キュウリの歴史
キュウリはそもそも、インド西北部のヒマラヤ山麓が原産地だといわれています。日本では平安時代に中国から伝わったとされますが、実際に食用として盛んに栽培されるようになったのは昭和初期からです。
現代の食卓には熟す前の青々したものが並んでいますが、昔は黄色く完熟した身が食されていました。完熟したキュウリは苦味が強く、また当初は薬用として使われていたということもあり、江戸時代末期までは人気がある野菜ではありませんでした。
しかし、キュウリの品種改良が行われ、成長が早く味や食感の良いものが栽培されるようになりました。その結果キュウリは、酢の物、和え物、サラダなどの生食や、炒めものなどにも使われており、私たち日本人の食卓には欠かすことができない身近な野菜の一つになったのです。
キュウリの品種
キュウリは非常に品種が多く、世界中で500近くの品種が栽培されています。日本国内で流通しているキュウリの多くは白イボキュウリと呼ばれるもので、流通の90%を占めています。
キュウリの種や苗を選ぶとき、最も気をつけたいことは、病害虫や環境負荷への強さがしっかりある品種を選ぶことです。例えば、うどんこ病に強い「夏バテ知らず」、「うどんこつよし」や、うどんこ病とべと病の両方に強い「シャキット」「VR夏すずみ」「よしなり」、さらにウイルス病への耐性もあり、過繁茂もし辛い「Vシャイン」など、自身の栽培目的にあった品種を選択しましょう。
格安で販売されている苗は、強さを犠牲にしてコストダウンを図っているものもあるため、注意が必要です。
「ブルームキュウリ」について
キュウリの表面には「ブルーム」という白い粉がついているものがあります。ブルームは暑さや寒さの外因、水分の蒸発を防いだり、老廃物を出したりするために、キュウリ自身から吹き出す身を守る粉のことです。キュウリに存在する物質が表出しているだけなので、危険性はありません。
元々、流通していたキュウリはこの「ブルームキュウリ」でしたが、30年ほど前からブルームの出ない「ブルームレスキュウリ」が主流となりました。理由としては、キュウリに付着したブルームが残留農薬に見えてしまったり、そもそもブルームレスキュウリの方が店頭に並べたときに見栄え良く、日持ちするなどといった要因が挙げられます。
今では市場の9割がブルームレスキュウリになっており、スーパーで見かけるキュウリは基本、このブルームレスキュウリです。
キュウリの栽培時期と特徴
キュウリの栽培時期、栽培スケジュールは上記のようになります。
は種から始めると、栽培期間は4月~10月まで(きゅうりには、春まき、夏まき、秋まきがある)になります。
種まきから行う場合は、4月に育苗ポットに種をまき、5月には植え付けを行います。春先は地温が低く、直接畑にまいてしまうと発芽しないこともあるので、可能であればポットで育苗して畑に定植しましょう。6月に入り気温が十分に高くなれば畑に直播きもできます。時期をずらして栽培することで、長期間の栽培が可能となります。
ただ、キュウリに限らず種から野菜を栽培するにはある程度のスキルと道具が必要になります。初心者の方は無理をせず、買ってきた苗から育てることも視野に入れましょう。
生育スピードがかなり早い野菜なので、水やりや肥料切れには要注意。シーズンになるとつるや葉っぱがどんどん伸びてくるので、しっかりと整枝し、風通しにも気をつけましょう。雨が降ったりすると1日で実がかなり大きくなってしまうので、早め早めの収穫が大切です。
キュウリの栽培方法
キュウリは家庭菜園でも作りやすい初心者向けの作物です。
しかし、たくさんのキュウリを収穫するためには、種まきや土作りの段階から注意しなくてはいけないことがたくさんあります。
種まき(播種)と育苗管理
夏野菜の栽培において、筆者は一貫して購入した接ぎ木苗の利用を推奨しています。
しかし、ウリ科作目は、ナス科作目より比較的強靭(きょうじん)で種からの栽培が容易なため、一から全てやってみるのも良いでしょう。
育苗用の施設がない家庭菜園の場合は、自前の苗だと定植が遅くはなってしまいますが、園芸の楽しみ、収穫の喜びは倍化することでしょう。
園芸培土をいれたポットに一粒ずつ種をまき、毎日水やりをすれば、4月初旬まきで5月中旬には定植できます。
種まきのポイント
種まきを行う際は、市販の種まき用土を使いましょう。種まき用土には、植物が発芽し、ある程度成長するために必要な肥料分が含まれています。また、雑草の種や病害虫の混入もなく、クリーンな状態なので、必ず市販の用土を使いましょう。
箱まきする場合は、水やり後、濡れた新聞紙を発芽までかけておきます。発芽適温は25~30℃です。夏にまく場合は、寒冷紗をかけるなどして気温の調整に注意しましょう。
育苗のポイント
育苗の際に注意したいのは、水切れと気温です。
ポットは地植えよりも保水力が低く、しっかりと水をやる必要があります。
良い環境を整えていると、4~5日で発芽が終わります。
発芽後は風通しをよくして、育成適温を守るようにしましょう。
定植までの育苗期間は30日ほどあるので、その間に一本まで間引きを行い、本葉3~4枚の苗にしましょう。
葉が隣同士触れ合うサイズまで成長したら、ポットの間隔を広げます。春先などで寒冷紗をかけている場合は、定植1週間前には外してください。
キュウリの苗の選び方のコツは?
オススメの栽培方法は買ってきた苗を定植することです。筆者も種からではなく、苗から栽培を行います。
キュウリの苗を選ぶときは、接ぎ木のものや、耐病性・耐暑性があるものを選ぶようにします。筆者は「うどんこつよし」や四川系の苗をよく使っています。
また、店頭に並んでいる苗の中には、丈夫で健康なものから、今にも枯れてしまいそうなものまで幅広くあります。以下のことに注意して、良い苗を選ぶようにしましょう。
◯双葉がしっかり残っている
◯節間が詰まっている
◯ポットから白い根が出ている
◯葉の色が濃い
◯植鉢がしっかりできている
◯病害虫の症状が出ていない
◯本葉が3~4枚揃っている
畑の準備! 土作りと肥料
元肥として、遅くとも植え付け2週間前に1平方メートルあたり苦土石灰100グラムを施し、1週間前に完熟たい肥4キロ、化成肥料を250グラム程度(成分比率8-8-8の場合。数字は窒素・リン酸・カリウムの含有率を示す)を施用します。
肥料を土とよく混和し、畝をたてて準備しておきましょう。黒マルチシート(畝を覆うシート)を利用する場合は、早めに張っておくと地温が上昇し、定植後の初期生育が旺盛になります。また黒マルチシートを張っておくと、雑草の抑制にも繋がります。その後の栽培管理を楽にするためにも、なるべくマルチを使うことをオススメします。
マルチシートを貼った際は、水はけに注意が必要です。畝の表面がデコボコしていると、シートがたわんでしまい、その部分に水が溜まってしまいます。病害虫発生の原因になりかねないので、畝立ての際にはしっかりと水平を取るようにしましょう。
植え付け(定植)
キュウリの植え付けは、遅霜のなくなった頃、春の大型連休の前後が良いでしょう。ホームセンターでの苗の販売は4月初旬からはじまりますが、4月初旬に植え付けると、霜でやられてしまいもう一度苗を購入する確率が非常に高くなります。
植え付けの目安は地温15℃。予め黒マルチシートを張っている場合は、十分に地温を確保できているので、定植後の苗の根の伸長が良くなるでしょう。また、植え付けは良く晴れた日の午前中に行います。しっかりとポットと植え穴を潅水することで、活着が良くなります。
植え付け幅は株間70センチで、家庭菜園の場合は行灯(あんどん)の利用を推奨します。風害を避けることができ、生育が良いのもありますが、栽培初期に葉をボロボロにする害虫のアブラムシやウリハムシは、主に風にのって平行移動するので、これらの被害を最小限に抑えることができます。
植え付けのポイント
筆者が苗を植え付ける際は、ポットの土をほんの少しだけ崩すようにしています。育苗期間を経て、多少土が固くなってしまっているので、根を伸びやすくするために行っています。やりすぎてしまうと苗が崩れてダメになってしまうので、加減には注意してください。
また、やや浅植えにすると尚良しです。深く植え過ぎて接ぎ木の部分が土に触れてしまうと、そこから病気になってしまったり、土のくぼんだ部分に水が溜まって根が腐ってしまうおそれがあります。
草勢判断のポイント
キュウリの草勢判断は本葉15~18枚程度のときに行います。
最上段で咲いている雌花から生長点まで50センチほど(展開葉が5~6枚程度)あれば順調といえるでしょう。さらに、生長点付近の葉からも草勢がわかります。生長点近辺の葉はキュウリの樹の栄養状態が最も現れる部分です。葉の色やツヤがよく、ツルもしっかりとしているのが栄養状態の良い樹です。
キュウリは栄養過多になるとツルボケという葉やツルばかりが大きくなってしまう状態になってしまいます。草勢が強すぎても良くないので、しっかりと管理をしてあげましょう。
キュウリは連作障害に注意!
同じ科の作物を同じ場所で続けて栽培していると生育障害が発生することがあります。これを連作障害といい、耕作地の限られる家庭菜園では避けられない問題の1つでしょう。
キュウリはウリ科なので、ウリ科の仲間であるゴーヤやスイカ、カボチャなどを同じところで栽培しても連作障害が起こりえます。畑をローテーションして数年空けるのが最もシンプルな対策ですが、家庭菜園などでは難しいでしょう。
そういったときは、接ぎ木の苗木を使ったり、コンパニオンプランツ(ネギなど)を用いることで対策が可能です。接ぎ木の苗は連作障害だけでなく、その他の病気にも強いので家庭菜園に適しています。
支柱立てと誘引
キュウリ栽培をはじめる際に最も混乱するのは、キュウリの仕立て方に関してです。
支柱の立て方には直立型と合掌型の2種類があり、それぞれメリットデメリットがあります。
◯直立型
直立型は1列で仕立てるときや、プランターなどの小さな場所で育てるときに用いる方法です。支柱を地面に向けてまっすぐに立て、キュウリネットを貼るだけなので簡単に作ることができます。構造上重さや風には弱く、倒れやすいというデメリットがあります。
◯合掌型
合掌型は2列で仕立てるときに用いる方法です。支柱同士を組み合わせるようにして仕立てるので、直立型よりも頑丈で、重さや風にも強いというメリットがあります。慣れるまでは組み上げるのに時間や手間がかかりますし、きちんと支柱同士を結ばないと崩れてしまうおそれもあるので注意が必要です。
つるおろし
防除も追肥もしっかりやられている方が、更に長く楽しむために“つるおろし”栽培に取り組むことも近年増えてきました。孫づるは利用せず、主枝付近で収穫し続ける方法です。
主枝がのびた分だけ、根元のつるを巻き取るようにまとめていきます。この場合、ネットではなく支柱やひもによる誘引になり、収穫のたびに“つるおろし”のひと手間を要しますが、考え方も単純で長く楽しむことができます。
「敷きわらマルチ」について
キュウリは本来地を這う植物で、細い根本を多くの葉やツルで守っていますが、支柱に誘引するとその弱点がむき出しになってしまいます。
キュウリの栽培適期である春先から夏は、雨の多い季節です。雨の跳ね返りや急な気温上昇による乾燥などからキュウリを守るためにも、敷きわらを敷いてあげましょう。
黒マルチシートを敷いている場合は必ずしも敷く必要はありませんが、株の根本を守るように敷きわらを敷いてあげると、より良い環境となります。
【キュウリの手入れ】整枝・摘芯
最初の6節(主枝から発生する本葉の一枚につき1節と数えます)までは、葉のわきから伸びてくるわき芽は全て切除します。
基本は主枝を真っすぐ上に伸ばしていきます。この主枝のことを親づるといい、生育初期にあたる6節まではこの親を育てることに注力します。
7節以降はわき芽(子づると呼ばれます)を1~2節残して摘心(芽の先端を切ること)していくことで、親づるを育てながら、収穫していきます。定植時期や天候にもよりますが、おおよそ25~30節あたりの、手が届かなくなったあたりで主枝である親づるを摘みます。
基本的にはわき芽である子づるを1~2節ずつならせて収穫するのですが、この子づるから更に孫づるが発生していきます。特に親づるである主枝が止められると、孫づるの発生が旺盛になります。この処理の仕方で過繁茂になり、それが原因で病害虫や生理障害など、随分と苦労することが多いように思います。
【キュウリの手入れ】摘葉・下葉かきなど
草勢が強まってくると、葉が生い茂ってしまい風通しや採光を悪くしてしまうことがあります。もさもさと葉が茂った状態を放置していると、害虫の隠れる場所が増えてしまい、葉や果実を食べられてしまったり、病気が発生しやすくなってしまう可能性があります。
そういったことを防ぐためには、摘葉や下葉かきをして、古い葉や大きすぎる葉を取り除いてやる必要があります。
また、黄色く変色してしまった葉や、病害虫によってダメージを受けている葉は積極的に取り除いてしまいましょう。
このとき、下葉や大きな葉を取りすぎてしまうと、元気が弱まってしまうので注意しましょう。
追肥
キュウリはどんどん実をつける野菜なので、肥料切れを起こさないことがとても重要です。
しっかり元肥をやっていたとしても、追肥は必要です。生長の度合いによって追肥を撒く場所も変わってくるので注意しましょう。
まず最初の追肥は最初の実を収穫したあたりで行います。このときは、株元に肥料を置くのですが、肥料が直接キュウリの株に触れないように注意してください。
その後は、2週間程度に一回化成肥料を一株あたり20~30グラム程度施用します。
キュウリの株の大きさにあわせて、株間や畝の肩などに施しましょう。そのさい、中耕も一緒にしてあげると、雑草の抑制にも繋がります。
追肥をしても株に元気が無い場合は液体肥料をあわせて使うのもオススメです。
キュウリの受粉は必要?
キュウリは受粉せずとも果実が大きくなる「単為結果性」の野菜です。
受粉しなくても雌花があれば結実するので、人工受粉の必要はありません。
栽培管理をしっかりと行い、良い雌花が咲いている状態であれば、心配せずともキュウリはどんどんと実をつけていきます。
キュウリの雌花は、花の付け根の部分に小さなキュウリがついているのでひと目でわかります。
水やり
キュウリは95%が水分でできています。美味しく奇麗な果実にするためには、水やりが必要不可欠です。肥大期に水が足りないと、折れ曲がったような変形果ができてしまったり、小さいサイズのものが生じやすくなってしまいます。
特に梅雨明け以降の水やりは非常に大切になります。梅雨明け以降は土が乾燥することのないよう、雨がなければ頻繁に水やりをするように心がけましょう。
夏場は気温と地温がぐんぐん上がります。暑い日中に水をやると温まった水分が根を痛めてしまうおそれがあります。水やりは涼しい朝方や日の落ちた夕暮れに行いましょう。
収穫
キュウリの花が咲くようになってから、だいたい1週間ほどで最初の収穫がはじまります。
一番最初の果実は、10センチ前後の小さいサイズで収穫してしまいます。もったいないように思えますが、最初につく実は、まだ株が未成熟のときに結実した実なので、早い段階で採ってしまったほうが株の負担を減らすことができます。
その後から出てくる果実は長さ20センチ超くらいになったら収穫しましょう。水分と栄養が足りていればどんどん実をつけてくれるうえ、果実の肥大自体も非常に早いので、躊躇せずに収穫することが大切です。収穫するときは、表面のトゲトゲを傷つけてしまわないように首元を持ってハサミで切り取ります。
収穫のポイント
キュウリは朝が最も瑞々しく、日中の暑い日差しに当たっていくごとに乾いていきます。なるべく朝や午前中の早い時間に収穫しましょう。
また、キュウリは株につけたままにしていると、あっという間に太く長くなってしまいます。重さもあり株にとって大きな負担になってしまうので、そうなる前に収穫するように心がけましょう。ただ、肥大化したキュウリは水分量の多いズッキーニのような味わいになるので、興味のある人はあえて作ってみてもいいかもしれません。
キュウリの生理障害やトラブルについて
しっかり育てているつもりでも、生理障害は起こりうるトラブルです。よく症状を見極め、原因を解消することが大切です。
空洞果になってしまう
空洞果とは、果実の中に空洞がある状態をいいます。
果実に穴があくのは、水が足りていないからです。原因としては、畑の水不足、根の張り方が弱い、根が腐っているなどが考えられます。
夏場はとくに地面が乾きやすく、根を浅く張るキュウリにとっては過酷な環境です。十分に水やりをするのはもちろん、マルチングや敷わらなどで根を守ってやると改善するかもしれません。
実が曲がる、先端が細くなるなどの奇形果
「奇形果」とは、本来とは違う形になってしまった実のこと。実が曲がってしまったり、先端が細くなってしまうなど見た目が普通とは異なるので、すぐにわかります。
奇形果はその姿とは裏腹に、味に影響はありません。ですが、奇形果がでるということは株の元気が弱まってしまっているということの証です。原因を解消してあげることで、株が元気を取り戻すと、本来の形の実をつけるようになります。
ここでは奇形果の種類とその対処法をご紹介します。
なお、奇形果は見つけたら早採りし、樹の負担を軽くしてあげましょう。
尻細り果(先細り果)
キュウリは本来、根元の部分と先端が少し細くなるだけで、ほとんど同じ太さのまままっすぐ伸びていきます。この尻細り(先細り)状態になってしまうと、実の途中から段々と細くすぼんでいってしまうのです。
原因として、水分不足や栄養不足、日照不足や葉が少ない(弱っている)というようなことが考えられます。しっかり水やりと追肥を行い、それでも改善しない場合は液肥などを使うと良いでしょう。
尻太り果(先太り果)
尻太り(先太り)状態になると、実の途中から段々と太く大きくなったり、尻部分が極端に肥大化して果肉が偏ってしまいます。
原因として、株のなり疲れ、草勢低下が考えられます。
日照不足や水分不足・過多、肥料切れなどによって、株の元気が弱まってくると尻太り果ができやすくなります。対策としては、日々の管理が重要です。土の状態や株の状態をしっかり見極めながら、水やりや追肥のタイミングを逃さないように注意しましょう。
曲がり果
キュウリの曲がり果は、果実の中心あたりから著しく曲がったものです。先細りや先太りと一緒に症状が現れることも多く、家庭菜園ではよく見る奇形果の1つでしょう。
原因として、株のなり疲れや窒素不足が考えられます。草勢の強い収穫初期ではあまり見かけることのない曲がり果ですが、日照不足や水分不足、肥料切れなどの要因によって草勢が低下してくると発生が多くなります。対策としては、適度な追肥や温度管理、また適度に摘葉し、しっかりと日光を当てることも大切です。
くくれ果
くくれ果は、果実にくびれのような糸で締め付けた線が入る症状です。果肉の内部にもラインのようなひび割れが入ってしまい、一部褐色化してしまいます。
原因として、高温乾燥や低温多湿などの気象条件のほか、株の肥料バランスが崩れてしまったりすると生じやすくなります。対策としては、適正な量の追肥を行うことや、マルチングや敷わらなどで極端な乾燥状態を防止する必要があるでしょう。
キュウリ栽培で気をつけたい病害虫とその対処法
キュウリに発生しやすい病害虫は、見分けづらい物も多く、初めから決めてかかってしまうと危険です。ここで説明する内容をもとに、農協などで聞くとより確実に病害虫を特定でき、しっかりとした対処を行うことができます。病気、害虫の順で、それぞれ説明していきます。
うどんこ病
うどんこ病は湿度が低く、気温17~25℃前後の頃に発生しやすい病気です。特に梅雨時期に頻発し、葉の表面に斑点状の白いカビのようなものが生え、枯れていきます。初期防除が大切で、初期段階での農薬散布や、被害が小さいうちに病害を受けた葉を摘み取るようにしましょう。葉が茂って風通しが悪くなると一気に感染が広がるので注意が必要です。
べと病
べと病は葉の葉脈に沿って、葉が斑点状に黄色くなる症状が出ます。病状が進むと、葉全体がバリバリと乾き、薄茶色に変色していきます。土壌菌が原因とされており、雨風による水はね・泥はねが株につくことで発症すると考えられています。マルチングなどで跳ね返りを予防し、発症初期段階で防除することが大切です。
つる割病
つる割れ病は下葉が変色したり、しおれたりを繰り返し、段々と株全体に広がっていく病気です。病状が進むと、株元の茎が割れてカビが発生します。
連作障害としてよく現れる病気なので、同じ場所での連作を避けるか、接ぎ木苗を使うことが一番の予防になります。
もし発症してしまったら、被害が他の株に映らないように、病気の株を引き抜いたり、農薬によって殺菌する必要があります。
つる枯れ病
つる枯れ病は、株全体に症状が現れる病気です。
茎の部分に現れる症状が特に多く、地ぎわ部分が淡褐色になり、ぐずぐずに腐ってしまいます。他の症状としては、葉の縁あたりから褐色色の病斑が現れたり、果実は先端から腐敗していきます。
病原菌が雨や水やりによって株に広がることで感染するので、水やりの仕方や、マルチングなどの工夫が必要です。
褐斑病
褐斑病は葉に褐色の小さな斑点が広がる病気です。症状が進むと、葉がデコボコに歪んだようになり、穴が空いたり、縮んだりして、やがて枯れ落ちます。
株全体に病気が広がってしまうと、葉がどんどん落ちていき、株の生育が悪くなってしまいます。
高温多湿を好むので、摘芯や摘葉で株の風通しを良くしてあげることで病気を防止することができます。
炭疽病
炭疽病は葉や果実、茎に褐色の病斑ができ、腐敗し枯れてしまう病気です。こちらも高温多湿を好むカビが原因菌であり、株の風通しを良くして、マルチングなどで泥はねを防ぐことが大切です。
被害が出てしまった葉は取り除き、しっかりと処分する必要があります。
斑点細菌病
斑点細菌病は、葉に灰褐色の斑点や大きな病斑が現れ、果実には色が薄まったような小さな斑点が広がる病気です。
病気が進行すると、果実が腐るなどの被害が出ます。
発病後の防除は難しいので、日頃からの予防が大切になります。また窒素過多や草勢低下が発病を助長するので、適宜管理が必要です。
ここからは、気を付けたい害虫についてみていきましょう。
アブラムシ
アブラムシは体長1~4ミリほどの小さな虫ですが、集団になってキュウリを食害するため、放置していると大きな被害を受けてしまいます。
植物の養分を吸い取るだけでなく、ウイルス性の病気を媒介することもあるので、日頃からの予防と、早めの防除が必要です。
オススメの対処法:オルトラン剤・ベニカ剤の使用、捕殺、テントウムシなどの利用
ウリハムシ
ウリハムシは体長8ミリほどの、赤茶色の体色をした甲虫です。成虫は葉を食害し、幼虫は根を食害します。
目立つ体色をしているので、見つけ次第捕殺するように心がけましょう。
オススメの対処法:モスピランなどの農薬、捕殺
オンシツコナジラミ
オンシツコナジラミは成虫でも体長1ミリほどと小さく、白っぽい体色をした虫です。葉に貼り付き、養分などを吸い取ります。卵や幼虫を目視で確認するのは困難なので、そもそも虫が寄り付かないように予防をすることが大切です。
オススメの対処法:ダントツ・ベニカ剤の使用、捕殺
ウリノメイガ
ウリノメイガは主に幼虫がウリ科の葉を食害する害虫です。新芽を食べてしまったり、葉の薄皮を食べるように内側から加害し、穴を開けたり、葉を巣のようにくるりと丸め、潜伏します。
丸まった葉やフンが目立ちますし、幼虫自体も20ミリほどで目視できるので、見つけ次第捕殺することが大切です。
オススメの対処法:モスピランなどの農薬、捕殺
タバコガ
タバコガは大きいもので体長40ミリほどある蛾の幼虫です。生まれてすぐのころは、葉などを食害しますが、成長し体が大きくなると果実に穴を開け、果肉を食べるようになります。1つの果実を奇麗に食べるわけではなく、次々に新しい果実に移っていくので被害が大きくなりやすいです。こちらも普段の予防と、初期段階での防除が大切です。
オススメの対処法:若齢幼虫のうちに駆除する、防虫ネットを張る
アザミウマ
アザミウマは体長1~2ミリほどの小さな昆虫のため、目視しづらく、気づいたときには繁殖してしまっているというケースが多く見受けられます。幼虫や成虫が花や葉、果実から養分を吸い取ってしまうため、実の見た目が汚くなり、肥大も悪くなってしまいます。
オススメの対処法:ベニカ剤の使用
ナミハダニ(ダニ類)
ハダニ類は体長0.5ミリほどと非常に小さく、ルーペなどを使わないと目視できません。葉の裏面に棲み着き、養分を吸い取って繁殖します。放置しているとどんどん数を増やし、葉が枯れてしまうこともあるので、農薬を使ったり手で削ぎ落とすなどの駆除が大切です。
オススメの対処法:抵抗性害虫も多いので、様々な種類の農薬をローテーションする
ネコブセンチュウ
ネコブセンチュウ類は体長0.5ミリほどしかなく、土壌中に潜んでいるため目視は非常に難しいです。
この害虫の被害を受けると、作物の根にボコボコしたコブがついたようになり、水分や栄養の吸収などができなくなってしまいます。被害が大きくなると、株全体が枯れてしまうこともあるので、事前の予防が大切になります。
オススメの対処法:植え付け前の土壌消毒、石灰窒素の散布
まとめ
キュウリ栽培を成功させるためには、まず土作りが大切です。
自分の畑がどんな土壌なのか、日当たりや風通しはどうか、水はけはどうなのか。見極めた上で、必要な分量の肥料を施しましょう。
土作りをしっかりして、健康で良い苗を植えてしまえば、あとはどれだけキュウリに対して愛情を持って接してあげられるかが重要です。たくさん収穫して、株を長持ちさせたいのであれば、毎日キュウリの健康状態をチェックしてあげましょう。何か問題が起きても早め早めに対処すれば、決して大変ではありません。
自分で1から育てたキュウリは味も喜びも、市販のものとは大違いです。ぜひ、栽培に挑戦してみてください。最初は失敗するかもしれませんが、めげずに継続することが栽培上達への近道です。