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“D (旦那都合)ターン”でも自分らしく 新天地で輝く農家の嫁の生き様

連載企画:宮崎に移住した農家の嫁日記【漫画】

“D (旦那都合)ターン”でも自分らしく 新天地で輝く農家の嫁の生き様

UターンでもIターンでもなく、配偶者である夫の都合で、身寄りの少ない地域に移住する「D(旦那都合)ターン」。新規就農者の妻などが該当し、住み慣れた土地を離れ、新しいコミュニティに溶け込むことへの苦労も少なくありません。
夫がイチゴ農家として宮崎県日南市で新規就農した、渡辺茜(わたなべ・あかね)さんは、昨年7月に移住。イラスト制作やライティングの特技を活かして夫の農園を支えつつ、新天地で活躍の場を広げています。神奈川育ちの茜さんに、“Dターン”で輝く秘訣を聞きました。

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4コマ漫画で農家の日常を発信

旬を迎え、瑞々しく輝く「くらうんべりー」。パッケージのイラストと、通販時に同封する漫画は茜さん作

イチゴの旬真っ盛り。大きな粒が特徴の「くらうんふぁーむ」(=日南市北郷町)のイチゴも、市内のスーパーや直売所で瑞々しく輝いています。独自ブランドイチゴ「くらうんべりー」のパッケージや商品紹介のポップには、パステルカラーが目を引く可愛らしいイラストが描かれています。

「農産物の背後にあるストーリーを知ってもらいたい」と収穫までの栽培の過程を漫画化し、インターネット通販時に小冊子を同封して送るなど、親しみやすいイラストをツールに農園のPRを行っています。イラストと漫画を手掛けるのは、同園の渡辺茜さん。23歳で日南市北郷町へIターン就農した、夫・渡邉泰典(わたなべ・たいすけ)さんとの結婚を機に、昨年関東から北郷町へ移住しました。

夫・泰典さんの記事はこちら!
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真っ赤な髪とツナギで、大粒のイチゴを収穫するのは、イチゴ農園「くらうんふぁーむ」代表の渡邉泰典(わたなべ・たいすけ)さん。東京の大学を中退後、宮崎県日南市北郷町に移住し、イチゴ農家として独立した。新規就農者では初めてと…

移住翌月、農家の日常をテーマに4コマ漫画を描き、ウェブサイト上で公開したところ、わずか2週間で2万PVを集めるなど好反響を得ました。ほかにも自園のウェブサイト制作・運営、看板や動画編集・制作、PR用のLINEスタンプ制作……と、漫画やイラストを使ったアウトプットは多岐にわたります。

4コマ漫画『初収穫編』

宮崎に移住した農家の嫁日記

最近は農園のサポートに留まらず、外部からの制作依頼も受けるようになりました。

実は茜さん、宮崎県内でただ一人の「チョークアーティスト」プロ資格保持者でもあります。チョークアートとは、黒い板に載せた画材を指でぼかしながら少しずつ色を重ねることで、立体的で温かみのあるイラストを描く技法で、飲食店の看板などに添えられています。

始めは泰典さんの知人経由で、県内の飲食店の看板やメニューボードの制作を受注していました。次第に「店頭で見て気に入ったので、うちにも作って欲しい」と、別の飲食店からも注文が入るようになりました。
ほかにも、都内の大手求人広告会社での勤務経験を活かし、ライターやディレクターとして日南市などから仕事を請け負うなど、活躍の場を広げています。

スキルを身に付け、いざ日南へ

くらうんふぁーむチョークアート

「くらうんふぁーむ」の直売所を飾る、茜さん制作のブラックボード

夫の泰典さんとは、学生時代に所属していた農援サークルの活動をきっかけに出会いました。泰典さんの宮崎移住3日前、突然のプロポーズを受けたといいます。
当時新社会人だった茜さんは悩んだ結果、「都内の企業でがむしゃらに働き、ライティングやウェブ制作の経験を積む」という道を選びました。その2年後、「どこに行っても、生きていけるスキルが身に付いた」という感触を得て退職。昨年7月、入籍をきっかけに宮崎へ渡りました。

スーパーの閉店時間が早いなど、都会に比べると不便も少なくない日南市。ですが、夜の帳が下りた後、飫肥(おび)杉の山の上空に現れる満天の星空は、神奈川育ちの茜さんの目には「プラネタリウムのよう」と映ります。地元の知人たちが開いてくれた手作りの結婚お披露目パーティーでは、日南市長からもビデオレターの祝辞が届きました。温かい人々に囲まれる暮らしに、「嫌なことは一つもない」と力を込めます。

もちろん、苦労はゼロではありませんでした。移住後に茜さんを待っていた新居は「隙間風がびゅうびゅうと吹く」一軒家。収穫前の時期の収入は不安定なため、3食のご飯が食べられないこともあったといいます。そんな日々を、「生きているだけで、ネタが沢山落っこちて来るんですよ」と笑い飛ばします。

慣れない運転で車をエンストさせてしまった経験や、農家なのに朝寝坊しがちな夫への不満もパステルカラーの4コマ漫画に早変わり。農家の日常を切り取り、くすっと笑えるコンテンツとして発信することによって、イチゴを身近に感じ、商品を手に取って貰いたいという願いを込めて届けています。

今年1月、畑に隣接する小屋に直売所を新設し、茜さん制作のチョークアートやのぼりで飾ったところ、多くの人たちがイチゴを求めて立ち寄り、嬉しい悲鳴を上げることになりました。

農家の嫁として、いち個人として

茜さんに移住生活の心得を聞いていました。その答えは、「率先してあいさつをすること」と意外にもシンプルでした。北郷町は高齢者が多く住む地域。移住者は“よそ者”ですが、「その得体を知ってさえもらえれば仲良くなれる」と信じます。明るい笑顔で地域住民と接する渡邉さん夫妻の周りには、農作業の手伝いをしてくれる人やおかずをお裾分けしてくれる人など、“サポーター”が続々と増えています。

自らと同じ「配偶者の都合で新しい環境で暮らす女性」に対しても、アドバイスを求めました。返ってきたのは「好きなことや得意なことがあるなら、ずっと続けて欲しい」という言葉。新規就農者として知らない土地で働く夫への尊敬の念は忘れませんが、「もしも家族との関係に煮詰まっても、いい意味で仕事が“逃げ道”になってくれます」。個としての生き方も大切にする姿勢に、うなずかされました。

どこにいようと、自分らしく輝く――。強さとしなやかさを持ち合わせた若い感性は、留まることなくその芽を伸ばし続けています。

▼もっと4コマを読みたい人は、こちら!
宮崎に移住した農家の嫁日記

▼農園のウェブサイトや、動画の制作も茜さんが行いました。
「くらうんふぁーむ」ウェブサイト
「くらうんふぁーむ」YouTubeチャンネル 「農家物語たいぴー」

▼茜さんのホームページ
http://yomejyo.com/

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