「成績表」としてデータを可視化
2026年6月に完成したスマートライスセンターは、時間あたり20トンもの籾を受け入れることができ、実に315ヘクタール分の面積をカバーする処理能力を誇る。これだけでも十分驚異的な数字だが、特筆すべきは、通信機能とデータ収集にある。
荷受けした籾を乾燥調製する際に異常が発生すれば、担当責任者の携帯電話へ即座に通知されるだけでなく、色彩選別機にかける前の状態で、病虫害やヤケ、青米、乳白といった各被害粒の混入度合いを自動で収集・集計できる。同時に、玄米ベースの収量や選別機の網下、中米、色彩選別機の不良品の比率による評価も確認できる。

データ取りできる選別機
こうして得られた品位データは、デジタル化された地図上の圃場へリアルタイムに反映され、それぞれの圃場ごとに「成績表」として可視化される仕組みだ。株式会社サタケが提供する情報サービス「KOMECT」を基盤としたこのシステムにより、搬入した生産者は自分の田んぼの出来、不出来を客観的に把握し、次年度の肥培管理へ的確にフィードバックできるようになっている。

サタケの光選別機SAXES
これらのデータは籾摺りした玄米でもサンプリングできる。充実歩合や被害粒、乳白、未熟粒購入度合いなどのさまざまな品位データが計測され、フレコンごとにそのデータが添付される。一般的な玄米検査では検査官が目視で検査するが、ここでは人間の目視による等級判別ではなく、機械判別で品位をデータで判別するため、従来の人間による刺し検査に比べて大幅に省力化され、ロットごとのデータを一元化出来るようになっている。
300㏊をワンロットと捉えるスケール戦略
田仲さんがこのライスセンター建設のために5億円もの投資を決断した背景には、2022年に策定した「ライスフレンズ計画」がある。将来的にグループ全体で1000ヘクタール規模の稲作を目指すという壮大なビジョンだが、田仲社長は「単に農地を集めればいいわけではない」と断言する。「社員1人当たり30ヘクタールを超えると管理が難しくなる。それだけの面積を管理するには、組織づくりや人材育成が必要 」と考えているからだ。

田仲利彰さん
そこで同社は、300ヘクタールをワンロットと捉え、それを管理職を含む10名のチームで動かす組織戦略を構築した。この成長を支えるのが、休日120日をはじめとする他産業並みの手厚い雇用制度だ。現在14名の社員が在籍する同社において、直近10年間の離職者はゼロ。社員を「自分にしかできない高付加価値業務」に集中させ、草刈りなどの汎用作業は外部へ委託している。
農地の拡大に目を向けると、同社は自社所在地から4キロメートル四方の農地であれば、条件の悪い小区画や変形田であっても耕作委託を「絶対に断らない」という方針を20年間貫いてきた。長期的には周辺農地がつながり、効率的な集積につながると考えているからだ。 これにより、耕作面積は20年で10倍の124ヘクタールへと拡大した。
作付品種は、作付け時期の順からあきたこまち、ちほみのり、ひとめぼれ、つきあかり、コシヒカリ、にじのきらめき、ほしじるしで、すべてうるち米である。田植えは4月10日からはじまり5月末には終える。収穫作業は早いものでは8月5日から始まり、10月第一週ごろまで続く。
フレコンごとに品質をデータ化。生産者へ「次の一手」をフィードバック
ライスセンターの建設にあたって重視したのは、「安全性」「清潔性」「掃除しやすさ」の3点である。高所作業の多い乾燥機周辺には手すりや階段を設置して転落防止を徹底。異物が紛れ込まないように籾の搬出もパイプで別楝へ運び込まれるようになっている。

手すりが付けられた籾タンク
施設は1日最大で6ヘクタール分の生籾を処理できる能力がある。50日の稼働で約300ヘクタール分を処理できる計算だ。各種設備の工程と能力は以下の通り。
| ①荷受ホッパ(20t/時間)
②遠赤外線式乾燥機(9t容量籾×6基・簡易粗選付き) ③乾燥タンク(8.8t容量×6基) ④籾タンク(8.8t容量×2基)・籾粗選機(3.4t/時間×2基) ⑤6インチ籾摺り機(2.7t玄米×2基) ⑥縦型粒選別機(2.7t玄米×2基)・石抜機(1.4t玄米×4基) ⑦フルカラー色彩選別機(2.7t/時間玄米×2基) ⑧フレコン計量ユニット(2基)・中米タンク(3t玄米×2基) |
前述の通り、籾摺りされた玄米は色彩選別機にかけられる前にカメラで品質画像データが取得されるほか、1トンのフレコンごとに穀粒判別器で1袋ずつ画像判別し、そのデータを出力する。
こうして蓄積された乾燥工程データや機械鑑定の指標データを生産者にデータをフィードバックすることで、次の作付に向けた対策助言で品質・歩留まり向上を狙える。
販売の面でも恩恵がある。機械判別でロットごとの玄米データを取得し、精米工程までの追跡を可能にすることで、外食企業や量販店からの厳しい監査要求にも即座に対応できる。さらに、これらのデータをQRコード化して添付することで、輸出時における確かな品質の担保と「日本米」であることの証明を同時に実現できる。
田仲さんは、このスマートライスセンターがもたらす未来と品質分析・改善指導の重要性について 、粋な比喩で締めくくってくれた。
「農家が田んぼで行う作業は試験の解答を書く行為であり、ライスセンターは採点する場所である」。これまでの農業が抱えていた「経験と勘」という曖昧な解答に、客観的かつ純然たる事実としてデータを突きつける。この場所から、日本の稲作の次のステージが始まろうとしている。

















