「違法わな」ってどんなもの?

千葉県君津市で発見された違法わな。直径が20cmを超えており、締め付け防止金具もなし。標識も掲げられていなかった(写真提供:君津市農政課)
違法わなとは、その名の通り「法に則った条件を満たしていないわな」。そもそも、狩猟に使うわなは法で定められた種類・仕様の「法定猟具」だけが許可されていますが、その規定が守られていないもののことを言います。
ここでは、特に違法のものが多く発見されている「くくりわな」について、どのような規定があるのか、そしてそれが守られていないとどのような危険があるのかを見ていきましょう。
輪の直径が12cmを超えてはいけない

まずはくくりわなの直径について。輪の直径が12cmを超えるものは原則として許可されていません(※)。
実際にわなを仕掛ける際は踏板にワイヤーを巻き付けて設置するため、事実上、踏板の直径が12cm以下ということになります。ちなみに、「弁当箱」と呼ばれる長方形や、上の写真のような楕円形のわなの場合は、「短い辺」が12cm以内です。
守られていないとどうなるのか?
踏板の直径が大きいと、わなに掛かる対象範囲も広がります。クマなどのわなで捕獲してはいけない動物や本来の狙いと違う生き物が掛かってしまったりするほか、人が誤ってわなに掛かる可能性もあるため、とても危険です。
※緩和されている地域もあり、千葉県は15cm以内
「締め付け防止金具」を付けなくてはいけない

次に規定されているのが締め付け防止金具の装着です。上の写真の赤丸の中にあるものがそうで、ワイヤーが締まった時にここで止まるようになっています。
こちらも錯誤捕獲の防止と、狙い通りの獲物が掛かった場合でも、ワイヤーが締まりすぎることによる脚切れ防止のためもあります。
守られていないとどうなるのか?
これがない場合、ギリギリまでワイヤーが締まってしまうのでイノシシや大きなシカは脚を切って逃げることがあります。わなに掛かったイノシシは人が近付くと突進してくるのですが、勢いで脚が切れて突っ込まれ、大ケガをしたというハンターも少なくありません。
他にも、ペットの犬や猫が掛かってしまった場合は脚の欠損という大ケガになることもありますし、野生動物が掛かっている時にたまたま通りがかった人にケガをさせる可能性もあります。
シカやイノシシを対象とする場合は「よりもどし」が必須

もう一つ、狩猟対象をシカやイノシシにする場合は「よりもどし」というパーツが必須です。
上の写真に写っている、ワイヤー同士をつないでいる部分のことで、中央がくるくる回るため、シカやイノシシが掛かって暴れまわった時にねじれや絡みを防止します。
守られていないとどうなるのか?
ねじれや絡みによる金属疲労でワイヤーが切れる可能性がグッと上がり、前述の脚切れと同じで獲物が人間に向かって来たときに大ケガをすることも。
また、ワイヤーを付けて野生動物が逃走した場合は他の場所で絡まってしまうこともあり、人にも動物にも危険で痛い思いをさせてしまいます。
シカやイノシシを狙っているわけではないとしても、これらの生き物が生息している地域では誤って掛かってしまうこともあり得るのでよりもどしを付けた方がいいでしょう。
シカやイノシシを対象とする場合は4mm未満のワイヤーは禁止
シカやイノシシが対象の場合、ワイヤーの太さも4mm以上とされています。くくりわなのパーツが4mm用・5mm用で売られていることが多いため、3mm以下のワイヤーでわなを作ったり購入したりすることはほとんどないと思いますが、こちらも覚えておきましょう。
守られていないとどうなるのか?
細いワイヤーは破断荷重が低いので切れやすく、食い込みやすいので脚切れもしやすいなど、二重に危険です。
標識の掲示、掛ける場所、資格…道具以外の規則とは
わなを掛ける場合にもさまざまな法令があります。道具以外の法令を守っていない場合も違法となるので注意が必要。主な規則は以下の通りです。
目立つ場所に所定の標識を付けなくてはいけない

わなの標識。狩猟者や有害鳥獣捕獲従事者はわなを掛けたらその近くで目に付きやすい場所に掲示する義務がある
箱わなでもくくりわなでも、必ず見える場所に所定の内容を記載した標識を付けなくてはいけません。
その内容は、わなの持ち主の住所、氏名、許可権者の名前、登録年度(有害鳥獣捕獲の場合は許可の有効期限)、登録番号(有害鳥獣捕獲の場合は許可の番号)、有害鳥獣捕獲の場合は捕獲する鳥獣の名称となっており、もしわなに何らかの動物が掛かっていて危険な状態である場合にわなの持ち主に連絡ができるようになっています。
また、くくりわなは基本的に見えないように掛けるため、標識があることで人が誤って踏まないよう注意喚起の役割も果たしています。
公道に獲物がはみ出す場所に掛けてはいけない
掛ける場所にもいくつかの決まりがあり、特に狩猟の場合は狩猟可能区域が細かく決められています。有害鳥獣捕獲の場合は、狩猟よりもわなを掛けられる範囲が広くなりますが、そうだとしても必ず気を付けるべきことがあります。
それは、「人や車が往来する場所」もしくは「わなに掛かった獲物が人や車が往来する場所にはみ出す恐れがある場所に掛けない」ということ。

上の写真は、筆者が見つけた違法わなで、右手前にワイヤー跳ね上げ式の踏板の枠だけが残っているのがわかります。直径20cmを超えており、市の農政課から写真を借りたものと同じタイプのようでした。
ここは、道路沿いの法面を上がった藪の中。小さなイノシシかアナグマが掛かったらしい形跡がありますが、根付には細い竹を何本かまとめて使用したようでした(赤丸の中)。
もし大きなイノシシやシカが掛かっていたら、根付の竹を折ってすぐに道路へ飛び出せるような場所です。ほかの場所で見つかっている違法わなも道路沿いに掛けられているものがあるそうなので、いつ大事故に繋がっても不思議ではありません。
免許のほか、狩猟者登録や有害鳥獣捕獲従事者になることが必要
そもそもですが、わなを掛けるには「わな猟免許」に加え、狩猟なら狩猟者登録、有害鳥獣の駆除のためなら市町村の実施する有害鳥獣捕獲従事者になることが必要です。
ですが、違法わなが掛けられている場所を見ていると、こうした免許や資格がない人がやっているように思えます。無免許、無資格ももちろん重大な違法です。
違法わなを見つけたら警察または市役所へ

違法わなに掛かったアナグマ。住民の通報で発覚したが、この近くにももう一基違法わながあったという。20cmを超える大きさで、締め付け防止金具もなかった(写真提供:君津市農政課)
違法わなの発見は、近隣の人からの「何かの動物がわなに掛かっている」「散歩をしていたら犬がわなに掛かってしまった」といった通報がきっかけとなることもあります。
もしも前述のような規定を守っていない違法わなを見つけたら、触らずに市役所や警察に連絡をしてください。また、もしも動物が掛かって暴れているのを見つけたら、決して近寄らず、動物の視界に入らない場所、そしてできれば動物がいる位置より高い場所へ移動してから通報をしましょう。
違法わなでも勝手に外したり持ち去ってはいけない
ちなみに、人が通りそうな場所で違法わなを見つけた場合、「危ないから外してもいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、違法であっても誰かの所有物である以上、勝手に外したり持ち去ったりすると、そのことが罪に問われる可能性があります。
善意からであっても違法わなには手を出さず、行政や警察に任せて処置してもらいましょう。
違法わなを掛けている人を見つけても声を掛けない
2026年7月現在、違法わなの犯人やその目的は分かっていません。もしも違法わなと思われるものを掛けていたり、山中で怪しい人を見た場合、むやみに声を掛けたり近付いたりするのは危険です。
その場から十分に離れてから警察に通報し、場所や人物・車などの特徴が分かれば伝えるようにしてください。
違法わなに掛かってしまったらどうする!?

猟友会会員の脚に掛かった違法わな。長靴と、左に落ちている踏板を比べるとその大きさがわかる(写真提供:君津市農政課)
君津市の事例に、イノシシ被害の相談をされた猟友会会員2名が現地確認をしていたところ、一人が違法わなに掛かってしまったというものがあります。上の写真を見るとわかるように、22cmの長靴を履いていたにもかかわらず、脚にしっかりとワイヤーが掛かっています。
このわなには標識がなかったため気付かずに踏んでしまったそうですが、締め付け防止金具もないため、もしもサンダルやスニーカーといった足首が保護されていない靴だったらケガをしていた可能性もあります。
バネの起点にある「蝶ネジ」を緩める
このようにわなを踏んでしまった場合、力づくでワイヤーを開くのは不可能です。慌てず、バネの起点にある「蝶ネジ」を探しましょう。

上の写真の赤丸の中が蝶ネジです。写真右に輪が締まった状態のくくり部分が見えますが、その反対側にバネが伸びないように留めているネジがあります。これを緩めることでバネが伸び、くくり部分を広げることができるようになります。
なぜ増える?違法わな増加の背景とは

千葉県で爆発的に増えているキョン。ニュースでキョンの増加や報奨金について報じられていることも関係するのだろうか
千葉県で報告が相次いでいる違法わなですが、野生動物が多い地域では多かれ少なかれ違法わなは見つかっています。今後、千葉県以外でも急増していく可能性も否めません。違法わなが増える背景を考察してみました。
野生動物増加のニュースが密猟につながる?
千葉県といえば、イノシシによる農作物や民家に入り込んでの被害、キョンの急増といった野生動物の被害がよくニュースに取り上げられる地域です。
都心に近いエリアなのに野生動物被害が多いことで取り上げられやすいとも言えますが、そのことは、ゲーム感覚で野生動物を捕獲しようとする人たちにとって、「県外から気軽に行けるハンティングエリア」という認識を持たせているかもしれません。
また、キョンやイノシシは有害鳥獣捕獲対象であり、報奨金が話題になることもあります。近年、茨城県でもキョンが見つかったことが話題になりましたが、水際での防衛のために茨城県はキョンの捕獲で3万円、目撃情報でも2千円の報奨金を出すことを発表しています。
報奨金は有害鳥獣捕獲従事者、もしくは有害鳥獣を請け負う団体などが申請しないともらえませんが、こうした詳細を調べずに安易に違法わなを掛ける人もいるのかもしれません。
自分の所有地なら掛けていいという誤認

農家の人がアライグマを捕獲するために自作した箱わな。自分の敷地内で捕獲をしようとしていたが、無許可だったため先輩猟師が所有権と管理を申し出た(手前右に見切れているのは掛かっていたアライグマ)
筆者が住む千葉県君津市もそうですが、房総半島は野生動物と人里との距離が本当に近く、農作物被害も深刻です。困り果てた農林業の人々や、庭に夜な夜な野生動物がやってくるという一般家庭の人が、「違法とは知らずにわなを掛けていた」というケースも。
「自分の敷地」や「所有している山林」であっても、許可のない野生鳥獣の捕獲は違法です。先日も先輩猟師が自作の箱わなでアライグマを捕獲しようとしていた農家の人に捕獲についての相談を受けたそうですが、許可を得ていないと知ってわなの管理を申し出て、標識を付けたそうです。
こうしたケースもあるのを見ると、やはり近年の野生動物の増加が引き金となり、多角的に違法わなを増やしているのかもと思わされます。
ネットで誰でもわなを購入できる
わなは購入するのに特別な資格や審査の必要がなく、インターネットで誰でも購入が可能です。なおかつ、今は作り方や使用方法も含め、インターネットで情報を集めることができる時代です。
もちろん許されることではありませんが、「知識がなくても誰でもわなを掛けることができる」という土壌が出来上がっているのも一つの要因かもしれません。
また、わな猟免許や狩猟登録者、有害鳥獣捕獲従事者であっても、「規定より大きな直径の踏板を購入している」人は多いように思います。
直径が大きい方が確かに獲れる確率は上がりますが、弁当箱型や楕円で短辺が規定内のものを選ぶ、けもの道の狭い場所に掛けるなど工夫の余地はいくらでもあるはず。決められたルールの中で捕獲率を上げる努力をしたいものです。
最大100万円!違法わなの罰則は?

違法わなには罰則があり、内容によってはとても重たいものになります。罰金で済めばまだいいかもしれませんが、もし人や家族同然のペットなどに大ケガを負わせてしまったら、「知らずにやっていた」では済まされません。
違法わなを掛けた場合の主な罰則は以下の通りです。正規の手続きを踏んで狩猟や捕獲をしている人も今一度確認しておきましょう。
| 違反の内容 | 罰則 |
| 狩猟者登録や捕獲許可を得ないで野生鳥獣の捕獲をする | 一年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金 |
| 公道(人や車が通る場合林道や農道も含む)、および獲物がそこへ飛び出す可能性のある場所で野生鳥獣の捕獲をする | 一年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金 |
| 法で規制された方法に反して野生鳥獣の捕獲をする(わなの直径の規定超過や締め付け防止金具がないものもこれに当たる) | 6カ月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金 |
| 垣や柵などで囲まれた土地、または作物のある土地で占有者の許可を得ないでわなをかける | 50万円以下の罰金 |
| わなに所定の標識を付けずに捕獲等を行う | 30万円以下の罰金 |
まとめ
野生動物の増加と共に、目に見えない場所でじわじわと増えている違法わな。山深い場所ではなく、散歩やハイキングなどで通りがかるような場所に掛けられていることも少なくないため、その特徴や見つけた場合の対処法はぜひ覚えておきたいものです。
また、有害鳥獣捕獲は増えすぎた個体の数を調整するために計画的に行われるべきもの。「増えすぎているから」という大義名分があったとしても、法的な手続きを経ない安易な捕獲行為は決して認められません。
違法わなで誰かを危険な目に合わせるよりも、規定を守った猟具で有害鳥獣捕獲をすれば、合法・安全・里山の健全な環境にも一役買えて感謝もされるなど、まさに「八方良し」ですよ。
















