社長業から一転、農業界へ
金沢市でナシを中心に果樹を栽培する東中果樹園の東中さん。両親が営んでいた果樹園に携わり始めたのは48歳の頃です。
それまでは自動車関連製品の販売会社で、社長を務めていました。
「最初はメーカーに就職しましたが、大学生の時にバイトをしていた会社の社長に声をかけられたんですよ」
アルバイト時代に1カ月で1千万円の売上を達成した手腕を見込まれてのヘッドハントでした。その後、東中さんは44歳で社長に抜擢されました。入社時に社員20人程度だったその会社は、退社時には年商約30億円、従業員50人規模に成長しました。
そして次の挑戦の舞台に選んだのが、農業界でした。

栽培、コストダウン、投資のサイクルで好循環をつくる
東中さんは2018年に後を継いでから間もなく、売上向上のために高単価の品目に少しずつ切り替えつつ、品質を高めるための投資を続けてきました。「まずは、おいしいものを作ることが基本ですよね。そこから売上を伸ばし、次にコストダウン、という順番です。あれこれ同時にはできませんしね」栽培のための投資も惜しまなかった東中さん。代替わりして間もない頃から、毎年200万円程度ずつ、棚資材などを整備してきました。
「ようやく一段落してきたので、そこに掛けていたコストが今後は利益になっていくかなと思っています」
栽培環境の整備に加え、施肥や消毒などの実作業面での実験的な取り組みも毎年行ってきました。現在は約1.5haの農地で、石川県のオリジナル品種である「加賀しずく」 をはじめ、幸水やあきづきなど約15品種を栽培。これらを“リレー収穫”しながら、継続的な出荷を実現しています。現在は4分の3を農協の共販へ、4分の1は個人に直接販売をしています。
そして、東中さんが行ったもう一つの取り組みが、ナシ栽培業の一部の法人化です。2019年に東中さんは株式会社金沢果研を設立。
「農業界は法人が少なく 、競争があまりなかった。競争がないということは、品質も上がりにくく、価格も下がっていかないということだと思います」適正な競争のためにも、個人事業から脱却したかったと東中さんは話しました。

東中さんがつくる梨「加賀しずく」
若手の育成を視野に法人設立
東中さんは2021年、更にもう一つの会社を仲間と立ち上げます。それが金沢フルーツファーム株式会社です。新規就農を目指す人の雇用と育成、また独立支援が目的の会社で、すでに独立した人もいます。
一方で金沢果研でも同様に、若手の独立支援に努めています。現在、金沢果研で働く安藤飛翔(あんどう・つばさ)さん(29)にも話を聞きました。安藤ささんは東京農業大学を卒業後、金沢市のレンコン農家で4年間勤務。その後、地元の千葉県に戻り、一時的に野菜の魅力を発信するタレント「ヤサイちゃん」として活動していました。
「子どもが農業に触れられる環境をつくりたいという思いから、これまでさまざまな活動に取り組んできました。その中で、子どもは果物が大好きだと気づき、果物を作れれば活動の幅がさらに広がるのではないかと考えました。就農先として果物の産地を探す中で、以前暮らしていた金沢に親しみを感じ、ご縁もあって金沢果研に入社しました」

東中さんから指導を受ける安藤さん
それまで野菜の栽培技術はおおむね学んでいた安藤さんでしたが、果樹については未経験でした。
「きっと雇う側としては、技術を教えることは負担だと思うんですよ。技術が身に付くまでには時間もかかりますし、その間にも給料は発生します。赤字も織り込んで教えてくれるところは決して多くありません。ですから、それでも雇って技術を教えてくれる金沢果研は貴重ですし、働く側としてはうれしいですよね」
新規就農者の独立を支援
安藤さんは金沢市での独立を考えていますが「そんなにぜいたくも言えないと思っています」と言います。
「やはり信用がない人には農地が貸せませんよね。できる場所から始めていこうと思っています。世の中で後継者不足がよく言われていますが、僕みたいに『就農したい』『独立したい』という人はいっぱいいます。それができないのは、簡単には農地が借りられないという部分もあると思います」(安藤さん)

梨栽培を学ぶ安藤さん
東中さんは話します。「いきなり農地は見つからないんですよ。だから独立に向けて、適当な農地が見つかったら当社で働きながらも、少しずつでもそこを管理するようにすればいいと思います。技術についても、1年働くだけでは全体の流れが分かる程度。本当に身に付くまでにはさらに時間がかかります。そこで、働きながら技術を身に付け、農地を少しずつ管理し、フェードアウトするように、独立するのがいいのではないでしょうか」
東中さんの近隣では世代交代が進んだものの、それでも離農していった農家は少なくないといいます。「離農して、更地になってしまうようなことは防ぎたいですよね」。
新規就農者を支援する方法は様々ですが、スムーズな独立は農地保全にもつながります。異業種から転職してきたからこその目線で、東中さんは独立支援に取り組んでいます。
(編集協力:三坂輝プロダクション)













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