筆者の「ずぼらさ」は農業に向かないレベル?

山の中にある畑
本記事の前提となる筆者のずぼらさですが、主に下記3つの要素に大分できます。
1つ目は、畑へ行く回数が少ないことです。現在の畑は自宅から車で30~40分かかるところにあり、毎日通うことが難しい状況です。そのため、小まめな水やりや虫食いチェック、病気チェック、収穫などができません。
2つ目は、「自然に身を任せてみたい」「作物が育たなかったら育たなかったでOK」「趣味だから失敗しても良いだろう」と考えていることです。特に土づくりについては「なるべくあるもので済ませよう」と思ったり、摘心や芽かきは「完璧にやらなくとも実るだろう」と考えたり、自然に身を任せたゆるさや楽観性があります。
3つ目は、性格の問題です。とてもマメな性格とはいえず、普段から整理整頓や計画性を持って行動することが苦手なタイプです。そもそも農作業には向かない性格だと思っています。しかし、「少しでもいいから自給率を上げたい」という考えがあるので、自分には農作業をする資格があるのだろうか?と疑問に思いながら「農」に向き合っています。
作るのをやめた野菜とワンポイントアドバイス
ここからは、何度か失敗し、作るのをやめてしまった野菜を紹介します。ただ、作るのをやめた野菜を紹介するだけでは今後の役に立たないので、体験型農家民宿「里山楽耕」の安藤由美子さんご協力のもと、農家の加納知子(かのう・ともこ)さんから難易度・よくある失敗ポイント・対策についてアドバイスをいただきました。
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加納知子さん 2013年に岐阜県中津川市に移住。2016年から農家として農薬に頼らない野菜・果樹の栽培を開始。徐々に肥料を使用しない栽培に切り替えて少量多品種の野菜や果樹を栽培実験し、先輩農家からの学びとともに後進に伝える。2022年より岐阜県の「ふるさと水と土指導員」が主催する畑教室「畑ひろば」の講師として活動している。 |
にんじん

種をまいてもほとんど発芽せず

プロ農家アドバイス
難易度:★★★☆☆(3)
よくある失敗ポイント:ニンジンは発芽さえすれば70%成功します。発芽の失敗要因は、土のかけすぎ、乾燥、雨による種の流出などです。

種まき後は覆土のかわりにもみ殻を被せると、光を通しやすく、保湿もしてくれるので、もみ殻の活用はおすすめです。雨による土や種の流出も防いでくれます。
本葉が出るまでは水やりをしっかりしましょう。小まめな水やりができない場合は、種のまき筋以外の場所を草マルチでしっかり覆うと保湿できます。
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー

プロ農家アドバイス
難易度:★★★★☆(4)
よくある失敗ポイント:アブラナ科は基本的に虫に好まれるので、虫対策をしないとほぼ食べられます。暑い時期は特に虫が活動的なので、全滅してしまうことも。温暖化によって栽培の難易度はより上がっています。卵を産み付けられると虫が大発生するので、その前の防御が大切です。

白菜

そこそこ形はいいが、虫食いが多い白菜

プロ農家アドバイス
難易度:★★★★★(5)
よくある失敗ポイント:白菜は、アブラナ科の中でもかなり難易度が高い作物です。上手く育たなかったとのことですが、虫食いと結球不良は連動します。白菜は外葉が20枚程度できないと結球し始めないため、虫食いだらけだと光合成が足りず、結果的に結球にも至らないのです。
自然栽培は育ちがゆっくりなので、種の袋に「収穫まで60日」と書いてあっても、実際はそれ以上かかることもあります。植え付け時期が遅いと、寒さで結球しないことも。秋冬野菜は、苗の段階で1週間遅れるとその後の生育は1カ月遅れると思っておきましょう。

防御の考え方は、上記のキャベツなどと同じです。虫対策をしっかりして、早めに育てましょう。自信のない方は、ミニ白菜のような小さい品種のように比較的すぐに収穫できる品種を選択することをおすすめします。
ベビーリーフ

プランターで栽培するも、ぽつぽつと葉に穴がある

プロ農家アドバイス
難易度:★★☆☆☆(2)※プランターの場合
★★★★☆(4)※露地の場合
よくある失敗ポイント:コオロギ、バッタ、ダイコンサルハムシが壊滅的な食害を起こし ます。基本的にアブラナ科は狙われやすいです。

キク科のリーフレタスは虫の食害が比較的少ないため、アブラナ科以外の品種を育てる手もあります。ただしレタスは高温多湿の条件下で病気になりやすいので、そこだけ注意しましょう。
ねぎ

プロ農家アドバイス
難易度:★★★★(5)※種から育てる場合
★★☆☆☆(2)※苗から育てる場合
よくある失敗ポイント:苗の段階では日照不足と過湿、乾燥に弱いです。日照が足りないとヒョロヒョロに育ち、過湿で腐り、乾燥で枯れて消えてしまいます。昨今の温暖化の状況下では、育苗時の水管理はさらに難しくなっています。

玉ねぎ

小さすぎる玉ねぎを収穫

プロ農家アドバイス
難易度:★★★☆☆(3)※小ぶりで良い場合
★★★★★(5)※自然栽培で大きくする場合
よくある失敗ポイント:種を直播きして栽培するのは、ほぼ無理です。また、そもそもの前提として、自然栽培の場合は、市販されているようなサイズに育つことは難しいです。
また、霜柱が立つと根が浮いて枯れます。栄養と水分が不足すると大きくはなりません。

深植えすると土の圧力で膨らまないため、玉ねぎは白い部分が見えるか見えないかの深さで植えることがポイントです。
霜柱が立つ地域では、定植時に厚めにもみ殻や草マルチをします。それでも根が抜けてしまった場合は、霜で浮いた苗を埋め戻す作業が必要です。土が出来上がっていると霜柱が立つこともありませんが、霜柱が立ってしまった時には指で穴を作って埋め戻しましょう
2月の中旬頃、株間に米ぬかを2つまみほどすき込むと球が成長しますよ。
「ずぼらだけど作物を栽培したい、土を触りたい」という人への解決策

近くの米農家さんでお手伝いをさせてもらった
ずぼらな性格ですが、作物を栽培したい気持ちや土に触れたい気持ちは変らずにあります。プロの農家になったり、100%自給自足したりする気はありませんが、自分で作物を作っている感覚や、いざとなったらさまざまな作物を育てられるという自信を持っていたいからです。
ずぼらなりに家庭菜園を続けたり、土に触れたりする方法には以下のようなものがあると思います。
● プランターを使う
● 比較的難易度の低い作物のみ栽培する
● 経験豊富な人の菜園の手伝いを中心にする
● コミュニティに所属したり、師匠を頼ったりする
どんな方法がおすすめか、加納さんにご意見をうかがってみました。
加納さん:どこを目指しているかによって異なりますが、師匠がいるコミュニティに参加するのが一番いいのではないかと思います。理由としては、一人でやると知識がないから失敗するし、忍耐のいることがたくさんあるので辛くなりますが、師匠がいるコミュニティなら学びながら楽しく知識を身に付けられるからです。
どうしても一人でやるしかなく、さらにきちんと作物を収穫したい場合は、多少の手間暇を惜しまない忍耐力が必要だと思います。夏場の草管理も絶対に必要です。
「収穫できたらいいな」くらいのテンションの場合は、楽観的に構えてもいいのではないでしょうか。生き残ったものを食べれたらいいというスタンスで、収穫に大きな期待をしなくていいのなら、徹底的に取り組む必要はありません。
プランターは育てやすいですが、肥料不足になりやすいです。しっかり栄養のある土を使ったり、栽培期間の短い作物を育てたりと工夫が必要です。
畑で「周りに迷惑をかけたくない」となると草の管理が必要ですが、春の草を徹底的に根っこごと抜くことで、草の繁茂を抑えられます。作物と草の間の競合が起きないので、作物は養分を独占でき、丈夫で大きくなり、虫の害も減ります。
また、品種を厳選して手数を減らすこともおすすめです。成功したら別の作物を育てたり、テーマを決めて少ない品目を育てたり。子どもが一人なら手をかけられるけれど、10人の子どもを育てるのは無理なのと同じだと思います。生き物を育てている自覚は必要ですよね。作物も、可愛がって育てれば応えててくれる反面、目が届かない子の成長は厳しくなるようなイメージです。
獣害がないことが前提ですが、家庭菜園の初心者さんにはじゃがいもや豆などがおすすめです。レタス、水菜、じゃがいも、玉ねぎ(苗から)、ねぎ(苗から)、にらなどの虫に強い作物を育てるのも良いでしょう。
目配り、手配りできる数におさめながら栽培すると良いと思います!
まとめ
苦手意識のある作物の栽培方法について、農家の加納さんにお話をうかがいました。白菜やキャベツ類、玉ねぎなどは、栽培難易度が高めであることが改めて分かりました。私の栽培方法に問題があった部分もありますが、そもそも難易度が高いと分かると、少しだけ救われるような気持ちになります。
一方で、にんじんやベビーリーフは栽培のコツさえ押さえれば、次こそ成功させられるような気がしてきました。目を配り、手をかけられる範囲で栽培することを意識して、この秋冬は大根・にんじん・ベビーリーフ(プランター栽培)などに取り組んでみようと思います。玉ねぎは頻繁に食べるので、苗を購入して栽培するのも良いかもしれません。
これまで「種から育てたい」という謎のこだわりがあったり、「収穫できなかったらできなかったでいいや」と思っていましたが、もう少しこだわりをゆるめて、かつせっかくなら収穫量の向上も目指して、新たな気持ちで家庭菜園に取り組みたいです。

















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