モグラってどんな生き物?

日本の畑によく出るのはアズマモグラとコウベモグラの2種類で、どちらも体重は約100グラムほどの小さな生き物です。アズマモグラは北海道をのぞく東日本に、コウベモグラは沖縄をのぞく西日本に広く分布しています。
モグラの暮らしの中心になるのが、地下に張り巡らされたトンネルです。これは単なる穴ではなく、本道と支道と巣が組み合わさった精巧な地下住居です。本道はいつも使う主な通り道、支道は餌を探すための枝道、そして奥には眠るための巣があります。1匹のモグラが管理するトンネルの全長は70〜300メートルにもなるとも記録されています。
また、モグラは春に繁殖期を迎えます。5~7月頃に出産し、生まれた子は約1カ月ほどで親から追い出されると考えられています。独り立ちした子モグラは新しい縄張りを求めて移動します。春から秋にかけて畑への被害が増えやすいのは、行き場を探している若いモグラが新しい場所に入り込むためと考えられています。
モグラによる畑への被害

モグラが地表近くを掘り進んだ様子。どこを通ったかよくわかる
モグラが畑で引き起こす具体的な被害についても再確認しておきます。まず多いのが、苗の活着不良と乾燥です。地表近くをトンネルが走ることで、作物の根が空洞の上に浮いた状態になってしまいます。根が土とうまく接触できず、定植したばかりの苗がぐらついたり、水分を吸えずにしおれてしまったりすることがあります。特に梅雨明けの乾燥しやすい時期と重なると、ダメージが大きくなりがちです。
次に、種まきへの影響があります。モグラが地表付近を掘り返すことで土が動き、まいたばかりの種の位置がずれてしまったり、発芽に必要な土との密着が崩れたりすることがあります。特に細かい種をまいた直後に荒らされると、発芽率がぐっと落ちてしまいます。
そしてネズミによる2次被害も見逃せません。モグラのトンネルにネズミがすみ着いたことがあります。モグラは肉食なので野菜は食べませんが、ネズミは植物食なので、サツマイモやニンジンなどをかじってしまいます。「モグラにやられた」と思っていたのが実はネズミだったというケースはかなり多く、被害の原因を正しく把握するためにも、モグラの被害とネズミの被害をきちんと区別しておくことが大切です。
モグラは捕まえてはいけない?
モグラは鳥獣保護管理法によって保護されており、通常はむやみに捕獲できません。ただし農業や林業に関わる被害を防止する目的に限り、許可なく随時捕獲できるという例外が認められています(鳥獣保護管理法第13条)。
ただしこの例外はあくまで「農業または林業の事業活動に伴う被害防止」が目的の場合に限られ、趣味の家庭菜園や庭先は適用外です。詳しくは地元の自治体の担当窓口に確認してください。
対策はいろいろ試してみたものの……

こうした被害に対して、僕も今までいろいろな対策を試してきました。今までで一番効果があったかなと思うのはペットボトルで作った風車です。これは風車が回ることで支柱を通じた振動で地中のモグラを嫌がらせる方法です。本道に刺すと効果が出やすいとされていますが、モグラが振動に慣れてしまうため、数日おきに場所を変える必要があります。
本道の見極め方は、トンネルを足で踏んで潰し、翌日修復されていれば本道、そのままであれば支道です。
他にもわなを設置したり、穴に割り箸を刺したり、木酢液をかけたり、モグラ対策グッズとして売られていた音が出る棒を刺したりなどいろいろしましたが、効果は一時的なものが多く、今ではもうほとんど対策はやっていません。
対策をしないとどんどん増えそうなものですが、実はそうでもないようです。モグラは縄張り意識が非常に強く、1つの縄張りにすめるのは基本的に1匹だけです。縄張りの中で別のモグラと出会うと、どちらかが逃げるか死ぬまで争うとも言われています。そのため、放っておいても数が際限なく増えるということはなく、家庭菜園レベルの畑の縄張りに定着できるのは常に1匹だけ。追い払っても縄張りが空いて次の個体が入ってくる、という皮肉な結果になることもあり、いっそ1匹に居ついてもらう方が他のモグラが入り込みにくい状況を作れるとも言えます。
モグラがいることによるメリット

モグラのトンネル。地下10~30センチくらいのところを掘ることが多い
モグラが畑にいるメリットも実はあります。まずモグラは、土壌害虫を積極的に食べてくれています。コガネムシの幼虫やネキリムシは根を食い荒らす深刻な害虫ですが、モグラが地中を巡回しながらこれらを捕食してくれています。
次に、モグラのトンネルが土壌に空気の通り道を作るという役割があります。空気の通り道ができると、酸素を好む好気性菌と呼ばれる微生物が活性化しやすくなるとも言われています。こうした菌が増えると、酸素が苦手な嫌気性の病原菌がすみにくい環境になる傾向があるようです。土壌が硬い畑においてもモグラ穴の周辺だけは、土壌の団粒化が進んでいることも多く、確実に土壌環境を良くしてくれていると感じています。モグラが多くいるということは、そのエサとなるミミズなどの虫も多くいるということですから、ある程度土壌が良くなっていく過程において、モグラがいることは仕方のないことだと考えています。
モグラ塚の土を活用しよう

そしてもう一つ、活用してほしいのがモグラ塚の土です。モグラ塚とは、モグラがトンネルを掘った際に地表に押し出された土の山のことです。一見すると厄介者ですが、この土には面白い性質があります。地下から掘り起こされた土なので、表層にたまりがちな雑草の種がほとんど混じっていません。また、掘り返されることで細かくほぐれ、まるでふるいにかけた後のように通気性の高いサラサラでフカフカとした状態になっています。
こういった特徴からモグラ塚の土を見つけたらバケツなどに集めておき、腐葉土などと混ぜて育苗用の培土として使用するという使い道もあるようです。ぜひ皆さんもモグラ塚を見つけたら土を集めておいてください。
モグラとの共同生活を楽しむ
モグラがいることによって野菜がうまく育たないと、もちろん残念な気持ちになることもありますが、これは家庭菜園をする上では仕方のない部分もあるのかなと思います。
畑にいる生き物を全部排除しようとするより、それぞれの役割を知った上でうまく関わっていく方が、長い目で見て楽で豊かな畑作りにつながっていくのではないでしょうか。ぜひモグラとの畑での共同生活を楽しんでもらいたいです。


















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