農家の“困った”を解決するTAC、その全体像
JA金沢市のTAC組織は、本店所属の「専任TAC」3名と各アグリセンターの「兼任TAC」25名で構成されており、押田さんはその統括を担っています。専任TACの主な活動内容は、無料職業紹介、農福連携、法人活動支援、事業承継、記帳代行など多岐にわたり、JA管内の生産者から寄せられる悩みや相談に日々向き合っています。
「農家さんのお困りごとや悩みに対して、課題解決のアドバイザーとして具体的な解決策をコーディネートするのが私たちの仕事です。農家さんとJAがともに信頼関係を築いていけるような活動を目指しています」と押田さんは話します。
急拡大する担い手農家、追いつかない労働力
平成28年、JAの担い手支援室が立ち上がり、それ以来10年にわたって生産者の課題解決に携わってきた“TACのレジェンド”押田さん。最新特に多い相談は、農地の承継問題や農業経営についてだといいます。
「最近ですと、高齢化で農地を手放す方が増えています。そうなると、担い手や集落営農組織に受け皿になってもらうしかありません。先日、管内の担い手農家さんから受けた相談は、急激な面積拡大についてでした。30haから60haに増えたことで『業務が追い付かなくて、自分の労働時間がどんどん増える。どうしよう』という内容でした。一度に規模拡大をすると、田んぼ管理の省力化を進める必要がありますし、新たな農業機械の導入やスタッフの雇用も必要になります。地域の農地を守ってくれる担い手農家をサポートすべく、総合的な観点から、一緒に解決策を考えています」。
こうした規模拡大以外にも、事故で車いす生活になった方の農業現場復帰や、補助金に関する細かな相談などにも、きめ細やかに対応しています。

記帳から投資判断まで、経営の意思決定を支える
確定申告に必要な書類の記帳代行もサポートする押田さん。普段から管内の生産者を巡回し、個々の情報を収集しながらTAC活動を推進しています。記帳の相談を受けた生産者の経営状況は細部まで確認し、農機購入に関する投資判断までアドバイスしているといいます。
「例えばトラクターを買いたいという相談を受けた際には、収支を細かく見させてもらって、経営が厳しいと判断すると、『今年買うなら、もう少し面積増やしていかんとやっていけんよ』など、待ったをかけることも仕事です」。
人手不足を支える農福連携、現場で広がる活用の輪
幅広いサポート活動を行うTAC活動ですが、最近最も多い相談が、「労働力の支援」だといいます。
「人手の問題に関しては、『人を雇いたいけど、どうすれば雇用できるのか分からない』『募集しても人が来ない』といった相談が多いですね。当TACチームでは無料職業紹介所の窓口も担っていますし、農福連携のマッチングコーディネートも行っています。最近は農福連携に関する活動が特に多いかもしれません」。
障害者の農業分野での活躍を通じて、農業と福祉の連携により農業経営の発展や障害者の社会参画を実現する“農福連携”。TAC活動を始めた当初はマニュアルもなく、戸惑うことも多かったと押田さんは振り返ります。
「人を受け入れてほしいと農家さんにお願いしても、最初の頃はよく門前払いされていましたね(笑)。農福連携の経験があれば『想像しているよりも素晴らしい人だよ』といった形で、経験に基づいた助言ができたのですが、当初はうまく伝えられず苦労しました。そんな中、ある集落営農から『毎週月曜日に人手がほしい』という連絡がありました。地域にはサラリーマンが多く、頼める人が集まらないという悩みでした。そこで農福連携の人材を集めて紹介したところ、非常に評判が良く、口コミで広がっていきました。今では、ほとんどの集落の生産法人に利用していただいています」。

TACの取り組みが評価され、JA職員前で取り組み紹介をする押田さん
派遣する障害者と農家の間に入り、細かなサポートを行うことも重要な役割だと押田さんはいいます。時には農家に代わって、農作業を教えることも必要だそうです。
「農家が日常的に何気なく使っている言葉がありますよね。農家さんは『これ、剪定しておいて』と頼んで出かけてしまうことがありますが、剪定の意味が分からず作業が止まってしまうこともあります。そうした小さなトラブルや、作業中のけがなどが起きると、『話と違う』となって途中で辞めてしまうこともあるんです。そうしたことが起きないように、できるだけ作業を細分化して教えるようにしています。一度経験してもらえれば、2回目、3回目は一から教える必要もなくなり、自分が現場に行く必要もなくなります。逆に手が離れて、少し寂しさを感じることもあるくらいです(笑)」。
離農を防ぐ受け皿づくり、事業承継と法人化支援
農業就業者人口の減少が加速する中、石川県に限らず各地で事業承継は喫緊の課題となっています。その中でも特に話題になることが多いのが“第三者継承”だといいます。
「農家さんとの間で第三者継承の話をする機会は多いです。『離農したいが、子どもが継ぐ予定がない』という相談が非常に多いですね。第三者継承の話をすると、『そんな知らない人に任せるぐらいなら、もう畳んでしまうわ』となるケースが多いです。きちんと収益が出ている経営体は、ご家族が継いでいるケースが多いのですが、個人農家の場合は「後継者」について十分に考えられていないことも少なくありません。最近は物価高騰もあり、農機具や乾燥機が故障したタイミングが、辞め時になることも多いですね」。

個人農家が離農する際には、その受け皿となる地域の担い手や集落営農に働きかけ、農地がスムーズに移管できるよう“事業承継”をサポートしています。また、個人農家から『法人化するべきか?』という相談も多いといいます。
「面積が順調に増えていく見込みがあれば、法人化した方が良いと考えています。一方で、30haや40haでこれ以上の拡大が難しい場合は、個人農家のままでもよいのではないでしょうか。最終的には、人を雇用するかどうかの判断になります。雇用するのであれば、社会保険や福利厚生の整備が必要になるため、社労士や税理士にも相談しながら進めていく必要があります」。
法人化のメリット・デメリットを丁寧に説明し、それぞれの農家に合った組織形態を提案することが重要だと押田さん。生産者に寄り添いながら地域農業を支えるTACの取り組みは、今後ますます重要性を増していくでしょう。
(編集協力:ウイルパブリシティ 佐久間厚志)













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