公式SNS

マイナビ農業TOP > 生産技術 > 毎日の水やりから解放される!? 夏場の乾燥対策4つのポイント

毎日の水やりから解放される!? 夏場の乾燥対策4つのポイント

毎日の水やりから解放される!? 夏場の乾燥対策4つのポイント

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。近年、梅雨明けの高温による畑の乾燥がかなり進み、作物の生育にも大きな影響が出てきています。鹿児島にあるうちの畑はシラス台地の上にあって、ただでさえ乾燥が進みやすい土地であることにくわえ、灌漑(かんがい)設備も整っていないため、水やりもしにくい環境にあります。でも自然界の植物たちは水やりしなくても雨水だけで元気に育っていますよね。そこで僕は自然界で行われているような乾燥対策の仕組みを畑づくりに生かすことによって、夏場であってもほぼ水やりなしで夏野菜を育てられるようにしています。今回は、僕が自分の畑で実践している4つの乾燥対策についてお話しします。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

対策1:土を裸にしない

マルチングの重要性
まず1つ目の乾燥対策は、土の表面を覆う「マルチング」です。土が裸になっていると、表面の水分がどんどん蒸発していき、地表面の温度がかなり上がってしまいます。その結果、乾燥だけでなく、地温が上がりすぎることによる生育障害も同時に起きます。

一般的にマルチングというとビニールマルチがメインですが、僕がおすすめしたいのは有機物マルチです。春の段階で枯れ草や稲わらなどを徹底的に敷くことで、いくつかのメリットが得られます。まず雑草を抑制しながら保湿もできること。次に、時間とともに分解されて土の養分になり、土づくりにもなること。そして長期的に見て、土の保水力向上につながること。後ほど詳しく解説しますが、微生物が生きやすい環境を作ることも、乾燥対策に大きく関わっています。

また、最近注目されているリビングマルチという手法もあります。緑肥麦などを畝間や株間に種まきして、生きたまま育てます。生えている間は地表面を覆うことで乾燥や地温の上昇を防いでくれ、ある程度育ったら刈り倒してそのまま敷きわら代わりに使います。あるいは葉の部分をただ押し倒すだけでもOKです。刈り取ってからマルチングするよりも、生きたままの状態でマルチングした方が、乾燥防止・地温抑制の効果が高いとされています。

対策2:生きた植物を増やす

多様な植物による保湿効果
2つ目の対策は、畑の中の生きた植物の量を増やすということです。うちの畑では野菜だけでなく、野菜の生育に支障をきたさない場所であれば雑草をそのまま生やしておいたり、果樹を植えたりして、その土地における植物の量をかなり増やしています。

その理由のひとつが、朝露です。夜間、植物の葉の表面は放射冷却によって冷えていきます。放射冷却とは、夜間に地表や植物が熱を大気に放出して冷える現象のことです。葉の表面温度が空気中の露点温度を下回ると、空気中の水分が凝結して水滴になります。その土地に生きた植物がたくさんあればあるほど、この空気中の水分を集められるようになるため、雨が降らなくても水分をその土地にとどめることができるのです。

さらにもうひとつ、植物たちは水分を集めるだけではなく、逆に蒸散によってもその土地の湿度を上げています。植物が生えている周辺の空気の湿度が上がると、土壌表面からの水分蒸発が抑制されます。僕の畑では、あえて雑草も緑肥も果樹もひっくるめて多様な植物が混在する環境を作ることで、その土地の湿度が安定するようにしています。

対策3:土を耕さない

不耕起栽培ミニトマト、バジルなど

不耕起で栽培しているミニトマト、バジル、落花生など

近年アメリカでも注目されてきていますが、不耕起栽培は土壌水分を保ちやすいということが科学的な根拠や実証データをもって報告されています。不耕起にすることで、土壌生物の巣穴や古い根が朽ちてできた隙間(すきま)、微生物による土壌の団粒構造が破壊されずに維持されます。団粒構造とは、土の粒が小さな塊をなした状態で、粒と粒の間に無数の隙間ができている構造のことです。この隙間が降った雨を表面に流さず、スポンジのように地中深くまで浸透させて蓄えてくれます。

さらに、耕さないことで土中の菌根菌のネットワークが守られることも、乾燥対策に大きく関わっています。菌根菌は植物の根と共生する菌で、目に見えない細い菌糸を土中に張り巡らせます。この菌糸のネットワークは、根だけでは到底届かない物理的に離れた場所からでも水分を吸い上げ、植物に届ける役割を果たしています。

実際に、2022年のある海外の研究では、離れた場所の水分に菌根菌がアクセスできた植物は、菌根菌が遮断された植物に比べて、ほぼ2倍もの蒸散量を示したそうです。さらに同研究では、植物が蒸散する水分の約34.6%が、この菌根菌のネットワークを通じて離れた場所から運ばれてきたものであると推定されています。

つまり、菌根菌のネットワークが土の中に保たれていると、植物の水分へのアクセス範囲が劇的に広がり、結果として乾燥に非常に強い状態を作ることができるということです。

この菌根菌のネットワークは、主に土壌の表層から20センチ付近に最も多いとされています。完全に耕さないのが難しい場合でも、耕す深さを表層10センチ程度にとどめておくだけで、この菌根菌の恩恵を受けることができると思います。

対策4:水やりをせずに育てる

水やりなしで根を伸ばす

特に野菜が小さい段階では極力水やりなしで育てる

最後にとても重要なポイントとして、特に生育の初期段階には極力水やりをしないということがあります。うちでは苗の植え付け時を除いて、極力水やりをしないようにしています。頻繁に水やりをしてしまうと野菜が根を表層付近にしか張らなくなるため、夏場の乾燥に耐えられない軟弱な野菜になってしまいます。春の初期生育の段階に水やりしないことで、生育が少し緩やかにはなりますが、その分春の間に十分に根が発達します。そうすると夏に乾燥が続いても地中深くから水分を吸収できるため、枯れにくくなるのです。春の段階で甘やかさず鍛えておくことが、夏野菜の成長に深くつながっていきます。ただし、夏場で高温乾燥が続いて、明らかに植物が弱ってきている場合は水やりが必要なときもありますので、その際はたっぷりと水をかけてあげてください。

自然が持つ本来の力を引き出そう

今回紹介した4つの乾燥対策は、どれも「水を外から補う」のではなく、土・植物・微生物が持っている力を引き出すアプローチです。マルチングで蒸発を防ぎ、生きた植物で水分を集め、不耕起で土壌構造と菌根菌ネットワークを守り、春に根を深く育てる。この仕組みを畑の中に作ることが、水なし畑の乾燥対策の本質だと思っています。自然の力を生かすことで、より楽でより豊かな畑ライフを送る参考になれば幸いです。

読者の声を投稿する

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

新着記事

タイアップ企画