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儲かる都市農業に! イベントや援農で消費者と農家を結ぶ「畑会」

儲かる都市農業に! イベントや援農で消費者と農家を結ぶ「畑会」

都市の住民に新鮮な野菜を供給できるだけでなく、景観の維持やコミュニティー再生の場として期待されている都市農業。八王子市を中心に活動をする一般社団法人「畑会」は、東京都内の農家と消費者をつなぐイベントを開催してきました。今回は畑会代表の山田正勝さんに、畑会の活動内容や、消費者と農家をつなぐ立場から見える都市農業の課題と可能性について伺いました。

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食を通して健康に、野菜の大切さに目覚める

――2年ほど前から活動を続けている畑会。一般社団法人化して1年が経ちました。そもそも活動を始めたきっかけは?

畑会代表の山田正勝さん(畑会提供)

私はもともと陸上自衛隊で4年間勤務していました。その時に食事の大切さを身をもって感じたことがそもそものきっかけです。それまで身体が弱くて体力がなかったのが、自衛隊で食事管理をしっかりしたら元気になって体力もついた。それから健康的な食にこだわるようになりました。その後、栄養満点で自分が美味しいと思える野菜を追求していくうちに、農家の知り合いができて、その農家での経理や畑でのイベントに、ボランティアで関わるようになりました。

イベントに関わるようになって気が付いたのですが、いまは野菜不足を意識する人も多くて、新鮮で美味しい野菜のニーズは高い。一方で、八王子から持っていった野菜を調理して食べる都心部のイベントでは、「こんなに美味しい野菜は近くでは買えない」という声もあります。近くのスーパーで買っても美味しくないと。その点、都市農業は可能性があると感じました。都心に近く新鮮な野菜を美味しい状態で届けられるし、畑と住宅が近いので環境に配慮して農薬をほとんど使わず栽培しているところも多いからです。

「美味しい」の一歩先を目指し、農業×筋トレも

イベント「畑レストラン」でのひとこま(畑会提供)

2年ほど前に農業体験サークルとして「畑会」を立ち上げ、一般の消費者が畑と農に触れるイベントを月に1回のペースで開催してきました。八王子と多摩市、日野市、町田市などの協力農家さんの畑で、畑レストランや畑コンといったものから、農作業を筋トレとして楽しむ「ナチュラルジム」や、ランニングと農作業をミックスした「ベジラン」など、「『美味しい』の一歩先」を目指して開催しています。つまり、美味しくて新鮮な野菜を食べたいという気持ちのその先には健康になりたいという意識があると思っているので、食を通して健康・元気を与えられるサービスを目指して企画しています。

イベント「畑レストラン」でのひとこま(畑会提供)

最近では、企業の福利厚生の一環で畑での収穫体験と食事をコーディネートさせていただいたり、ヨガ教室とコラボしたりといったイベントも行っています。

――畑会では援農の活動もされているんですよね。

月に1回、4、5人の参加者で農家さんを訪問し、ボランティアで農作業を手伝うというものです。作業内容は、農家さんのご要望によって変わります。人手が本当に足りないからと「ガッツリ作業をお願いしたい」という農家さんもいれば、いきなり素人を畑に入れるのは心配という人もいます。また、仕事を期待するというよりは、消費者とつながるきっかけを探している農家もあります。農家さんにとっては消費者の話を聞く機会にもなっているんですね。

町田市の農家での援農の様子(畑会提供)

参加者の方は就農希望者が2~3割。農大生が「リアルな現場を見てみたい」、と参加することもありますし、農と関わるライフスタイルを持つ人や、農作業でリフレッシュしたい人まで参加の理由は様々です。ただ、イベントの参加者と比べると、単に美味しい野菜を食べるだけでなく、農業や地域の活性化に興味のある人が多いように感じます。そういった意味でも、都心からすぐ近くにある都市農園は、都会の農業に興味のある人に、都心にいながら農業の現実を見せられる貴重な機会でもあります。

消費者と結び、農家を支援

――景観の維持やコミュニティー再生、リフレッシュの場としてなど、様々な役割が期待される都市農業ですが、一方で都市部周辺の農地は減りつつあるとも言われています。都市農業に関わって来られた経験から、いまの課題は?

イベント「畑レストラン」でのひとこま(畑会提供)

そもそも援農を始めたのは、都市農地がなくなっていくのではないかという危惧があるからです。都市農業をしている農家さんに話を聞くと、「野菜が売れない、儲けにならない」という声があちこちから聞こえてきます。
東京にある農家は3000~5000平米程度の広くはない農地でやっているところが多く、ある程度広い農地を持っていてもいくつかの畑に分かれているなど、作業効率は良くない。さらに、住宅地が近いので、農薬や肥料など環境にも特別配慮する必要があります。ほとんどの農家が兼業農家で、「本格的に農業をしたい」と思ってはいても不動産で生計を立てていたり、サラリーマンをしていたり。農業だけでは十分な収入が得られないといいます。

消費者側に新鮮で美味しい野菜に対するニーズはあるので、より多くの消費者を農家に結びつけて、消費者が農家を支えるような仕組みを作り、農家を支援していきたいです。

――今後畑会としてどのようなことに取り組んでいくご予定ですか?

消費者に都市農業を知ってもらうためのイベントはもちろんですが、農家側の支援も充実させたいです。

3月には、狭い農地でどのように利益を上げるかというワークショップを開催する予定です。都市農業は、確かに地方の農家と比較して栽培環境として不利な部分もあります。しかし、「いいものを作れば売れる」と、生産だけに特化している農家さんが多いのも現状です。時間的にも体力的にも生産だけで手いっぱいという農家さんもいます。以前会計を担当していた農家では、3人の生産者の他に会計担当の私を含め5人が副業として手伝っていましたが、それでも人不足な感じはありました。農業や自然とのふれあいに興味を持つ都心部の人は多いので、農業における人手不足を、まずは消費者とのマッチングで少しずつ解消していけたらと思っています。また、都心でのマルシェに参加したり、売り先を見つけたりと、農家さんたちの販路拡大を支援する事業も始めていけたらと思っています。

畑会ウェブサイト

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