「食べられる校庭」で教育を【前編】「エディブル・スクールヤード」とは

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「食べられる校庭」で教育を【前編】「エディブル・スクールヤード」とは

「食べられる校庭」で教育を【前編】「エディブル・スクールヤード」とは

最終更新日:2018年11月29日

子どもたちに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができるようになってもらおうという「食育」。さまざまな試みが教育現場では行われていますが、中には「食育」を超えて「生きる力」を育もうという取り組みがあります。学校などの教育の場に食育菜園を作り、いのちのつながりを伝える「エディブル・スクールヤード」はアメリカで始まり、現在日本でも活動が行われています。一体どのような取り組みなのでしょうか。

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日本の学校での食育教育の課題

2005年に、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進しようと、「食育基本法」が施行されました。その第20条では、学校や保育所等においても、魅力ある食育の推進に関する活動を効果的に促進することが定められています(※1)。
同じく2005年には、食に関する専門家として児童生徒の指導と管理を行う「栄養教諭」が制度化。2005年度には全国で34人でしたが、2017年度には6092人までその人数を増やすなど、国も力を入れています。ただ、その配置には地域による格差があり、さらなる配置促進も必要だとされています。(※2)

食育に関する教育には正解がなく、その手法もさまざまであるため、今まさに試行錯誤で取り組みが行われている状態だと言えます。国をあげて推進されている一方で、その進め方にはまだまだ課題があるといえるかもしれません。そうした中、食育教育をさらに発展した形で進めようという取り組みが行われています。

※1 食育基本法(農林水産省)
※2 平成29年度 食育白書(農林水産省)

アメリカで始まった「エディブル・スクールヤード」

「エディブル・スクールヤード」は、1995年アメリカで始まった食育菜園教育のプログラムです。カリフォルニア州バークレー市にある公立中学校、「マーティン・ルーサーキングJr.ミドルスクール」の校庭に「食べられる校庭」とも呼ばれる食育菜園が創設されたことをきっかけに始まりました。その菜園を中心として、必修教科、栄養教育、人間形成の3つをゴールに、「ガーデン」と「キッチン」の授業が行われています。
この学校にはさまざまな人種の生徒が約1000人もいて、22か国もの言語が行き交う複雑な環境で、いかにその生徒たちをまとめるかということが重要な課題でした。そこで、さまざまな協力者とともに学校で始められたのが「エディブル・スクールヤード」です。エコロジーを理解し、いのちのつながりを教えるそのプログラムは、学校の教科とも連動して行われています。さらに、菜園での活動やキッチンでの調理、食卓での食事の時間を通して、共感や思いやり、そして忍耐や自律心を身に付けることができるのだそうです。

五感を刺激するプログラムの具体的な内容


エディブル・スクールヤードでは、畝を立て、種をまき、苗を準備し、さらに作物を世話して収穫し、調理する一連の工程すべてに生徒たちが参加します。そして、野菜のクズを堆肥にして土に還すところまで行うため、生徒たちは自然と持続可能な生き方を学ぶことができるといいます。
菜園での学習は、生徒たちの五感を刺激することが重視されています。たとえば「スカベンジャー・ハント」という授業では、五感のいずれか一つについてのヒントを与えられ、正解を探すというなぞなぞをするそうです。時には花を食べてみたり、匂いを嗅いでみたりすることで、生徒たちは正解に行きつくだけでなく、菜園の自然を体感することができます。
キッチンでは、菜園で収穫された作物を使用して調理が行われ、料理ができたら生徒と教師は花を飾り、全員で食卓を囲み会話を楽しみます。調理してただ食べるだけではなく、皆で食卓を囲むという点が重視されているのです。そして、最後は後片付けと掃除までしっかりと行います。

日本での「エディブル・スクールヤード」の実践

東京都多摩市A小学校の菜園の様子

「エディブル・スクールヤード」は、日本では東京都多摩市にある公立A小学校で最初に実践されました。2014年、当時の校長先生の「子どもたちに菜園活動を通して自己肯定感を持ってもらいたい」という思いから取り組みがスタートしました。総合的な学習の時間に、国語や理科、社会などの必修科目とクロスさせて、通常の授業時間を使って活動は行われています。

校舎に寄り添うように学校菜園が作られ、そこでは年間を通して土作りや種まき、水やりや草刈りなど授業の一環として行われています。そして作物を収穫して調理し、皆で食卓を囲んだ後は、野菜のクズは堆肥にして土に戻します。こうして、子どもたちは生命(いのち)のつながりを感じることができるのだそうです。この活動は先駆的な取り組みとして、他県や海外からも視察が来るほど注目を集めています。

この取り組みを学校と協働して行っている一般社団法人「エディブル・スクールヤード・ジャパン」の代表、堀口博子さんは、「A小学校での活動がひな形となり、ぜひこの活動をやってみようと思う人をどんどん増やしていきたい、全国に伝えていきたいと思っています。すでに私たちの仲間がそれぞれの活動場所、学校や幼稚園などで活動を始めているので、今後が楽しみですね」と話していました。

アメリカで始まり、日本で少しずつ根付き始め、新たな発展を遂げた「エディブル・スクールヤード」。その今後にも大きな期待が寄せられています。
 

◆【後編】では、公立A小学校の「エディブル・スクールヤード」で「ガーデン・ティーチャー」を務める塚原宏城さんにお話を伺います。
「食べられる校庭」で教育を【後編】「ガーデン・ティーチャー」の仕事とは
 

写真提供:エディブル・スクールヤード・ジャパン
撮影:松永勉さん、鳥谷部有子さん、佐藤浩一さん

エディブル・スクールヤード・ジャパン

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