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「善意のお裾分け」が違法に? ブドウの自家増殖と苗の譲渡に潜む法的リスク【農業法律相談所#14】

「善意のお裾分け」が違法に? ブドウの自家増殖と苗の譲渡に潜む法的リスク【農業法律相談所#14】

「ブドウの苗を近所の農家に分けてあげた」「購入した苗を自分で増やして栽培している」。 かつての農業現場では、ごく当たり前に行われてきた光景かもしれません。しかし、近年の種苗法改正により、こうした「長年の風習」や「善意」が、重大な違法行為となるリスクをはらんでいます。知らず知らずのうちに法律違反を犯し、差止請求や損害賠償といった事態を招かないためには、正しい知識のアップデートが必要不可欠。
今回は、長年ブドウ栽培を営む農家の方の疑問に対し、弁護士の杉本隼与(すぎもと・はやと)さんが、改正種苗法のポイントと注意点について詳しく解説します。

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自家増殖した苗を無償提供するのは違法?

私は長年農業を営んでおり、自分で所有している農地にてブドウを栽培しています。ブドウの苗については、業者から購入したものもありますが、長年の風習に従って、一度業者から購入したものを自家増殖したものも使用しています。また、ごくまれに、自家増殖したものの、使用しなかった苗を近所で同じくブドウを栽培している農家に無償で分けることもありました。私がブドウの苗を分けた人の中には、その苗を海外に持ち出した人もいると聞いたことがあります。
最近、以上のような私の行為は、現在では種苗法に違反して違法であるからやめたほうが良いと近所の方に言われました。私が長年行ってきた上記の行為は違法なのでしょうか。

弁護士の見解「種苗法違反の可能性高い」

種苗法に基づいて登録された品種について、①種苗を自家増殖したり、②自家増殖した種苗を有償・無償を問わず、第三者に分け与えたり、③品種登録され、「海外持出禁止」と表示されている種苗を海外に持ち出す行為は、種苗法に違反する違法な行為となる可能性が高いです。

種苗法とは

種苗法は、新品種を育成した者に対して、品種登録を行うことにより一定の権利を与えることをその内容としています。このように品種登録により与えられる一定の権利のことを「育成者権」といいます。

育成者権の内容は法律によって定められており、例えば、品種登録した種苗(以下、「登録品種」といいます)を生産・譲渡・輸出・輸入するなどの行為が含まれるものと定められています。そして、育成者権を保有する者を「育成者権者」とよび、育成者権者が育成者権を独占的に使用できると定めています。
従って、育成者権に含まれる行為について、育成者権者の許諾なく無断で行った場合、種苗法に違反する違法行為となり、当該行為の差止請求や損害賠償の請求を受けることとなります。
以上のことから、登録品種については、育成者権を侵害しないように使用する必要があります。

法改正によって「自家増殖」はアウトに

2022年4月1日に施行された改正種苗法では、育成者権の権利の範囲が拡張されています。これまで、農業者が収穫物の一部を自己の農業経営内において次期収穫物の生産のための種苗として用いる「自家増殖」については、一部の植物種を除いて育成権の効力が及ばないとされてきたものの、法改正により、自家増殖についても育成者権の権利の範囲内であるとされ、育成者権者から許諾を得ないで自家増殖を行うと、種苗法に違反する違法行為となるものとされました。

従って、2022年4月1日以降、登録品種について育成者権者の許諾なく自家増殖を行うことは、基本的に違法な行為であるという事になります。

ご質問者様の場合でも、登録品種を自家増殖している場合、自家増殖という行為自体が種苗法に違反している可能性が高いものと言えます。加えて、自家増殖した者を第三者に譲っている場合、有償無償を問わず、当該行為自体も種苗法に違反する違法行為である可能性が高いものと言えます。

海外輸出について

2021年4月1日に施行された改正種苗法では、品種登録の際、届出によって海外への持ち出しを制限することが可能になりました。海外への持ち出しが制限された種苗については、「海外持出禁止」等の表示を行うことが義務付けられ、このような表示がなされた種苗を海外に持ち出した場合、基本的に種苗法に違反する違法行為となります。

ご質問者様の場合、まず前提として、登録品種であり、かつ、「海外持出禁止」等の表示がされたブドウの苗を第三者が海外に持ち出した場合、当該第三者は種苗法に違反するに違法行為を行っていると判断される可能性が高いものと言えます。加えて、ご質問者様がそのような第三者にブドウの苗を分け与えた行為が違法となるかについては、事情により結論が異なるものと言えます。例えば、第三者が海外に持ち出すことをあらかじめ知っていた場合には、ご質問者様の行った分け与え得るという行為が違法となる可能性が高いものと言えます。

今春に種苗法のさらなる改正が決定

政府は2026年4月3日さらなる種苗法の改正を閣議決定し、法案を国会に提出しました。今回の改正案については、育成者権の存続期間を10年延長することや品種登録出願中においても、海外への輸出を禁止することなどが内容とされています。当該法律が成立した場合、育成者権として認められる範囲がさらに広くなることとなりますので、育成者権を侵害しないように、改正の内容を注意深く確認する必要があると言えます。

本事案のポイントを整理

✅種苗法は、種苗に対する一定の権利として、育成者権を認めており、育成者権として認められた行為について育成者権者の許諾なしに行うことは、違法となる可能性が高い。
✅登録品種を自家増殖したり、自家増殖した種苗を有償・無償を問わず、第三者に分け与えたり、「海外持出禁止」と表示されている登録品種を海外に持ち出す行為は、種苗法に違反する違法な行為となる可能性が高い。

弁護士プロフィール

杉本隼与
2003年早稲田大学法学部卒業。2006年に旧司法試験合格(第61期)
2016年東京理科大学イノベーション研究科知的財産戦略専攻卒業 知的財産修士(MIP)
同年に銀座パートナーズ法律事務所を開設し、現在に至る。
https://ginza-partners.com/

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