秋田県の真ん中、水と香りの町・美郷

奥羽山麓に広がる「大台野広場」にある美郷町ラベンダー園
秋田県のほぼ真ん中、奥羽山脈の麓に広がる美郷町。東に山並みを、⻄に仙北平野を望む、山と田んぼの間の町です。
雪解け水が地中をめぐり、あちこちで清水として湧き出しています。その数は百か所を超え、「水の郷百選」にも選ばれています。1年を通して澄んだ水はやわらかな甘みを含み、古くから稲作や酒づくりを支える恵みとなってきました。
気候は内陸性で、冬は雪が深く、夏は日が強いのが特徴です。春の雪解けとともに大地が目を覚まし、秋には黄金の稲穂が風に揺れます。この大きな寒暖差と、雪が土を守る冬の環境が、香りのよいラベンダーを育てる条件にもなっています。
都心からのアクセスも良好
町の中央を国道13号線が南北に走り、東北自動車道の大曲インターチェンジから車で約15分。最寄り駅はJR奥羽本線の飯詰駅や後三年駅で、秋田新幹線の停車駅・大曲から町までは車で15分ほどです。首都圏からは秋田新幹線で大曲駅まで約3時間半、そこから車で15分前後で到着。山と田園に囲まれながらも、好アクセスなのも魅力です。
水と土が育む、豊かな実りと暮らし
人口はおよそ2万人。稲作を中心とした農業の町ですが、近年は枝豆やアスパラガス、花き、ハーブなど多様な作物が育てられています。
朝は湧水を汲みに来る人の列、夕暮れには田のあぜ道を自転車で帰る学生たち、商店の軒先には採れたての野菜と、束ねられた小さな花。
そんな日々の暮らしの中に、ふと風にのってラベンダーの香りが漂います。それは観光のためではなく、この土地に根づいた“日常の風景”そのものです。
町の未来をラベンダーに託す

豊かな水と肥沃な土に恵まれた美郷町。その自然の中で、人々は長く米とともに暮らしを築いてきました。けれど昭和の終わりごろ、町は新しい風景を求めて動き始めます。
次の世代へ、どんな「美郷らしさ」を残せるだろう―。その問いの答えが、ラベンダーでした。
美郷町でラベンダーの栽培が始まったのは昭和63年。国のふるさと創生事業を活用し、旧・千畑町が新しい地域資源づくりに挑戦。「せっかくなら、この土地らしい花を咲かせたい」そんな声から生まれたのが、ラベンダーの畑づくりでした。

美郷雪華生産組合の加藤征輝組合長
「北海道のラベンダー畑を見て、その美しさに感動し、この風景を、町でも咲かせたいと、当時の町長が決意したそうです」
そう語るのは、美郷雪華生産組合の加藤征輝組合長です。当時、栽培を任されたのは数名の農家。稲作一筋だった彼らにとって、ラベンダーはまったく未知の世界。
「正直、最初は“できるのかな”と思いましたよ。でも、やるからには中途半端にしたくなかった」
北海道や千葉から苗を取り寄せ、約十種類の品種を試験的に栽培。しかし、美郷の湿潤な気候は想像以上に厳しかったといいます。
「ラベンダーの弱点は長雨です。梅雨が続くと根が腐ってしまう。ある年は、畑がほとんど全滅しました。でも、失敗するたびに少しずつわかってくる。水はけをよくしたり、畝を高くしたり、土の配合を変えたり。そうやって“この土地に合う育て方”を探してきました」
失敗と試行錯誤を重ねながら、ようやく土地に根づく株が見つかり、少しずつ紫の花が町の風景に増えていきました。

平成4年、地元農家4軒が集まり「北のかほりの会」を結成。千畑町の事業として牧草地と杉林を切り開いた千畑ラベンダー園(現:美郷町ラベンダー園)に植栽し、会は園の管理を担います。イベントの運営や、テレビ・ラジオの売り込みも、会が中心となって動きました。
「何もかも手探りでした。大変ではありましたが、育てた花が咲き、それを“きれい”と言ってもらえたときは、本当に嬉しかったですね」
やがて、ラベンダーは観光のためだけではなく、“町の手で育てる風景”として根づいていきます。それは花を咲かせること以上に、この土地の人々が自分たちの誇りを形にした瞬間でもあります。
白い花が咲いた日、美郷の新たな誇りが生まれた

平成17年、町のラベンダー畑の一角で、1本の株に白い花が混じって咲いているのを加藤さんたちは見つけました。
「最初は、光の加減かな?と思いました。でも、近づいて見たら、たしかに白い花だったんです」
その花は、町で長く育ててきた紫の品種「さきがけ」の中から自然に生まれたものでした。珍しさに心をひかれた加藤さんたちは、その株を大切に育て、数年かけて少しずつ苗を増やしていきました。
「冬を越せるか、香りはどうか。ただ“きれい”じゃなく、ちゃんとこの土地で育つ花かどうかを確かめたかった」(加藤さん)
試行錯誤を重ねた結果、この白いラベンダーは美郷の気候にもよく合い、2年にわたる調査でも安定して栽培できることが確認されました。
平成22年、公募によって名前が決まりました。“美郷の初夏に、美しい雪の結晶が見られるように”。そんな願いを込めて、白い花は「美郷雪華(みさとせっか)」と名づけられました。

そして平成25年2月、美郷雪華は農林水産省により正式に品種登録されます。自治体がオリジナルのラベンダー品種を持つのは、全国的にも珍しいことでした。
「登録証が届いたときは、本当に嬉しかったですね。“この町の花が、ちゃんと名前を持った”って感じがしたんです」
白い花は今、紫のラベンダーの中で静かに咲き、初夏の畑にまるで雪の結晶が舞うような景色をつくり出しています。その可憐な姿は、美郷町が歩んできた年月と、花を守り続けてきた人々の誇りそのものです。
美郷町のラベンダーを受け継ぐ、地域おこし協力隊を募集

畑の管理を担う花き農家の長澤津代志さん(左)と加藤組合長(右)
令和6年、美郷雪華生産組合が立ち上がりました。これまで観賞が中心だったラベンダーを、香料や化粧品、さらには日本酒の酵母など、さまざまな用途に活かす動きが広がっています。

美郷町発祥の白いラベンダー「美郷雪華」の香りを使用したシャンプー
畑の管理を担う花き農家の長澤津代志さんは、春先の剪定から草取り、開花後の刈り取りまで、1年を通して畑と向き合いながら、加藤さんのもとで技術を学んでいます。
「ラベンダーは花きとは全然ちがう植物なんです。木のように枝を伸ばすから、花屋で扱う花とは手のかけ方がまるで違う。最初の頃は、どこを切ればいいのかさえわからないこともありました」

ラベンダーの栽培でいちばん大切なのは「よく観察すること」だと長澤さんは言葉を続けます。
「天気や風、花の色の変化。ちょっとしたサインを見逃さないようにしています。ラベンダーを次の世代につなげるのが、私たちの役目。だからこそ、日々の手入れを丁寧に、ひとつひとつ確かめながら続けています」
そして、この未来を続けていくためには、新たに畑を支えてくれる仲間が必要です。美郷町は地域おこし協力隊にその思いを託します。
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美郷町からの支援制度(一部抜粋)
- 美郷暮らし促進奨励金(町内定住を目的として新たに家屋を取得・新築した方への助成)
- 新規就農者支援事業(町外から転入して町内で新規就農する認定就農者への住居・農地の賃借料の助成)
- 新規就農者研修支援事業(研修施設で農業研修する方に対しての研修奨励金助成)

ラベンダーの見頃は6月だが、空梅雨の影響で、取材に訪れた10月上旬でも「二番花」がひっそりと咲いていた
「きれいな花の裏には、地道な作業がある。それを理解して、愛情を持って続けてくれる人に来てほしいですね。ラベンダーは町の宝です。一緒に守ってくれる人がいるなら、どんなに心強いかと思います」
と、加藤組合長は協力隊に期待を寄せます。
冬には栽培の勉強会や起業のセミナーも開かれ、協力隊としての活動を越えて、自分の生業を見つけるチャンスも。町の宝は今、次の手に受け継がれようとしています。
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募集概要
- 募集職種:地域おこし協力隊(ラベンダー園ガーデンスタッフ)
- 活動内容:ラベンダーの栽培・管理、商品化・PR、地域イベントへの参加など
- 募集人数:2名
- 勤務地:秋田県美郷町 千畑地区ほか
- 任期:令和9年3月31日まで(最長3年延長可)
- 報酬:月額21〜22万円程度+期末手当あり
- 任期:令和9年3月31日まで(最長3年延長可)
- 応募期間:第1回 令和7年11月4日〜28日、第2回 12月1日〜26日

30年以上かけて育まれてきたラベンダーの風景。その香りの奥には、たくさんの人の手と時間が息づいています。これからの美郷町に、その手を重ねてくれる人を待っています。
地域おこし協力隊として、白と紫の花が揺れるこの畑に、新しい風を吹かせてみませんか。
お問い合わせ
美郷町役場 商工観光交流課 地域おこし協力隊募集担当
TEL:0187-84-4909
E-mail:kanko@town.akita-misato.lg.jp
公式Facebook:https://www.facebook.com/misatonomizumo/
公式X(旧Twitter):https://x.com/misatonomizumo






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