。
形状の違いによる使い分け
肥料には形状による分類方法もあります。固形か液体かの違いです。
固形肥料と液体肥料では、効果や使用方法などが大きく異なります。
固形肥料
粉状、粒状、錠剤などの固形肥料は、液体肥料と比べると、じわじわと効果の出てくる緩効性の肥料です。土壌の表面にまいたり、土壌に混ぜ込んだりして施用します。
土作りの段階から栽培中の追肥まで、さまざまなタイミングで施用可能です。
液体肥料
液体肥料は、固形肥料よりも速効性が高いのが特徴です。濃度の高い液体状の化成肥料を希釈して使用するのが一般的です。施用後すぐに効くので、植物が元気がない時や、成長が鈍い時などに追肥として使うといいでしょう。
編集部おすすめの固形肥料
今日から野菜 野菜の肥料 300g/株式会社ハイポネックスジャパン
粒状タイプの固形肥料。土にバラまくだけなので簡単に施用できます。速効性の成分と遅効性の有機質を配合していて約2~3ヵ月効果が続きます。
いろいろな野菜に使えるので、特に多品目で栽培している家庭菜園に最適です。
編集部おすすめの液体肥料
マイガーデン液体肥料650m/住友化学園芸株式会社
窒素をたくさん補給できる液体肥料です。モイスト成分のはたらきで液肥の浸透性・保水性を向上させる効果もあるため、乾燥しやすい鉢土でも水分と肥料がすみずみまで染みわたるようになります。
成分の違いによる使い分け
成分の違いから肥料を分類する考え方もあります。成分によって肥料の使い方も異なるからです。
単肥
窒素、リン酸、カリの三要素のうち、1成分のみの肥料を単肥と言います。長年の連作で土壌の栄養状態が偏ってきた場合などに使用します。プロの農家が土壌診断をした上で単肥を使うケースはありますが、家庭菜園で使われることはあまりないといえます。
複合肥料
窒素、リン酸、カリの三要素のうち、2成分以上を含む肥料を複合肥料といいます。家庭菜園用として販売されている肥料は、複合肥料が主流です。「7-10-9」や「8-7-5」など、三要素の割合がパッケージに表記されている商品が多いです。
化成肥料
リン鉱石など自然界に存在する物質を2種類以上、化学的操作によって造粒、成型して作られたものを化成肥料といいます。肥料成分の濃度が高いため、かさや重さが少なくて済むという特徴があります。
配合肥料
複合肥料の一種で、2種類以上の原料肥料を化学反応させずに混ぜ合わせたものを配合肥料と言います。三要素のうち2成分以上を含みます。過りん酸石灰、塩化カリなどの無機質肥料に、骨粉などの有機質肥料を混合したものが一般的です。
効き方の違いによる使い分け
肥料は効果の表れ方によって速効性肥料、緩効性肥料、遅効性肥料に分類できます。植物の生育段階や健康状態などに合わせて、どの肥料が最適かを考える必要があります。
速効性肥料
速効性肥料は、施用してすぐに効果が表れるものを言います。家庭菜園では液体肥料が速効性肥料に当たります。
植物による吸収が早く、また水やりなどで流出するため、効果は施用から1週間程度が目安です。
緩効性肥料
緩効性肥料は、施用した時から効果が表れ、一定期間、効果が持続する肥料のことです。水に溶けにくく、微生物に分解されにくい加工がしてあるため、少しずつ、かつ長く効果が続きます。
遅効性肥料
遅効性肥料は、施用した時点では植物が吸収できず、だんだんと少しずつ効果が表れてくる肥料です。微生物により分解されて効果が出てくる有機肥料と、成分が溶けにくい不溶性の肥料がこれに当たります。
主に元肥として利用されますが、追肥としても使われます。
編集部おススメの遅効性肥料
マグァンプK 中粒/株式会社ハイポネックスジャパン
引用:株式会社ハイポネックスジャパン
水に溶ける成分と溶けない成分が含まれています。溶けない成分は微生物や根から出る酸などでゆっくり分解・吸収されていくため、約1年間、ゆっくり効果が持続します。土壌に成分が行きわたると、無駄な栄養の流出が止まるため、与えすぎによる被害もほとんどありません。
与えるタイミングによる使い分け
植物の成長段階により、肥料を与えるタイミングはさまざまです。各段階で施用する肥料には名称があるので、整理しておきましょう。
肌肥
肌肥(はだごえ)は、種まきをする時に、種子と一緒に施用する肥料です。発芽するまでの養分は種の中に蓄えられていますが、発芽後には土から養分を吸収する必要があるため、発芽用の用土には少量の肥料を混ぜることもあります。
元肥
元肥は、植物の苗を植え付けする前に、土壌に施用する肥料です。生育初期はまだ肥料をあまり必要としないため、有機肥料など、緩効性または遅効性の肥料をあらかじめ土壌に混ぜ込んで土作りをします。
待ち肥
待ち肥(まちひ、まちごえ)は、開花・着果など植物が多くの栄養を必要とする段階で、伸びた根から吸収できるように、あらかじめ地中に施用しておく肥料です。代表的な施用方法に、溝施肥と穴肥(あなごえ)があります。
追肥
追肥(ついひ、おいごえ)は、植物の成長に合わせて、不足する養分を追加して施用する肥料です。特に、開花や着果時期に合わせて追肥します。すぐに効果が表れることを期待するため、速効性のある液体肥料や化成肥料を使用することが多いです。
お礼肥
お礼肥(おれいごえ)は、果樹や花木などが、花を咲かせたり、果実を実らせたりした後に与える肥料で、追肥の一種です。花や実をならせてエネルギーを消耗した木に、来年も元気に育つようにお礼肥をします。
芽だし肥
芽だし肥(めだしごえ)は、春先の芽が動き始める時期に施用する肥料です。発芽を促すのが目的で、速効性肥料が有効です。
寒肥
寒肥(かんぴ、かんごえ)は、庭木類、果樹、花木などが休眠する冬の間に、来春の発芽に向けて与える肥料のことで、元肥の一種です。木の根の先端があたりに、有機肥料などの緩効性肥料を与えます。
編集部おススメの元肥
マイガーデンベジフル/住友化学園芸株式会社
肥料の効果が3~4カ月続くので、元肥として便利です。植え付けの前に、適量を土に混ぜ込んで使いますが、肥料が直接根に触れても肥料焼けを起こしません。ばらまくだけで追肥としても使えます。
編集部おススメの待ち肥
マグァンプK/株式会社ハイポネックスジャパン
窒素、リン酸、カリ、苦土(マグネシウム)などの主要な成分をバランスよく配合した緩効性肥料です。肥料焼けや根痛みの心配が少なく、雨や水やりなどによる肥料分の流出も少ないので、溝施肥などの待ち肥に便利です。
肥料の特性を理解し、計画的な施肥を
作物の生育に肥料は不可欠です。肥料にはさまざまな種類があり、与えるタイミングや目的などによって選ぶべき商品は異なり、施用方法もそれぞれです。中には、効果が表れるまでにやや時間がかかる遅効性肥料のように、前もって予定を立てておかなければ使用が難しい肥料もあります。
肥料の種類とそれぞれの特性を理解し、計画的に肥料を与えるようにしましょう。