買ってくれた理由は「長い付き合いだから」
下がっているとは予想していたが、半値に下げても売りにくくなっているとは思わなかった。25年秋にこの農家が卸会社に販売したときの価格は60キロ当たり3万円台半ば。相場を見て、卸会社が提示してきた価格だ。
いまや潮目は完全に変わりつつある。倉庫に残っていた25年産のコメを買ってくれる先を探したが、なかなか見つけることができない。半値まで下げても、首を縦に振らない卸会社がほとんどだという。
卸会社の側も、値切り交渉がしたくて半値での買い入れに二の足を踏んだわけではない。流通の各段階で在庫が積み上がっており、いくら値段を下げても売る自信を持てなくなっている。立場はこの農家と同じだ。
結局、2社が買い入れてくれたが、コメが足りなくてそうしたのではない。うち1社は「買ってもしょうがないけど、あなたとは長い付き合いだから買うよ」と言ってくれたという。長年の信頼関係が力になったのだ。
スーパーで5キロ3000円台半ばのコメを見ると、「まだ高い」と感じる消費者が多いかもしれない。だが水面下では確実に値崩れが始まっている。新米が出回り始めれば、店頭米価に本格的に反映してくると思われる。

米価が下がり始めた
値崩れ見越して早生で売り抜く動きも
この農家にインタビューしていたら、別の気になる動きも話題に上った。一部の農家が、収穫のタイミングが他より早い品種を例年と比べてたくさん作っているというのだ。「早生(わせ)」と呼ばれる品種だ。
狙いは明らかだろう。本格的に値崩れが始まる前に、早めに収穫してできるだけ売ってしまおうという作戦だ。
一農家の立場からすれば、合理的な行動かもしれない。だがそうした農家が多くなれば当然、ただでさえ過剰な在庫がさらに増える可能性がある。影響を受けるのは、例年通り作付けしている他の農家だ。
農林水産省によると、2026年産の生産量は733万トンになり、適正な生産量を22万トン上回る見通しという。転作作物とてんびんにかけ、なお主食用米をつくった方が有利との判断からだろう。
膨らみ続ける在庫が、米価下落の圧力を一段と強めることを多くの農家は知っている。それでも積極的に減産しようとの動きはあまり見られない。農水省が旗を振る需給調整の難しさを示しているといえそうだ。

収穫が進むと米価が下がる可能性が大きい
高まる「暴落」のリスク
農協関係者などに話を聞いていると、「いずれ米価が暴落する」と予想する声が前からあった。スーパーでは「暴落」というほどの値崩れは起きていないが、水面下ではこの2年の高値は過去のものになりつつある。

















