二毛作でフル回転、8ヘクタールの夏はくさい
吉澤さんが就農したのは20歳のとき。 両親の経営を継ぐかたちで生産現場に入り、今年で17年目になります。 経営面積はおよそ10ヘクタール。 そのうち8ヘクタールで夏はくさいを栽培しています。 「10ヘクタールくらいの生産者はざらにいます。 このあたりだと僕は中堅農家ですよ」と吉澤さんは話します。
はくさい苗の定植を始めるのは3月。 3〜5日おきに定植を繰り返し、5月下旬から出荷を開始します。 梅雨明けからは二毛作の2作目の定植に入り、収穫は9月上旬まで続きます。 吉澤さんの年間出荷量はコンテナで5〜6万個に達します。この規模を、家族と、繁忙期に来てもらう技能実習生4人で回しています。
出荷先はJAを介した契約先が中心で、その多くは漬物などの加工向けです。そこで求められるのは、規格に収まり、しっかりと重量のある玉。出荷するはくさいは1玉あたり2.5〜3キログラムが目安です。過熟の玉は避ける必要がありますが、重さが確保できていれば細かな指摘は少ないといいます。
それでも、吉澤さんが目指すはくさいの姿ははっきりしています。
「大きくて形のいいはくさいを作りたいという気持ちで、毎年やっています」

アブラムシは抑えたが、ウイルス病は止まらない
夏は涼しく雨も少ない南牧村は、はくさい栽培の好適地です。 ただ近年、その前提が揺らぎつつあるといいます。
「平地と比べれば涼しいほうだと思いますが、夏場は高温になることもあり、作りづらくなってきています。適度に雨が降ればいいのですが、ぜんぜん降らない年もあれば、ゲリラ豪雨が連発する年もある。 とくに梅雨の時期は、消毒のタイミングが取れなくて困ります」
はくさいの防除は、1作あたり2カ月の栽培期間中に5〜6回。 前半の数回は殺菌剤と殺虫剤を組み合わせ、後半は殺虫剤に絞ります。 JA南牧支所の防除暦をもとに全体で4〜5種類をローテーションし、結球する終盤は浸透移行性のある剤で締めるのが吉澤さんのパターンです。
「薬剤がかかったところにしか効かないのは不安です。これだけ面積が広いと一つひとつ丁寧にというのは難しい。 浸透性があると気が楽になります」と吉澤さん。

アブラムシははくさいでよく見られる害虫ですが、吉澤さんは発生そのものに困ったことはないといいます。 問題はその先にありました。
「アブラムシは抑えていますが、ウイルス病に対する防除策があまりなくて」
最も危険なのは定植直後、植え付けから10日から2週間の結球前です。
この時期にしっかり防除できないと、ウイルス病に感染した株は生育不良となり、出荷できなくなります。
「育っているはくさいの中に、痩せたような玉が点々と出ているのを見ると、本当に嫌な気持ちになります。もう早く忘れたいですね」
とくに出やすいのが二毛作の2作目です。 前作の残渣が残った状態で植えると、その陰にアブラムシが潜んでいることがあります。
「残渣の除去やマルチの張り替えができれば理想ですが、この面積では時間もコストも合いません」と、大規模経営ならではの悩みを明かします。
もうひとつの不安が、薬剤の抵抗性です。同じ作用機作の薬剤を繰り返し長く使い続けると、次第に効果が落ちるリスクがあがります。
実際に、「だんだん効かなくなってしまうことはありますね」と吉澤さんは話します。
1作目は結球後の締めに、2作目は初期防除の一手として

吉澤さんが「エフィコンSL」を知ったのは、JA南牧支所に立ち寄ったときでした。担当者の机の上に、見慣れないボトルを見つけました。
「これ何ですかと聞いたら、新しく出たアブラムシ剤だよ。これいいよって。」
2026年3月、ちょうどその年の薬剤のローテーションを考えている時期でした。話を聞いて興味を引いたのは2点。ウイルスの媒介を抑えること、そして露地条件で約3週間という残効の長さです。
「散布の頻度を増やすのは大変なので、長く効いてくれるのはありがたいです」と吉澤さん。露地条件で3週間程度という残効のデータを聞き、その年からすぐに導入することに決めました。
「エフィコンSL」の有効成分ジンプロピリダズ(アクサリオン®)は、IRACによって新規の「グループ36」に分類された成分です。 既存薬剤とはまったく異なる作用機作を持つため、抵抗性をもつアブラムシにも効果が期待できます。
薬剤のかかりづらい葉裏や結球内部への散布ムラカバーする浸透移行性も、8ヘクタールの圃場を管理する吉澤さんが求めるものでした。 散布した薬剤は葉表から葉裏へ、処理した葉から新葉へ、さらに根からも植物体全体へと移行します。 アブラムシが好んで潜む葉裏や新葉にも行き渡ります。
希釈倍率は2,000倍を採用し、ローテーションへの組み込み方は作型によって変えました。1作目は浸透移行性と残効性の長さに期待し、結球後終盤の最後の締めとして。2作目は、素早く吸汁を止めるウイルス媒介抑制効果に期待して、最もウイルスに感染しやすい栽培初期の防除の一手としてエフィコンSLを採用しました。
「製品としては非常に使いやすいです」と吉澤さんは使用感を話します。液剤タイプということもあって希釈も簡単で、手順を変えずに組み込める剤でもありました。価格は決して安くありませんが、それでも評価は変わらないといいます。
「経費はケチらない。安いものを使ってはくさいがダメになったら捨てるだけでお金になりません。だったら高い薬剤を使ってでも、お金にしたほうがいいというのが僕の考えです」と吉澤さん。それは、地域の先輩から口酸っぱく言われてきた考え方でもあります。

ウイルス媒介抑制の手応えを、経営拡大の土台に
収穫シーズンが終わる9月。吉澤さんは、明らかなモザイク病の減り方に手応えを感じていました。
「エフィコンSLを使い始めてから、ウイルスが少なくなりました。畑の様子が明らかに去年と違います。1回の散布で長く効いている感じがします」と吉澤さん。
圃場にいるアブラムシを駆除しても、それだけでは足りません。外から飛び込んできた保毒虫が一度でもはくさいを吸汁すれば、その時点でウイルスは株に入ります。吸汁をどれだけ早く止められるかが、感染するかどうかの分かれ目。いつ飛び込んでくるかは読めない以上、備えを緩めるわけにはいきません。
「散布回数をすぐに減らすつもりもありません。それでも、頼れる薬剤がひとつ増えた意味は小さくない」と吉澤さん。新規作用機作であることも、ローテーションを組むうえでの安心材料になりました。」
ウイルス病の防除は、殺虫剤だけではありません。JAからの指導もあり、アブラムシの圃場への飛び込みを防ぐため、圃場周辺の雑草をバスタ液剤で防除することもウイルス病媒介抑制につながっていると吉澤さんは言います。
就農から17年、目標は変わりません。
「大農家になりたいです」と、まっすぐに語ってくれました。地域には後継者のいない生産者も少なくありません。だからこそ、任されたときに応えられる体制でいたい。作ったはくさいを確実に出荷につなげる防除が、その信頼を支えます。

取材協力
ハクサイ生産者 吉澤成輝さん
JA長野八ヶ岳 南牧支所
『エフィコン®SL』製品情報
有効成分: アクサリオン®(ジンプロピリダズ) 10.8%
登録番号: 第25005号
性状: 褐色~暗褐色澄明水溶性液体
毒性: 普通物(毒劇物に該当しないものを指していう通称)
危険物: 三石・Ⅲ・水溶性
有効年限: 3年
包装: 250ml×20本、500ml×20本(地域限定)
®=BASF社の登録商標
















