【剪定の基本】「切り戻し」と「切り返し」、何がどう違うのか?

図1 切り戻し剪定と切り返し剪定の違い
| 剪定の種類 | 切る場所 | 主な目的と注意点 |
| 切り戻し剪定 | 枝の基部 | ・不要枝を抜く ・混み合いを減らす ・ブランチカラーを傷つけず、枝元で丁寧に切ること |
| 切り返し剪定 | 一年生枝の途中 | ・芽を動かす ・枝の向きを作る ・太い枝には向かない |
剪定にはいくつかの種類があるが、まず理解しておきたいのが「切り戻し剪定」と「切り返し剪定」の違いである。図1のイメージは、同じ枝を切り「戻し」剪定だけで切った場合と、切り「返し」剪定のみで切った場合のその後の様子を示している。
図1から分かるように、切り戻し剪定とは、枝をその基部から切る剪定である。枝の付け根や分枝部分まで戻って切るので、切り戻し剪定と呼ぶが、枝の年齢に関係なく切れる。前回の「科学的に正しい切り方応用編」でも切り方の解説をしたが、こちらも切り戻し剪定である。

図2 太い枝で切り戻し剪定をするときの丁寧な手順
枝元から切り取る剪定であり、場合によっては間引き剪定と呼ばれることもあるが、混み合った枝や内向きに伸びる枝、下垂枝、古くなった枝、樹形を乱す枝などを、枝の根元から取り除く場合がこれにあたる。
一方、切り返し剪定は、新梢の途中で切る剪定である。枝の分枝部分まで戻さずに途中で切ってしまう剪定方法であるため、基本的には、若くて1年生程度の枝に行われる切り方だ。こちらの剪定は、枝数を逆に増やす目的で使われることが多い。つまり、枝の先端を切ることで、切り口付近の芽を動かし、枝葉を増やしたり、枝の伸びる向きを調整したりする目的で行う。
ここで重要なのは、二年生以上の太い枝は、途中でぶつ切りにすることはない。ある程度の太さの枝を途中で切ると、切り口がふさがりにくく、そこから腐り込みやすい。また、切り口付近から強い徒長枝が発生し、かえって管理しにくい木になることも多いため、切り返し剪定は若い状態の枝で行われる切り方である。
実例1:アテモヤの「夏剪定」ではなぜ切り返しが必要なのか

図3 アテモヤの夏剪定:切り返し剪定で枝を短縮した直後の様子
下記記事にて紹介したアテモヤは、春と夏の2回剪定をするが、春には樹形を整えるため、切り戻し剪定が多くなされる。一方、夏剪定は花をつかせるための枝を伸ばす必要があるため、切り返し剪定が多くなされる。
アテモヤは、今年伸びた枝に花が咲きやすいという特徴があるため、切り返し剪定を行って新梢を発生させるのだ。もちろん、夏剪定でも樹冠内部が混み合っている場合は、枝の間引きが必要なことがあるため、切り戻し剪定で不要な枝を落とすこともある。
また、若木のうちは、切り返し剪定を積極的に行うこともある。枝を増やしたり、全体的に広がったような骨格枝を作るために、切り返す。図4は、若木アテモヤの例であるが、植え付けから約1年経過したのち、しっかりと根が張ったことを確認して、各枝を切り返した。

図4 若木アテモヤの樹形作りのための切り返し剪定

図5 剪定から約2週間後に新芽がかなり吹いてくる

図6 図5の枝を近くで!切り返し剪定による効果
他にも、グァバなどのように、その年に伸びた枝に花がつきやすい特徴のある果樹では、頻繁に切り返し剪定がなされる。

図7 グァバも切り返し剪定で開花が促進される
実例2:アボカドの切り戻しと切り返しを活用して低木にする

図8 アボカドの低木仕立ての剪定前と剪定後
ハウスでアボカドなどを育てる時に、問題になるのは樹高の高さだ。アボカドは剪定せずに放っておくと、すぐに2~3mという高さになってしまい、そのように高くなった木は、樹冠内部に光が入りにくく、内側の枝が枯れ枝になってしまう。
そこで、筆者は、若木の頃から高頻度な切り返し剪定と、切り戻し剪定による骨格枝作りをしてアボカドの超低木樹形を作っている。もちろん、木を低くすると、枝葉の数も少なくなり、果実収量もその分影響して小さくなるのだが、ハウス内では、木を大きくすると管理が難しくなり、病害虫の発生なども起こるため、低く管理のしやすい樹形にしている。木を低くして、適度に切り返し剪定により枝葉を増やしているので、ある程度果実も支えられるように工夫している。

図9 適度に切り返し剪定を行って枝葉の数を増やす

図10 胸よりも高い位置の枝は途中から切らず切り戻す

図11 図10を切ったところ。分枝部分の上で切り戻し剪定

図12 地面につくような枝も分枝部分まで戻って切り戻し剪定

図13 木の下側と内側はなるべく空けて、風通しをよく、さらに適度に陽の光を入れてあげる
これは、アボカドによらず全ての樹種で共通する切り方であるが、目指す樹形を決めて、それに対して不要になる枝はきちんと付け根まで戻って切り戻す。また、新しい枝を発生させたい時には、芽の位置を確認して切り返す。この二つの切り方を丁寧に守って木を切っていくと、かなり健康的な木になると考える。
切り返し剪定も切り戻し剪定っぽく切ると、枯れ込みが減る

図14 切り返し剪定も切り戻しっぽく切る
切り返し剪定は、一年生枝の途中で切る剪定である。それによって剪定した周囲の芽を刺激して、枝数を増やす方法である。しかし「途中で切る」といっても、枝を適当な位置でぶつ切りにせずに、切り戻し剪定のように余分な枝の半端を残さずに切ることで、無駄な枯れ込みを最小限にすることができる。
つまり、切り返しで途中から剪定するとなっても、結局のところ、芽の位置からしか新しい枝は出てこないため、切ったあとの枝がどのように伸びるかを考えながら、残す芽のすぐ上で丁寧に切ることが大切なのである。

図15 カルスも巻き、枯れ込みにくい枝になる
そうすると、切り戻し剪定のように、しっかりとカルスが巻き傷口も塞がりやすくなる。図15は、できるだけ切り戻し剪定っぽく切った切り返し剪定の例である。こちらは、もともとある枝を削ったわけではなく、切り返し剪定をした後、新しい枝が3本伸びてきた後の状態である。綺麗にカルスができ、傷跡も消えている。
切り戻し剪定では、枝の分岐部や枝の付け根で切るため、切り口の周辺に養水分の流れがあり、カルスが形成されやすく、傷口がふさがりやすい。一方で、枝の途中を何も考えずに切ると、切り口の先端側に水分や養分を引き上げる組織がなくなり、切り口付近が枯れ込みやすくなる。
特に、芽から離れた位置で切ると、切り口から芽までの短い枝先が残る。この部分は、その後に使われる予定のない部分だ。結果として、切り口付近から枯れ込みが進み、場合によっては残した芽の近くまで枯れ込んでしまうことがある。
そのため、切り返し剪定では、残したい芽の少し上で切るのが基本である。芽に近すぎると芽を傷める可能性があるが、離しすぎると枯れ込みやすい枝先が残ってしまう。目安としては、残す芽のすぐ上を、芽を傷つけない程度に少し余裕をもって切るとよい。
また、切り口の角度も重要である。筆者の場合は、図14のように、水平に切るのではなく、芽の位置に合わせてわずかに斜めに切っている。そうすると、図15のように傷口が綺麗に修復される。ただし、極端に斜めに切りすぎると切り口の面積が大きくなるため、必要以上に長い斜め切りにする必要はない。切り返し剪定では「どの芽を生かすか」を決めたうえで、その芽に養水分の流れがつながるように意識して切っている。
切り返し剪定では「どの芽を残すか」が重要

図16 外芽と内芽の上で切ったときの違い
切り返し剪定では、どの芽の位置で切るのかが重要になる。特に、開心型樹形の低木仕立てを目指した場合、この芽の位置を把握すると、かなり育てやすい枝を作ることができる。枝は、基本的に残した芽の方向へ伸びていく。そのため、外側に枝を広げたい場合は外芽を残し、内側に枝を伸ばしたくない場合は内芽を避ける。
果樹では、樹冠の内側に向かって伸びる枝が増えると、木の内部が混み合いやすくなる。内部が混み合うと、光が入りにくくなり、風通しも悪くなる。その結果、内側の枝が枯れたり、病害虫が発生しやすくなったり、収穫や管理がしにくい木になってしまう。このため、低い姿勢を目指した若木の樹形作りでは、外側に向いている芽を残して切り返すことが多い。外芽の上で切ることで、次に伸びる枝を外側へ誘導し、木全体を広げながら形を作ることができる。
一方で、内芽(上向きの芽)を残すと、徒長枝と呼ばれる勢いが強い枝になりやすい。徒長枝は栄養成長が強く、花芽がつきにくい場合も多い。そのため、樹高を低く抑えたい場合や、枝を横に広げたい場合は、内芽ばかりを残さないように注意したい。ただ、樹勢がかなり弱っている場合や、一時的に樹勢を回復させたい場合など、特定の目的があれば、内芽を残して強い枝を発生させることもある。切り返し剪定は、芽の位置によって樹勢をコントロールできるので、ぜひ木をたくさん切りながら、その後の観察などをしていただきたい。
まとめ
剪定というのは、枝を切る作業というよりは、残す枝や芽を選ぶ作業であると考えている。切ったあとに木がどのように反応するのかをイメージしながら、必要な枝を選んで、必要な枝葉を作っていく。一つひとつの剪定には、きちんと狙いがあるべきで、切ったあとの全体の樹形のイメージを持ちながら枝を切っていく。
切り戻し剪定と切り返し剪定それぞれに目的を持ち、きちんと使い分けられるようになると、剪定がより一層楽しくなる上、木も健康的になっていくはずだ。読者のみなさんの果樹が、剪定によってより健やかに、育てやすい木になっていくことを願っている。

















