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地域おこし協力隊から念願の酪農家へ。幌延町で夢をかなえた夫婦の3年間

地域おこし協力隊から念願の酪農家へ。幌延町で夢をかなえた夫婦の3年間

北海道の最北端・稚内市から車で約1時間。人口およそ2,000人の幌延町は、天塩川やサロベツ原野に抱かれた、広大な牧草地が広がる酪農のまちです。
そんな幌延町で2022年、地域おこし協力隊の農業支援員として酪農家への一歩を踏み出したのが、竹中良輔さん・知美さんご夫妻です。
マイナビ農業では約3年前、全くの未経験から酪農の世界へ飛び込んだ2人を取材しました。当時語っていた目標は「自分たちの牧場を経営すること」。
その夢は今、現実のものとなっています。

地域おこし協力隊として経験を積み、離農する酪農家から事業を継承。念願だった新規就農を果たしました。さらに2人の間には新しい家族も誕生。現在は生後5カ月の子どもを育てながら、夫婦で牧場を切り盛りしています。
地域おこし協力隊から新規就農へ。
この3年間で2人は何を学び、どのように「酪農家」になっていったのでしょうか。

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手探りから始まった3年間。基礎、ブラッシュアップ、そして実践へ

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毎日がはじめての連続。とにかく覚える日々

竹中さん夫妻が幌延町へ移住した当時、2人とも酪農は未経験でした。地域おこし協力隊の農業支援員として町内の農家に入り、牛への餌やりや搾乳、牛舎の清掃など、基本的な作業から一つずつ覚えていきました。

最初の1年を振り返り、2人が口をそろえるのが「体力的な大変さ」です。
早朝と夕方に作業する酪農特有の生活サイクル。これまでとは全く異なる毎日に体を慣らすことも、最初の大きな壁でした。

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現在の牧場経営の基礎となる知識を習得

2年目になると、テーマは「ブラッシュアップ」。
一度経験した作業の精度を高めるだけではありません。牛の繁殖をどのように回していくのか。病気になった牛にどう対応するのか。次第に、単に作業を覚える段階から、牛の状態を見ながら、自分で考える段階へと進んでいきました。

新規就農への入り口のひとつには「酪農ヘルパー」という選択肢もあります。酪農家が休日を取る際などに作業を代行する仕事で、さまざまな牧場の経営や仕事の方法を見ることができるのがメリットです。
一方、竹中さん夫妻は限られた農家に継続して入ったことで、農場が1年を通してどのように動いていくのかを深く経験することができました。

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いよいよ事業承継する農家に入っての最終段階

そして3年目。将来事業を継承する農家で、経営者から実際の仕事を学びながら、就農後を見据えた実践的な経験を積んでいきました。1年目は手探り。2年目はブラッシュアップ。そして3年目は実践。段階を踏んだ3年間が、未経験だった2人を酪農家へと成長させていきました。

新規就農へのハードルを下げる幌延町の支援制度

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役場や農協の手厚いサポート体制

竹中さん夫妻が新規就農まで歩んでこられた背景には、本人たちの努力だけではなく、幌延町の受け入れ体制もありました。2人が最初に活用したのが地域おこし協力隊制度です。
農業支援員として月に40万円の収入を得ながら酪農の技術を学び、将来の就農に向けた準備を進められることは、未経験だった2人にとって大きな安心材料になりました。
その後、良輔さんは地域おこし協力隊を任期途中で退任し、幌延町酪農担い手育成センターで、より就農を意識した研修へ。知美さんは地域おこし協力隊として活動を続け、町内の農場で経験を重ねました。

「やった分だけ牛が応えてくれる」迷いながら見つけた酪農のやりがい

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事業承継し、新しい機材も導入。仕事の効率化を進める

酪農は生きものを相手にする仕事。思い通りにならないことの連続です。それでも仕事を続けるうちに、良輔さんは酪農ならではの面白さを感じるようになりました。

「やったらやった分だけ、牛はちゃんと応えてくれるんです」
牛をよく観察し、餌や管理を工夫する。その結果が乳量などの数字となって表れ、やがて牧場の売り上げにもつながっていきます。
努力と経営成果の距離が近いことが、良輔さんにとって大きなやりがいになりました。
そして現在、2人はついに自分たちの牧場を経営する立場になりました。

先代から受け継いだ良い部分は残しながら、「もっとこうしたい」と感じたことには積極的に手を加えています。例えば設備面では、自動給餌機をグレードアップ。老朽化していた機械も更新するなど、作業の効率化に向けた設備投資を進めました。

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飼料添加物も取り入れ、乳量の増加を目指す

牛そのものの改良にも取り組んでいます。
種牛を扱う企業などにも相談しながら、自分たちの牛群の弱点を分析。乳量や受胎率などの改善を目指し、将来を見据えた交配を考えています。

もちろん、牛の改良はすぐに結果が出るものではありません。今の選択の結果が見えてくるのは、子牛が生まれ、成長してから。
「今やっていることが、この先どういう結果になるのか。それが楽しみですね」
受け継いだ牧場をそのまま守るのではなく、自分たちなりの牧場へ。
経営者になったからこそできる挑戦が始まっています。

計画通りにいかないのも酪農。AIやデータも経営の味方に

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継続的に続けられるスマート農業を目指す

現在、竹中さん夫妻が所有する牛は合計126頭。一定の設備や、牛がそろった状態で事業を継承できたこともあり、就農後の経営は比較的早い段階で軌道に乗り始めました。
しかし、経営者になってからは別の難しさも見えてきたといいます。
「毎日のように迷っています」
経営計画を立てても、牛が病気になったり、時には死んでしまったりすることがあります。1頭の牛を失えば、想定していた乳量にも影響します。
さらに近年は飼料価格などの上昇もあり、自分が描いた経営計画と現実との間にズレが生じることも。そのたびに「この判断で良かったのか」と考えるといいます。

そんな良輔さんが経営の相談相手の一つとして活用しているのが、意外にもAIです。
購入した飼料がどのくらいの期間使えるのか、毎月どれほどの経費が必要になるのか。さまざまな条件をAIに入力して計算させ、経営判断のための“壁打ち相手”として活用しています。

牧場内でもデジタル技術の導入を進めています。
牛には発情や健康状態などを把握するためのセンサーを装着。集まったデータを生かし、乳量の向上や効率的な牧場経営につなげようとしています。
経験豊富な先輩農家から技術を学ぶ一方で、AIやセンサーといった新しい技術も積極的に取り入れる。そこには、無理なく、効率よく、そして長く酪農を続けていきたいという考えがあります。

1番の悩み「お金」も助成制度を活用

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酪農家をサポートする幌延町役場の新野 貞治さん

さらに幌延町には、新規就農後の経営を支える支援制度も用意されています。
例えば農用地や施設、機械などを取得するために資金を借り入れた場合、5,000万円を上限とする借入額の5分の1以内、最大1,000万円を補助。
農用地などの賃借料についても、年間400万円を上限に2分の1以内を原則5年間支援する制度があります。このほか、条件に応じて固定資産税相当額などへの支援も設けられています。
新規就農には、技術の習得だけでなく、農地や牛、設備、資金などさまざまなハードルがあります。研修から事業承継、そして就農後の経営までをつなげて支援できることは、これから酪農を目指す人にとって大きな選択材料になりそうです。

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牛舎にベビーカー。子育てと仕事を両立

そして竹中さん夫妻には、この3年間でもう一つ大きな変化がありました。
現在、生後5カ月の子どもを育てています。
知美さんは妊娠中もできる範囲で仕事を続け、現在は牛舎にベビーカーを持ち込み、子育てと牧場の仕事を両立することもあります。

夫婦2人で始めた幌延町での生活は、今では家族3人の生活になりました。
そんな暮らしの中でも、良輔さんの牛への思いは変わりません。
本来なら休憩している時間でも、気になれば牛舎へ行って牛の様子を見てしまうのだとか。

3年前は、夢だった「自分の牧場」。
今では牛のことを考え、牛舎へ足を運ぶ毎日そのものが、竹中さんの暮らしの一部になっています。
地域おこし協力隊として幌延町へやってきた、酪農未経験の若い夫婦。
手探りから始まった挑戦は3年の月日を経て、家族とともに歩む「酪農家としての日常」へと変わっていました。

【幌延町地域おこし協力隊に関するお問い合わせ】
北海道幌延町産業建設課
HP:https://www.town.horonobe.lg.jp
メールアドレス:sangyokensetsu@town.horonobe.lg.jp
電話番号:01632-5-1115
Fax:01632-5-2971

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