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ブルーベリー農園とサラリーマンの二刀流。年間営業日数48日で売上1,600万円超えの極意

sato tomoko

ライター:

ブルーベリー農園とサラリーマンの二刀流。年間営業日数48日で売上1,600万円超えの極意

多様な働き方が社会に浸透する昨今では、さまざまなタイプの二刀流農家が誕生しています。東金ジャンボブルーベリーエクスファームのおたけ園長こと代表の宇井剛史(うい・たけし)さんは、脱サラしてブルーベリー農園を起業するつもりが、諸事情により会社員との兼業で経営してきた事で予期せぬ相乗効果があったと話します。農業の売上は右肩上がりで過去最高、会社でも評価されて部長に昇進するなど上昇気流に乗る同氏に、ダブルワーク成功の極意を聞きました。

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1冊の本に人生のヒントを得て、ブルーベリーで農起業

東金ジャンボブルーベリーエクスファームは、千葉県東金市にある面積6000平方メートル、65品種1300本のブルーベリーの収穫体験農園です。代表の宇井剛史さん(以下おたけさん)は、ブルーベリーファームおかざき(愛知県岡崎市)の農業講座の卒業生です。

東金ジャンボブルーベリーエクスファーム

おたけさんとブルーベリーの出会いは2017年。ブルーベリーファームおかざきを脱サラ起業した畔柳茂樹(くろやなぎ・しげき)さんの著書『最強の農起業!』に感銘を受け、直後に東京で開催された畔柳氏の登壇イベントに足を運び、現地セミナーでブルーベリー農園開設を学ぶスピード感。2018年に勤めていた会社の退職金を元手に40品種1200本の苗を購入し、2020年の開園を目指して千葉県多古町でブルーベリーのポット溶液栽培を始めました。

東金ジャンボブルーベリーエクスファーム代表の宇井剛史さん

農起業の動機の一つはサラリーマン一本で生きていく事への葛藤です。15年間勤めた会社で課長職だったおたけさんは、変革を提案をしても一向に体制が変わらない事にもの足りなさを感じていました。もう一つは、祖父(故人)と叔父がナスを栽培をしている多古町の農地で、持続性のある農業をしたいという思いです。

「好きな仕事をして人生を楽しみたい」と話すおたけさんですが、ブルーベリーを好きになったのは栽培を始めてから。品種によっては見事な大粒に育ち、完熟すると糖度16度以上で驚くほど甘く、40品種を食べ比べてみると味の違いが明らかで、「もっと品種を増やさなきゃ!」と思ったそうです。

コロナ禍や自然災害からのネクストアクション

多古町の叔父の農地の近くにまとまった土地を借りて農園オープン準備を進めていた2019年、千葉県を大型台風が襲いました。農地への道路を倒木が塞ぎ、このままでは借地の復旧に時間が奪われ、いつまでたっても開園できないと思ったおたけさん。土地勘のある東金市に土地を購入し、当時1200鉢あったブルーベリーをトラックに積んで新天地に大移動させました。

農園はまるでブルーベリーの森

2020年6月、計画どおり農園をオープンしましたが、コロナ禍で師匠に教わった事を全てやって売上100万円。注目したいのは、そこからの事業推進力です。翌年は地元紙で紹介されて300万円、テレビでも日本テレビ、フジテレビ、TBSの3大民放に取り上げられ、翌々年は600万円と右肩上がり。その背景には、おたけさんの発案による顧客体験価値がありました。

「ブルーベリー狩りだけでは2、30分で終わってしまうし、いくら食べ放題でも食べ飽きたら、入場料の2000円が高く感じられます。コスパの良さに満足して帰ってもらえるように、自分で摘み取ったブルーベリーを乗せ放題のピザ、インスタ映えのスムージーにする体験を企画しました。滞在時間は2時間前後で皆さんゆったりと体験を楽しんでいただけています」とおたけさん。

ブルーベリースムージー体験

ブルーベリーピザを提供する農園は数ありますが、自分でトッピングしてピザを作るのは新しい体験です。「ブルーベリーを楽しみ尽くせる体験が集客につながりました」と言葉を続けます。エクスファームの「エクス」には、「エクストラ(特別な)」や「エクスペリエンス(体験)」という意味が込められています。

自分でトッピングするブルーベリーピザ体験

その体験を、インフルエンサーにお客さん目線で情報発信してもらうと、インスタグラムPV数300万回超え、YouTube動画200万超えの大バズり。直近の2024年はシーズン中8000人が来園し、ピザ体験(1000円)は1000枚、スムージー体験(500円)は2600杯を売り上げました。それも、営業日数48日間でこの数字というから驚きです。

メリットしかない、農園主と会社員の二刀流を確立

「コロナ禍を経て働き方が柔軟になったからこそ二刀流が可能になりました」と話すおたけさん。平日の週3日は会社に出勤して、それ以外はリモートワーク。早朝から自宅でリモートワークをして、午後から畑に行く事が可能な職場だからなせる就農スタイルです。

農園は家族経営で、開園日(6月から8月までの火・木・土・日・祝)は近隣に住む知り合いやそのまた知り合いがスタッフに加わり、アットホームな雰囲気。70代の父もブルーベリーとの兼業で週3日は嘱託社員として会社勤めをしています。

農業での起業を成功させたおたけさんは、転職にも成功。最初の会社を退職した後、家族に迷惑は掛けられないと1度目の転職。その会社が兼業禁止だと入社して初めて知って2度目の転職。しかし、転職先の会社は残業が多く、ブルーベリーの世話ができなくなるため、2022年に現在の会社に3度目の転職をしました。転職を重ねる前の最初の会社では課長職で年収800万円でしたが、現在は部長職に昇進し、農園収入と合わせて年収3000万円超え。これも二刀流の相乗効果だとおたけさんは語ります。

他にはないブルーベリー体験を楽しむお客さん

「お客さん目線でブルーベリー農園を見ているので、会社で進めるプロジェクトでもエンドユーザーのことを考えられるのはありがたいです。会社の給与があるから、ブルーベリーの利益は全てお客さんに還元できるので二刀流はメリットしかないです」

二刀流農起業支援でブルーベリーをメジャーへ

「めちゃめちゃ忙しいですがブルーベリーが楽しすぎて、仕事としてではなく人生の楽しみとしてブルーベリーを育てたいし、お客さんが喜ぶ企画を考えたいんです。自分の考えを即実行してトライ&エラーで結果を出せることにやりがいを感じています」とおたけさん。充実した毎日を送りつつ二刀流農家の支援事業を準備中です。

常にお客さん目線。楽しい企画を次々と回してノウハウを蓄積

「畔柳さんに学ぶ農起業の続編として、お客さんに喜ばれる体験の企画からオペレーションまで伝授したいです。お客さんを待たせないオペレーションなど、少ない人数で高効率に回すノウハウは、マーケティングを含めて全て言語化できています」と力強く語ります。

他のブルーベリー農園は、競合ではなく仲間。
「ブルーベリーの市場はまだ小さいので、イチゴ狩りのようにメジャーになるためにはみんなで押し上げていかなければなりません。ブルーベリーはつまらないと思われてしまうとシェアは伸びないので、お客さんに喜んでもらえるブルーベリー農園が増えることに貢献したいです」

次のステージでは、二刀流農起業支援でその願いを実現させることでしょう。

<取材協力>
東金ジャンボブルーベリーエクスファーム

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