売り上げは2店で年5億円超
「自分たちは野菜を右から左に流しているだけで、何も生み出していない」。加藤さんは自らのビジネスについてそう話す。消極的な言葉に聞こえるかもしれないが、強調したい点はその先にある。「だからしっかり見定めて仕入れ、きれいに店頭に出す」
成果は店を見ると一目瞭然だ。JR吉祥寺駅から歩いてすぐの場所にある本店に昼過ぎに取材に行くと、途切れることなく買い物客が訪れていた。加藤さんによると、それでもピークの時間帯ほどではないという。
吉祥寺と世田谷を合わせると、1日の客数が約2000人に達する繁盛店。周囲にはスーパーをはじめ多くのライバル店があるが、競り負けることなくリピーターをしっかりと確保している。売り上げは年5億円を超す。
競争の激しい食品販売の世界で、固定客をつかむのは思うほど簡単なことではない。加藤さんはどうやって経営を軌道に乗せたのだろうか。

東京・吉祥寺にある中野八百秀の本店
顧客層の違いへの気づきが転機
加藤さんは「いいものとは何かということを、ずっと考え続けている」と話す。祖父の代から青果店を営む家に生まれ、10年前に独立して吉祥寺に自分の店をオープンした。2年後に世田谷区に2号店を開いた。
消費者にとっていい野菜とは何か。たとえ値段が安くても、品質が良くなければ消費者は納得しない。一方いくらおいしい野菜でも、値段が2~3倍すると買う人は少ない。加藤さんはこの難題を追求し続けてきた。
10年前にオープンしたときいったん壁に当たった。父親の経営する店で勤めた経験があるので、ノウハウは持っているつもりだった。ところが同じように店を運営しているはずなのに、予想に反して客足が伸びなかった。
理由は客層の違いにあった。父親の店の客は飲食店が中心で、Lサイズのジャガイモやニンジンなど、大きめの野菜のニーズが多かった。これに対し、吉祥寺の客は一般の消費者が大半。同じ手法は通用しなかった。
客層が異なるのなら、売り方も変える必要がある。マーケットの違いに気づいたことで、来店客が途絶えない人気店への道が開いていった。

買い物客でにぎわう店内
小さいサイズで袋一杯
客の多くが消費者という立地を意識し、打った手はシンプルだった。小ぶりの野菜をたくさん袋に詰める。Lサイズのニンジン2本の代わりに、Sサイズを5本入れる。全体のグラム数は同じなのにこの方が売れた。
ここで重要なのは、ただ漫然とたくさん袋に詰めたのではないという点だ。例えばニンジンなら上下を互い違いに入れる。しかも小さめの袋を選ぶことで、ニンジンがぴたっと収まり、袋がだぶつかないようにする。
小さめのサイズが選ばれるのは、半分をカットして片方を残したりせず、食べきることができるからだろう。では袋にぴったり収まった野菜を好むのはなぜなのか。加藤さんは「中で横に広がるのが嫌だからだろう」と話す。
サイズの話と矛盾するようだが、手にとってボリューム感がある方が売れることがわかった。オクラは1袋100円ではなく、2袋198円で売り出したら販売が波に乗った。ゴーヤーやズッキーニも2本セットにした。
1つ1つは小さくて、しかも袋にたくさん入ったものが売れ筋になる。総菜ではなく、質の高い野菜を家庭で自ら調理するのを楽しむ層のニーズに応えた成果だ。加藤さんはこうして父親の店とは違うノウハウを確立した。
いずれも結果だけ聞くと当然と感じるかもしれないが、背景にあるのは消費者の微妙な心理。同じ人でもどの店に行くかで、消費行動が変わる。それをうまくつかめるかどうかが、小売店の業績を大きく左右する。

上下交互に袋に入れたニンジン
見た目と品質には関係がある
ここで加藤さんの冒頭の言葉に戻ろう。「しっかり見定めて仕入れ、きれいに店頭に出す」。












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