豊かな農作物によるオンリーワンブランドの確立
岐阜県は、全国シェアが高い農産物を多く生産しています。全国的に有名な富有柿(ふゆうがき)や、「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されている、南飛騨富士柿(みなみひだふじがき)などがあります。
また、ホウレンソウも全国順位上位にランクインしているため、首都圏でも口にする機会が多いでしょう。
山々に囲まれた岐阜県は農業従事者が多く、古くから上質な農産物を生産してきました。伝統ある野菜や果樹の生産を維持しながら、販売拠点を拡大するために、岐阜県では一定の要件を満たした品目を「飛騨・美濃伝統野菜」として認定しています。
また、ものから心の豊かさを重視し、少量・多品目生産への変化を目指しています。
島ごぼうや紅うどなど、古くからブランド力を保つ品目の維持と、岐阜いちごや、ひだほまれなど、新たな戦力となりうる農水産物の生産力向上、ブランド化のために、県の研究機関や生産者、行政が一丸となり販促フェアや海外へのアピールも積極的に行っているのです。
そこで今回は、岐阜県の名産品食材を紹介したいと思います。
飛騨・美濃伝統野菜認定品目の一つ、飛騨紅かぶ
飛騨市や高山市で生産される飛騨赤かぶは、飛騨・美濃伝統野菜の一つ。表面は赤く、内部が白い、飛騨高山の代表的な野菜です。
赤かぶ漬けや酢漬けなどに加工するために栽培され、その歴史はとても古いと言われています。
飛騨紅かぶは突然変異から生まれた品種で、大正時代に生産されていた「八賀かぶ」が赤くなったものが起源。コサカ種苗の小坂吉造氏が時間を掛けて品種改良し、現在の飛騨紅かぶが誕生したのです。
この飛騨紅かぶは冬季でも保存が効くよう、主に漬物にされることが多いため、収穫期に関わらず土産としても有名です。今後も岐阜県の代表的な加工食材として、全国的に展開されるでしょう。
小さなお子様からお年寄りまで、日本中で愛される富有柿
首都圏のスーパーなどでも良く目にする、岐阜県を代表するカキの一つ。実が軟化しにくく、日持ちが良いため流通に適しています。
富有柿は種の有無に関わらず、甘柿として栽培できる品種。実の重さは300グラムほどで、果汁も多くジューシーな食感です。
また、袋を掛けて糖度を上げる栽培法で育ったものを、「袋掛け富有柿」といいます。こちらは少々割高で販売されています。
ちなみに、富有柿の由来は、明治時代に遡ります。瑞穂市居倉の福嶌才治(ふくしまさいじ)が命名し、100年以上の歴史を持つ名産品の一つになりました。
富有柿は生で食べるのが一般的ですが、熟成度により食感が変わるので、好みのタイミングで召し上がることができます。また、シャーベットやジャムとして加工販売されています。葉を用いた「柿葉茶」も人気の加工品です。
富有柿は岐阜県を代表する名産品として、熱のこもったPRがされています。そのため、全国的にも知名度が高く、生産者の意欲も高まっている状況です。
岐阜県の農産物の中で、安定した生産量と将来性のある品目といえるでしょう。
海外でも人気の和牛 飛騨牛
岐阜県内全域で飼育される黒毛和牛。肉質はきめが細かく、やわらかいと好評で、口の中でとろけるとも表現されます。肉質等級は5等級、4等級、3等級に格付けされ、その肉はステーキやしゃぶしゃぶ、すき焼きなどで食べられます。
土産用や料理店などでも召し上がることができるので、岐阜県の畜産物の代表といえます。岐阜県内の観光プロモーションとセットでアピールされることがしばしあります。
清流に住む淡水魚カジカの養殖を目指して
海のない岐阜県では、川魚が好んで食べられてきました。アユが有名な岐阜県ですが、煮出した出汁が絶品のカジカもまた、山間部の郷土料理に欠かせない食材です。
かぶ、ごり、ちんかぶなど様々な呼び名がありますが、漢字では「河鹿」と表記し、カジカガエルという蛙に似ていることから、カジカと呼ばれるようになりました。
カジカは主に県の中部から北部にかけて生息し、小骨が少なく食べやすい魚です。
甘露煮や唐揚げなど、丸ごと食べることができる調理が好まれてきました。味噌汁や刺身もおすすめです。甘露煮に加工したものは、土産として入手することもできます。今後は養殖による生産数増加が課題です。
酒造好適米、ひだほまれ
飛騨地域で生産される米、ひだほまれ。岐阜県中山間農業研究場で育成される、いもち病耐性、耐倒伏性に優れている品種です。極大粒で酒米として適しているため、食卓に上ることはありません。岐阜県内の衆生メーカーに卸され、日本酒として加工されています。
「ひだみのり」が交配の親にあたり、生産地域の飛騨という地名と、酒造玄米としての評判にちなみ、ひだほまれと命名されています。
現在は岐阜県内の酒造メーカーへ販売されていますが、加工された日本酒が、全国区、海外への展開が望めるよう、力を入れている品目の一つです。
味と香りに自信、美濃茶
賀茂郡白川町、東白川村など、美濃地域を中心に栽培されている美濃茶の歴史は古く、江戸時代に遡ります。
昼夜の温度差が大きく、適度な降水量と土壌条件が、香りと風味豊かな茶葉を育成。主に煎茶にして飲まれています。
岐阜県では各組合などが団結し、より高い品質に仕上げ、収穫量を増やす努力をしています。
農産物の生産量が多い岐阜県。地域により気候が異なり、冬期の収穫量に差があるため、保存加工食の発展が目立ちます。
古くから生産されていたもの以外に、新たな生産量増加を目指す品目が、他にもたくさんあります。ぜひ、岐阜県の名産品や、名産品候補に注目してみてください。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)