胃腸の冷えを感じるときはカブが最適
カブは煮込めば柔らかい歯触りになるため、子どもからお年寄りまで安心して食べられる食材として、親しまれています。
漢名は、「蕪菁(ぶせい)」。日本では「カブ」を代表的な呼び名としていますが、地域によってカブラやカブラナ、スズナ、クキタチ、アオナとも呼ばれている食べ物です。
味わいを薬膳の5つの分類である五味で示すと、「辛・甘・苦」。生で食べるときや、部位によっては苦みや辛味を感じることがありますが、基本的には甘みをメインに感じられるでしょう。
薬膳の世界では五気の「温」に分類されていて、胃腸を温める食べ物として注目されています。特に胃が重たいときや、冷えからくる腹痛に良い働きがあるといわれています。もちろん、カブの体に良いとされる働きは、それだけではありません。
カブの部位や調理法、生の状態での用い方次第で、皮膚表面や胃腸の働きを調整する作用もあります。丈夫な体づくりのためにも、症状別の調理法をマスターしておきましょう。
声がれには「おろし汁」
カブは体を温めるだけでなく、咳を抑える作用があるとされています。声がれにはカブのおろし汁がよいと言われ、口の中の渇きも改善してくれるのです。
声がれが気になるときは、カブをすりおろしたときに出る、おろし汁を飲みましょう。さらに、おろし汁に湯と氷砂糖を混ぜて飲むと、咳を鎮める効果が期待できます。声を使う仕事をしている方や、花粉症などの症状がある方にもおすすめです。
胃が重たいときは「煮る」
胃がどんよりと重たい、ガスが溜まっているような気がする。そんな時は、カブを煮て食べるとスッキリするでしょう。カブには、ガス抜き作用もあるのです。
便秘や下痢には「種を湯に溶く」
便通がよくないときは、カブの種を砕いてお湯に溶いて飲むと良いとされています。量の目安はお湯に溶いたもので、7~10グラム。茶さじ1杯程度です。
しもやけやあかぎれには葉と根が良い?
カブにはしもやけやあかぎれを抑える作用があると言われています。
作り方は、葉と根に塩を少々。これらをすりこぎでよく「つく」だけで完成です。よくつき砕いたものを、1日3回、患部に塗ると良いでしょう。
まだまだあるカブの部位別効能
薬膳において、カブは種から葉、根まで使うことができます。当然、花も体に良いものです。春のうちに陰干しして、細かく乾燥させたカブの花は、疲れ目に効果が期待できます。
このように、カブには胃腸の調子を整える作用から、肌の表面を抑える作用まで幅広い効能が期待されています。せっかくですので、薬膳料理としてカブを活用しつくせる、とっておきのレシピを紹介します。
家庭で簡単薬膳料理・カブラ蒸し
カブを丸ごと食べられる、簡単レシピを紹介します。ほくほくのカブの温かさと優しい歯触りに加え、ふんわり香る柚子の風味が食欲をそそります。胃腸の調子がすぐれないときにも食べやすいでしょう。
材料
※こちらで紹介するカブラ蒸しのレシピは、2人前です。
・カブ 大2個
・干しシイタケ 2枚
・鶏むね肉 50グラム
・大正エビ 2尾
・塩、みりん 各適量
・うす口しょうゆ 小さじ1/2
・酒 小さじ1/2
・卵 1個
・ユリ根 1/2株
・グリーンピース 大さじ1
・葛粉 大さじ1/2
・ユズの皮 細切り少々
スープあんの材料
・だし汁 1カップ
・うす口しょうゆ 大さじ1/2
・塩 少々
・みりん 小さじ1
・酒 小さじ1
カブラ蒸しの作り方
下ごしらえ
カブラ蒸しを作るときは、あらかじめ深めの器と、ボウル、蒸し器、ふきんを用意しておきましょう。まずは下ごしらえをします。
・カブを皮ごとすりおろす
皮がついたまま、1カップ分すりおろします。水気は軽く切っておきましょう。
・干しシイタケをもどす
水で戻したら、薄切りにします。
・鶏むね肉をひとくち大サイズに切る
塩、みりんを適量用いて、下味をつけておきます。
・エビの殻むき、背わた取り
うす口しょうゆ・大さじ1/2、酒少々で下味をつけておきます。
・その他
ユリ根をほぐしておきましょう。
手順
下ごしらえが済んだら、実際に調理に移ります。
1.ボウルで卵を溶いたら、すりおろしたカブと干しシイタケ、鶏むね肉、エビを加えます。
2.ユリ根、グリーンピースを入れ、スープあんの材料も混ぜ合わせましょう。
3.さらに、葛粉と水を大さじ1/2加え、深めの器に移します。
4.深めの器に材料を移し終えたら、最後にユズの皮を散らすようにのせましょう。
5.蒸し器の内側に適量の水を張り、材料を入れた深めの器をセットします。フタの内側にふきんをかけると、コンロに蒸気によって生じた水滴がこぼれないので安心です。
6.約15分ほど蒸せば完成。鶏むね肉にしっかりと火が通っているか、確認しましょう。
ほくほくのカブを丸ごとおいしく、ご家族で召し上がれるのでおすすめです。また、カブは離乳食の初期から食べることができますし、常食では炒め物や味噌汁など、調理法も多い食材です。
ぜひ、カブを薬膳料理の基本材料として活用し、日頃の健康管理や体質の改善、体調不良時のケアをしてみてはいかがでしょうか。
参考書籍:『台所薬膳 身近な食べ物135種の薬効を活かす』(万来社)