産地リレーの夏場を支える、高原野菜の一大拠点
長野県・八ヶ岳東麓の標高850〜1,500メートルに広がる高原地帯。夏でも冷涼な気候と晴天率の高さ、昼夜の寒暖差が、みずみずしく、食味の良いはくさいを育てます。この地ではくさいの栽培が始まったのは昭和初期。試験的な導入で出来がよく、増産と販路拡大が進み、一大産地となりました。
JA長野八ヶ岳の管内5町村のはくさい(夏)の作付面積は1,335ヘクタール(令和6年・作物統計調査)にのぼり、レタスやキャベツと並ぶ主力品目となっています。そのなかでも南牧村は最大のはくさい産地。JA南牧支所管内およそ200人の生産者のうち半数以上がはくさいを大規模に生産し、同じ圃場で年に2回作付けする二毛作も一般的です。
支所管内の夏はくさいの出荷期間は、例年5月下旬から9月中旬まで。八ヶ岳を背景に一面の畑が広がり、大型トラクターがコンテナトレーラーを牽引して次々と集荷場へ入ってくるのは、高原野菜の一大産地ならではの光景です。

「夏にはくさいを生産できる全国でも数少ない産地です。だからこそ、供給を切らすわけにはいきません」と同支所の秋吉さんは話します。
出荷先は直接取引で仙台から鹿児島まで。市場を経由すればほぼ全国に渡ります。漬物やキムチなどの加工用や量販店のプライベートブランド向けが中心ですが、「八ヶ岳高原野菜」ブランドは消費者にも定着しています。
圃場外から飛び込んでくるアブラムシ対策、限られた薬剤の選択肢
JA南牧支所では、主要作物であるはくさいの病害虫に細心の注意を払ってきました。注文書はJAが作成し、生産者が圃場環境に合わせて薬剤を選びます。同支所が重視するのはローテーション防除。抵抗性の発達を防ぐため、作用機作の異なる薬剤を組み合わせるよう指導しています。
この体制のもと、管内では近年、目立った病害虫の被害を抑えてきました。ただ、アブラムシが媒介するモザイク病だけは様子が違います。

「畑でアブラムシを見ることはありません。それなのにウイルス病が増えています」と秋吉さん。
モザイク病は以前から確認されていましたが、この3〜4年で発生の傾向が変わってきました。ウイルスを保毒したアブラムシが、圃場周辺の雑草や林から飛び込んでくると見られます。飛来した虫が一度でも汁を吸えば、その時点でウイルスは株に入ります。虫は薬剤で駆除できても、ウイルスに感染した株は元には戻りません。これが繰り返され、畑に虫の姿が見えなくとも、ウイルス病が広がる構図です。
「打てる手は打ってきました。土手に生える月見草やタンポポなどにアブラムシがつくため、圃場周辺の除草を呼びかけ、発病株は見つけ次第抜き取って圃場の外で処分するよう指導しています。」
同支所ではアブラムシのモニタリングを続けていますが、飛来のピークは読めません。今年(2026年)は6月18日ごろに大きな山がありました。
「薬剤の面でも手詰まり感がありました。とくに定植から一定期間が過ぎ、アブラムシに株の内部まで入られたときの助けになる、浸透移行性のある薬剤の選択肢は非常に限られています。長く頼ってきた薬剤の効きが鈍ってきたという声も生産者から届いており、連用による抵抗性の発達も疑われていました。」
既存剤にはない特徴で、アブラムシのウイルス媒介を抑制

対策を重ねても届かない部分が残る。産地はその実感を抱えたまま、毎年の防除に向き合ってきました。そこに新しい選択肢が加わりました。2026年3月に発売された「エフィコンSL」です。
エフィコンSLの効果のなかでも特に大きな興味をひいたのが、アブラムシの吸汁活動を素早く止めることで、ウイルスの媒介を抑えるという特徴でした。まさに、圃場にアブラムシの姿が見えないままウイルス病が広がるという課題と一致しました。
そして、さらに注目したのは、既存薬剤とはまったく異なる作用機作です。有効成分ジンプロピリダズ(アクサリオン®)は、IRACによって新規の「グループ36」に分類された唯一の成分。既存の薬剤に対しても抵抗性をもつアブラムシにも効果が期待できます。
「ローテーションに選択肢が増えるのは、すごくありがたいです」と秋吉さんは笑顔を見せます。
浸透移行性にも期待します。エフィコンSLの有効成分は、葉表から葉裏へ、処理した葉から新葉へ、さらに根からも植物体全体へと移行します。特に結球期以降は株の内部に入ったアブラムシには打つ手が限られていたため、浸透移行性は必須の条件でした。
管内の生産者へいち早く知らせようと、支所では新剤情報を一斉メールで発信しました。一毛作・二毛作ともに、初期防除への組み込みを推奨しています。
支所としても試験区を設けて検証を進めています。
生産者からの反応は上々でした。1度に20本、40本とまとめて買う生産者もいて、店頭の在庫が一時なくなったこともありました。

「今日時点でエフィコンSLが効かないという問い合わせは、一件もありません。便りがないのが、いい知らせということかもしれません」と秋吉さん。収穫期の終わりを前に胸をなでおろします。
剤を使い分け、夏はくさいを供給し続ける
近年、防除を難しくしている要因のひとつに気候の変化があります。
「以前は高冷地でも気温が30度に達することはなかったと聞いていますが、今は当たり前に超えています。雨も続くので、散布するタイミングが減ってしまいます」と秋吉さんは話します。
薬剤に頼る場面は増えますが、暑さと降雨に挟まれ、防除できる日は限られます。限られた散布機会でいかに効果を出せるかが課題です。
「いま使っているすべての剤を活かしていくために、ローテーション防除は大事です」と秋吉さん。
BASFジャパンからは、2023年3月にアブラムシ剤「セフィーナ®DC」も上市されています。約3週間の残効が期待できる点とウイルス媒介抑制効果は共通しており、IRAC分類9Dに分類される唯一の薬剤です。同支所では防除体系の仕上げの選択肢として提案しています。
「産地リレーを担う以上、どんな環境でも安定して生産を続けることが大切だと感じています。生産者の皆さんとともに、一生懸命取り組んでいきたいです」と秋吉さんは話してくれました。

取材協力
JA長野八ヶ岳 南牧支所
『エフィコン®SL』製品情報
有効成分: アクサリオン®(ジンプロピリダズ) 10.8%
登録番号: 第25005号
性状: 褐色~暗褐色澄明水溶性液体
毒性: 普通物(毒劇物に該当しないものを指していう通称)
危険物: 三石・Ⅲ・水溶性
有効年限: 3年
包装: 250ml×20本、500ml×20本(地域限定)
®=BASF社の登録商標
















