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抹茶ブームの先を読む 茶農家の14億円投資と生き残り戦略 【岩佐と紐解く戦略的農業#24】

岩佐大輝

ライター:

連載企画:岩佐と紐解く戦略農業

私、株式会社GRAの岩佐大輝(いわさ・ひろき)が、いま注目している農業経営者を突撃し、戦略を紐解いていく連載企画。今回は鹿児島県志布志市でお茶の生産・加工・販売までを手掛ける堀口製茶の堀口大輔(ほりぐち・だいすけ)さんに話を聞く。昨今高まる海外からの抹茶需要を、一過性の特需に終わらせない戦略とは。

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【プロフィール】

■堀口大輔さん

鹿児島堀口製茶有限会社代表取締役/株式会社和香園 代表取締役社長
1982年、鹿児島県志布志市生まれ。大学卒業後、伊藤園に入社。4年勤めた後に、堀口製茶の仕事に就き、現在に至る。300ヘクタールの茶園で栽培を手掛けるほか、深蒸し茶や煎茶、抹茶、ほうじ茶、和紅茶などを独自に加工・販売している。国内外からの受賞茶も多数。

■岩佐大輝さん

株式会社GRA代表取締役CEO
1977年、宮城県山元町生まれ。大学在学中に起業し、日本及び海外で複数の法人のトップを務める。2011年の東日本大震災後に、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。著書は『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)ほか。

抹茶ブームとお茶農家の現状

岩佐:今回は“お茶の巨人”とも言われる、堀口製茶に来ました。

堀口:堀口製茶は1948年に祖父が創業しました。私は3代目です。

岩佐:鹿児島県は近年、お茶の産地として勢いがありますね。お茶は世界的にも需要が高まっています。お茶農家は儲かっているのでしょうか?

堀口:短期的に見れば、鹿児島県は儲かっている農家のほうが多いのではないでしょうか。片や静岡県の栽培面積は、2025年は前年から1200ヘクタール減りましたし、全国的には儲かっていない農家も少なくないと思います。

岩佐:マーケット環境が良いのに面積が減っているとは、どういうことですか。

堀口:マーケットが良いのは、あくまで抹茶なんですよ。抹茶の原料である「てん茶」の生産量は全体の1割足らずです。昨年は抹茶によって、業界全体の需要が高まったことで、煎茶の価格も上がりました。けれども「これからも続けられるかどうか」は別の話だと思いますよ。

岩佐:一息つけても、今後は分からない。

堀口:これまでの財務状況などもありますから。その農家さんの「心が折れていないか」といった話になってきますよね。

暗黒時代に大型投資に踏み切る

岩佐:てん茶への設備投資には、どれくらいかかるものですか?

堀口:私たちが2017年に建てた、100ヘクタール分の栽培量に対応できる工場は約14億円でした。現在同じものを建てるとしたら倍近くかかるかもしれませんね。

岩佐:2017年ということは、堀口製茶はブームが来るよりも前に「てん茶の工場を建てる」という意志決定をしたのですね。

堀口:2代目である私の父の決定ですね。

岩佐:暗黒時代に需要も分からない中、大きな投資に踏み切ったお父様の嗅覚がすごいですね。

堀口:取引先から「抹茶をやろうか」という話があってのことでしたが、「そこまで一気にやるとは思わなかった」とは言われていました。堀口製茶の事業を拡大させたのは父です。堀口製茶には、生産を行う鹿児島堀口製茶と販売を行う和香園の2社があり、これも父が1989年に起ち上げたものです。ペットボトル用以外のお茶が苦境にあった中でも、事業を拡大させるための判断でした。2006年には200ヘクタール分に対応できる煎茶の工場も建てています。

店舗でのヒアリングを丁寧に


岩佐:現在の販路を教えてもらえますか。

堀口:鹿児島堀口製茶は300ヘクタールの茶園があり、約50年の付き合いがある伊藤園や他社との取り引きの他、自分たちの和香園で販売を行っています。今は、海外にも販路を広げるフェーズだと考え、海外の店舗を持つ準備をしています。

岩佐:では今、1番力を入れているビジネスは?

堀口:販売で言えば、輸出ですね。抹茶以外のお茶の価値も上げていかないと、日本のお茶産業は縮小し続けてしまう。うちの「あらびき茶」は日本茶の需要を全体的に高めるきっかけになると思っています。

岩佐:私もいただきましたが、抹茶とはまた違う。

堀口:数値上は成分も味も抹茶と変わりませんが、お茶好きな人は「あらびき茶は、抹茶ではなく緑茶の味だね」と言います。シンプルに言うと粉末緑茶です。粒度を調整していて、湯や水と一緒に振るだけで混ざるんですよ。ささっと作れる。あらびき茶は「粗いお茶」ではなく、「新たに挽いた(創出した)お茶」という意味です。

岩佐:歩み寄りが大事ですよね。

堀口:今は店舗運営についても、業務改善を行っています。店舗は赤字ですし、今まではお客様に自分たちを知ったもらうことをやれていなかったという“自信”があるので。

岩佐:“自信”があるんですね(笑)。

堀口:今は一生懸命やれることをやっています。それでも一気には変わらないので、ちゃんとコツコツと丁寧にヒアリングしていますね。

岩佐:BtoCブランドの良さですね。多少、赤字が出たとしても、お客様の声を聞くための投資的な面では、BtoCで売るのは農家として良いですよね。

テロワールの世界観を作る

堀口:最近、フランスのブルゴーニュに行ってきたんですよ。ワインの世界だと、グランクリュ(特級畑)、プルミエクリュ(1級畑)ってありますよね。「土壌条件が素晴らしいから良いものができる」という考え方があります。お茶も同じように、生産する畑で商品が選ばれるようなやり方ができるのではないかと考えています。さらに製造の仕方や、オーガニック認証や循環型農業といったものを加点していくとか。

岩佐:いいですね。志布志市にそのモデルができる日も近いかもしれないですね。

堀口:お茶は日本が世界で戦えるアイテムになっていますし、国・県・市が力を入れる志布志港から輸出すれば、産地も近く物流費が抑えられる。鹿児島県は畜産も盛んですから、たい肥の利用による循環もできる。気候と土壌と人といった、テロワールの世界観になってきますよね。

岩佐:鹿児島県はテロワールの世界観を作るのに向いていますね。素晴らしい場所です。

まとめ

岩佐:堀口製茶のすごいポイントを3つ、振り返りたいと思います。

堀口製茶の農業戦略のポイント
見向きもされないポイントに投資する“先見の明” 抹茶のマーケットが小さい時期に、てん茶の加工場を建てた。この大型投資が、今日のブームの中で功を奏している。
現代のマーケットに歩み寄る発想 現代社会の忙しく時間のない人に歩み寄り、簡便に飲める「あらびき茶」を開発した。BtoCの販売店でのお客様との接点も、マーケットインの発想に一役買っている。
鹿児島の風土を生かしたテロワール農業 お茶を嗜好品の枠に留めるのではなく、土地に紐づけたテロワールという概念から、そのポジションを昇華させていく気概を持って活動している。

 

岩佐:以上、3つが堀口製茶のポイントでした。ぜひ皆さん参考にしてみてください。

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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