金沢・奥能登の農地180haから事業を展開
石川県で有機栽培のコメやダイズなどを栽培する金沢大地グループ。
生産する作物のほぼ全てを自社加工して、有機味噌や醤油、納豆などを販売しています。またブドウ栽培も行い、グループ会社の金沢ワイナリーでは県産ブドウ100%によるワインの醸造、レストラン運営など、多岐にわたる事業を手掛けています。
代表の井村さんは「私たちは、ちょっとおっちょこちょいで早く取り組む傾向があって」と冗談めかして話します。「輸出にも2008年頃から取り組んでいました。東日本大震災によって、一時期は取り止めていましたが、現在は少量ですが輸出しています」
井村さんが有機栽培に取り組み出したのも比較的早い時期です。井村さんはもともとは会社員でしたが、農家へと転身。「みどりの⾷料システム戦略」や「SDGs」といった言葉も、有機JASマーク もなかった1997年の就農時から、有機栽培に取り組むことをビジョンに掲げます。
「就農した当初から、持続可能性と生物多様性の2つをビジョンに掲げていました。今も『千年産業を目指して 』を経営理念に持続可能な農業の形を模索しています」
井村さんの就農当初に40ha程度だった農地は現在、グループ全体で180haに広がりました。

特別天然記念物がやって来る農場
そんな金沢大地の、金沢市郊外の有機農場のうち約10haが2025年、環境省より「自然共生サイト」に認定 されました。自然共生サイトとは、民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域 を指し、2025年12月末時点では255カ所が認定 されています。
金沢大地は、国の特別天然記念物であるコウノトリを 育む農地保全増進活動を評価されての認定です。コウノトリは1971年に野生の個体が絶滅しましたが、保護増殖を経て、再び野外を飛ぶようになりました 。
金沢大地の農場の一角には人工巣塔が設置されており、2023年から4年連続でヒナが生まれました 。
コウノトリにも選ばれる農場である理由について、井村さんは話します。
「分かりやすく言うと、餌を提供しているのですね。25年以上有機農業を行っていて、ある程度の広さの団地は日本国内でも少ない。生物多様性があり、その数も多い。コウノトリにとっては、ヒナを育てるために餌が豊富な場所を選ぶことは大事ですから、それで選んでくれたのだと考えています」

金沢大地のほ場の巣塔で子育てをするコウノトリ
金沢大地は現在、能登地域でのトキの放鳥に合わせて、将来的に能登の農場も繁殖地になるような取り組みも始めています。
「環境保全型農業を一生懸命やっています。コウノトリの繁殖は、生物多様性の損失を止めて回復に反転させるという『ネイチャーポジティブ 』の一つの形ではないでしょうか」
農業者減少は有機農業も同じ

ファンを魅了する商品の数々
自然共生サイトにも選ばれた金沢大地ですが、一方でそのことが直接売り上げにつながるわけではないと井村さん。
「例えば商品に大々的にうたっているわけではありませんし、私たちのPR不足という部分もあります。ただ、それで売り上げが上がることを期待しているわけではありません。有機農業は『化学合成農薬を使わない』などの特徴もありますが、それよりも自然の循環を生かした営みであることが大事。農産物は、それを伝えるための“メディア”ですし、今後はそれを消費者にどのように伝えていくかが課題ですね」
金沢大地は消費者や取引先との距離が比較的近いこともあり、「令和の米不足」の際も不安定な市場による影響は小さかったそう。長年の取り組みが強みとなっています。
ただし同社と取引先との結びつきの強さは、農業者の減少とも関係していると井村さんは指摘します。
「有機農業者も高齢化していますし、減っているんです。有機農業は新規就農者が大規模で始めるものでもなく、これまで草の根的に小さい面積で取り組んでいた人たちが支えてきました。『みどりの食料システム戦略』でも有機農業の拡大が掲げられていますが、その点では、ある程度の規模で営農している農業者が、例えばその生産工程の一部を有機栽培へと転換するようなこともしないと増えていきづらいのではないでしょうか」
また中山間地域での担い手不足については特に深刻だと井村さん。
「国は基盤整備に力を入れていますから、平地での田んぼの大規模化の流れはありますよね。私たちが180haになったのは約20年前で、当時その規模の経営は、あまり居ませんでした。ただ、今は100ha、200haも珍しくなくなっています。ただ問題は中山間地域です。全国の耕地面積、農家、売り上げのそれぞれ約4割を占めます が、そこにメスが入っていない印象です。政策の論点になってほしいですし、消費者の皆様も関心を持って民意を示してほしいと思います」

奥能登にある有機蕎麦ほ場
人材への課題と期待
金沢大地グループの農場は、2024年の能登半島地震で被害を受けました。
「能登地域はまだ大変な状況です。半島ですし、もともと全部過疎地でしたから復興が進みづらい。例えば資材を運ぶのに時間がかかったり、作業者が来ても寝泊まりするところが少ない。復興にはまだ時間がかかりそうです。周辺にはやめてしまった農家もたくさん居ます」
また最大の課題は、人材だと井村さんは言います。
「私たちの場合、3人が震災によって辞めてしまいました。人員募集はしていますが、若い人はやはり来づらい。もともと地元で採用をしてきましたが、なかなか難しいですね。それでも近年は、農業界に対する風向きは変わってきた感じを受けています。昔に比べたら、大学を卒業して農業生産法人に入社する人が増えてきた気がします。私たちのところにも今年、初めて大学新卒の社員が入ります。企業理念を明確にし、給与や働き方などの待遇面をしっかり整えていけば、いい人材が入ってくる可能性があるのではないかと、ここ数年感じています」
課題も少なくない中で、若い世代への期待を話した井村さん。自然共生による農業を続け、広げるための希望が感じ取れます。

(編集協力:三坂輝プロダクション)










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