都内の野菜を市場に集めるプロジェクト
加藤さんは東京の吉祥寺と世田谷で「中野八百秀」を運営している。仕入れ先は東京都新宿区にある淀橋市場。1日の客数は両店を合わせて2000人に達する繁盛店だ。売り上げは年5億円を超えている。
意外に思われるかもしれないが、実はこれまで地元の野菜はあまり扱っていなかった。都内の野菜は市場流通に乗らず、農場の近くにある直売所やスーパーの地場野菜コーナーで売られているケースが多いからだ。
そんな状況に最近ちょっとした変化があった。淀橋市場を通して東京産を流通させる新たなルートが3月にできたのだ。対象になるのは、東京で昔から栽培されている江戸東京野菜を中心とした都内の青果物だ。
参加したのは淀橋市場の卸会社や東京都農業協同組合中央会(JA東京中央会)など。埼玉や東京の農産物を扱うコロット(埼玉県所沢市)が全体のコーディネート役を務めた。加藤さんもこの取り組みに加わった。

中野八百秀の吉祥寺本店(東京都武蔵野市吉祥寺)
「袋がスカスカ」の印象を心配
近くで育てられているのに仕入れにくいという課題の解消にとって、「面白い取り組み」と思ったのが参加の理由という。では実際に扱ってみてどう感じたのだろう。返ってきた答えはとても率直なものだった。
「この値段ではちょっと無理かなあ」。ある青果物についてそう感じたという。いつも市場で仕入れている同じ品目と比べ、価格が約3倍だったからだ。都内の農家が直売所に出す値段と同じ水準にした結果だった。
葉物野菜でも似たことを感じた。加藤さんが普段売っているものと比べ、袋に入っている量が3割程度少なかったからだ。「スカスカという印象を与えてしまわないだろうか」。そんな心配がつい頭に浮かんだ。
ニンジンやジャガイモなどを詰めたビニール袋がだぶつかず、ピタッとなるよう加藤さんが工夫しているのは前回述べた通りだ。「より多くの客に手に取ってもらうにはどうしたらいいかを常に考えている」と話す。

袋にきっちり詰めたジャガイモ
新しい客をつかむ売り方のヒント
加藤さんは東京産を市場に集めて流通させる今回のプロジェクトに意義があると思っている。野菜の品質に大きな課題を感じたわけでもない。軌道に乗せるには、売り方のひと工夫が必要だと考えているのだ。
都内の農家が日ごろ売っている直売所は畑の近くにあるので、鮮度のいい状態で売ることができる。遠くの産地から運ばれてくる野菜との違いだ。加藤さんはこれが都市農業の強みであることを理解している。
そのうえでこう話す。「袋詰めの仕方や詰める量を変えれば、直売所でもっと売れるようになるかもしれない。新しい客をつかめる可能性もある」。青果店の売り方の工夫を知ることはその一助になると強調する。
市場流通は全国の産地が激しく競い合っている。当然、値ごろ感があるかどうかが試される。一方で、市場関係者や青果店という「目利き」の評価にさらされることで、売り方を含めて「質」が向上する面もある。
直売所で売れているので、それで十分という考え方もあるだろう。だが販売を伸ばそうと思えば、いままでと違う売り方から刺激を受けることも大切ではないだろうか。それが加藤さんの率直な言葉の真意だ。

ボリューム感のあるミニトマトのパック
産地の課題「実力者」の野菜の品質
加藤さんは市場に集まる他産地の野菜を手放しで評価しているわけではない。とくに改善が必要と感じているのが、品質に難がある野菜を繰り返し出荷する生産者がいること。産地の信用にかかわる問題だ。

















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